はじめての構造主義 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488984

感想・レビュー・書評

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  • 2013.01.09 一回読んでしっかり理解できるほどあまくはないが、ざっくりと構造主義の輪郭をつかむことはてきた。もう一度読んでポイントをつかむ。それから、関連図書もチェックしたい。

  • 神話学が成功したからといって、あらゆるテキストにその方法が適用できるわけではないのでは?とか、レヴィ=ストロースの手法が鮮やかすぎる、他の人にはなかなか真似できないってんなら、構造主義者ってのは何してる人なの?とか、いくつか疑問も残ったけど、大体どんなもんかってのはわかった気がします。以下はまとめ


    ・流行の変遷
    マルクス主義-社会は歴史法則に支配されている(資本主義→共産主義の流れ、革命が起こるべくして起こる等)。革命の成功が歴史によって約束されているなら、わざわざ参加して危険な目にあう必要もないという考えに陥りかねない。そのとき、個人の生きる意味は?マルクス主義は社会全体が一度に救済されることを目指すが、その代わり一人ひとりの運命・生きる意味などは蔑ろ(一人ひとりの人格に大きな価値を置くキリスト教と相容れない部分)。

    実存主義-人間の存在にはもともと理由がない、理由がない(無駄死にする)ならいっそ歴史に身を投じてみる。その方がはるかに値打ちのある生と言える。ただ、ニヒリズムに陥らないために、前提としてマルクス主義の言う歴史の存在を信じる必要がある。

    構造主義-マルクス主義のいう歴史、19世紀的なものの見方(社会が単純・原始的な段階から複雑・機能的な段階へ進歩・発展していく)はヨーロッパ人の偏見。人間や社会のあり方を歴史抜きに直視する。西欧中心のものの見方をやめ、比較方法論によって近代ヨーロッパ文明を人類全体の中に謙虚に位置づける。


    ・〈構造〉のルーツ
    絵画における遠近法-ひとりひとりの視点(主体)からみた世界を忠実に再現する。主体や客体、認識ということが十分意味を持つ。

    射影幾何学-視点が変わると図形は別の形に変化する(射影変換)。その時でも変化しない性質が〈構造〉(e.g.正方形を射影変換すると正方形・台形・たこ形・ただの四角形に変化。これら4つの四角形全ての共通点「四つの線分に囲まれている」)。

    ヒルベルトの形式主義-公理(数学者の間の約束事にすぎない)をきちんと示し、様々な公理系から同じ幾何学を導けることを証明?(説明ほとんどなし)

    ブルバキの〈構造〉-フランスの数学者グループ。グループの一人、アンドレ・ヴェーユがレヴィ=ストロースの協力者。〈構造〉の概念を核にして数学の統一像を描き出そうとする?(説明ほとんどなし)

    レヴィ=ストロースの〈構造〉-レヴィ=ストロースの神話学はブルバキ派の〈構造〉の概念をそのまま神話の領域に持ちこんだもの。


    ・親族研究(インセスト・タブー)
    女性そのものの価値を直接味わえるようだと交換のシステム(社会)が成り立たなくなる。
    親族(女性の交換システム)が成り立つためにはそれが否定されなければならない。同じ集団のメンバーにとって、女性の利用可能性が閉ざされなければならない。近親相姦が否定されて初めて人々の協力のネットワークが広がっていく。
    “価値があるから交換する”んじゃなく、”交換するから価値がある”。”タブーだから交換する”んじゃなく、” 交換するからタブーである”
    社会がまずあって、その中にコミュニケーションの仕組みができるのではなく、そもそも社会とはコミュニケーションの仕組みそのもの。
    交換は利害や必要に基づくのではなく、純粋な動機(交換のための交換)に基づく。交換のシステムの中では女性や物財や言葉が「価値」あるものになるが、それらがその「価値」ゆえに交換されるわけじゃない。あくまで交換のための交換が基本で、それが特殊に変化・発達していった場合にだけ、経済(利害に基づいた交換)が現れるにすぎない。
    交換のシステムは機能の観点から捉えきれない。→機能主義人類学を批判。
    人々の利害が交換の動機になっていない。→マルクス主義とも対立。


    ・神話学
    オーストラリアの原住民の結婚のルールが抽象代数学の群構造と全く同じものだったことから、「人間の思考は一直線に進歩していくわけではなく、人間の思考のレパートリーはあらかじめ決まっていて、それを入れかわり立ちかわり並べ直しているだけかもしれない」と考えたが、親族研究では人間の思考以外の物質的要因が多すぎるので、人間の思考のレパートリーの宝庫であろう神話でそれを証明しようとした。
    「未開」社会の人びとは「考えるのに便利 good to think」な自然の事物を使って彼らを取り巻く世界や宇宙について考える(野生の思考)。ありあわせの材料を使って考えていくので日曜大工のようなブリコラージュになる。その意味不明なエピソードに隠された〈構造〉(野生の思考に支えられた「神話論理」、個々の神話の間の変換関係)を明らかにした。
    神話学はテキストを字義通りに読まない。それはテキストの表層に過ぎなくて、本当の〈構造〉はその下に隠れている。テキストをずたずたにしていろいろな代数学的操作を施しても構わない。(テキストの解体)→キリスト教における最高のテキスト(聖書)の権威を否定し、”神”をもかき消す。いったん構造主義の洗礼を受けた後ではどんな権威あるテキストも成立しなくなる。
    神話学を理解するのに主体は関係ない。(主体不関与)→これまでの近代主義の思想(人間を主体とみる考え方)に打撃を与えた。
    主体の思考の手の届かない彼方に、それを包む、集合的な思考の領域の存在を示した。〈構造〉はひとりの主体にこだわって世界を認識しようとしているあいだは現れてこない。


    ・構造主義批判
    〈構造〉は空間的なため、時間的な変化を捨象している。
    人間の主体性がどこかに行ってしまった。
    「作者の言いたいこと」を括弧に入れてしまう。

  • だましだましなのは承知の上。でもこうした知的な本、初めて最後まで納得しながら読めた。
    「●●入門」にありがちな全然入門じゃない難解な本にとは違い、本当に必要な部分だけをわかりやすく。
    ありがたい。

    さて、「構造主義」は高校の倫理で課題がでたので言葉だけ覚えている。
    倫理はいつも6限だったのですべて睡眠時間。
    なんの意味もわからず適当なものを提出した記憶がある。
    もったいない。

    自分の言葉でうまく説明できないけど、学問の新しい比較方法論。
    人間社会はある方向へ進化しているわけではない。
    対立する要素の組み合わせ(この枠組み=構造なのだろうか)の中で動いているだけなんじゃないか、という理解をした。
    気付かないうちにとらわれていた見方から抜け出し、根底にある枠組みの存在を明らかにしていくと、新しい発見がいっぱい出てくる。
    結果として、「西欧中心」のものの考え方からの脱却につながる。

    レヴィストロースが研究していた文化人類学をはじめ、言語学、数学や、はたまた神話の世界まで、まさに思考の構造変化を生みだす。
    レヴィストロースの第一歩は、以下の南米に住む原住民の研究。
    「未開」とされた彼らの近親相姦のルールは、どう考えても不可解で根拠がない。
    でも「親族間の女性交換」という見方をすると、きわめて合理的な仕組みを持っていることに気付く。
    しかもその中には高度な数学の考え方が内包されていて、「時代の先を行く」西欧人は衝撃を受けた。
    レヴィストロースは、人間社会は「女性・物財・言語」の交換システムだ、と考え、その構造を解き明かそうと、なぜか世界の神話研究に没頭する。

    後半の幾何学の話がおもしろかった。
    遠近法から思考(枠組み)の限界がどんどん広がっていく様は目が醒める。

    本を読んだ2日後、仕事中の会話の中で、ふと構造主義的な視点がふとひらめいた。
    と、いうことは自分の考え方を広げるきっかけになったということ。

    やっぱ学生時代は勉強すべきだったなあ。
    まあ、本に書いてあることはほとんど1970年以前のことなのだが。
    なんて、2012年から40年前を見下ろす考え方が、すでにとらわれているのだ。

  • 正直言ってしまえば難易度は高いものです。
    はじめての~ととは付いていますが
    優しい代物ではないぜこりゃ。

    だけれども、こんな考え方が世の中には
    存在し、それを席巻する一方で
    どんな欠点があったのか、というのを
    知る意味では興味深いものがありました。

    最後の人物紹介は…
    おいおいちょっと待ちなさい、
    夭折している人多いじゃないか!!

    分からなくても、文章が良いので
    面白くは読めるはず。

  • 軽やかな語り口で構造主義が分かる。
    この手の入門書は「一冊読めば分かる!」みたいな顔をするが、この本はレヴィ=ストロースに多くを割くなど、自覚的に入門書たろうとしており、多くの本が紹介され今後の学習につながるよう工夫されているのに好感が持てる。

  • レヴィストロースの親族、神話研究の概要が理解できた。構造とは 視点を変えても 変わらない本質。視点を変えて 見て、視点の差異を無視することで 構造が浮かび上がる

    構造は目に見えない抽象的なもの 。数学の話が 構造主義の理解に役立った。少し 構造主義が見えてきた

    未開の地の親族の基本構造について、結婚は交換であり、近親相姦が否定されて 初めて社会が広がる という文章には 驚いたが、未開社会の集団思考の自然調和から 見出されたシステム と理解した。利害や必要に基づくシステムではなく、交換のための交換に基づくシステム。

  • 『デリダ』を読む前に前段階として読みました。

    そうした「おさらい」で読むには、ちょっともったいない内容で、構造主義というよりもレヴィ=ストロース入門といった感じでしょうか。新書でここまでできるのであれば、分厚い本って何だろうという感じがしないでもない。

    ぼんやりしていた理解度が一気に高まる。素晴らしい。

  • ・宇宙論か仏教関係の本を読んでいて勉強しようと思ったが、何も覚えてないので難しかったんだと思う、二度目読書中。1回目読んだときに響かなかったところが、2回目読むとかなり異なる気づきを得られることが多い。(この本だけではないが)、ただ、結局構造主義がなんであるか理解できるレベルにはならなかった。
    ・西欧近代は、知らず知らずのうちに、東洋やいわゆる「未開」の社会を、劣ったもの、自分たちより遅れたものとみなしてきた。それがどんなに根拠のないことか、はっきり示せるのが構造主義である。
    ・人間の人間らしいあり方は、これまで西欧近代が考えてきたより、もっとずっと広いのだ。今まで片隅に追いやられ、正当な光の当たらなかったところにも、いくらも人間的な文化のしるしを見つけ出すことができるのだ。こう、構造主義は主張する。
    ・日本人はふつう、世界が「山」や「水」や「ナイフ」や「犬」や…からできあがっていると信じている。しかし、それは、日本語を使うからそう見える、ということにすぎないらしい。英語だとか、他の言語を使って生きてみると、世界は別な風に区別され、体験されることになるだろう。つまり、世界のあり方は、言語と無関係ではなく、どうしても言語に依存してしまうのである。われわれはちう、言語と無関係に、世界ははじめから個々の事物(言語の指示対象)に区分されているもの、とおもいがちだ。ところが、そんなことはないので、言語が異なれば、世界の区切り方も当然異なるのだ。
    ・シーニュ(記号)=シニフィエ:「犬」という記号が言わんとする意味内容+シニフィアン:「犬」という記号を成り立たせる音のイメージ(ソシュール)
    ・三すくみ(じゃんけん)の関係は、変換の一種である同型写像によって保存される、<構造>だ。ここでも、写像と<構造>とは、やっぱり裏腹の関係になっている。このように考えると、ジャンケンの仕組みを理解するのに、「紙が石をつつむから、パーの勝ち」というような説明は、あまり関係ないことがわかる。三すくみということだけが大切で、「紙が石をつつむ」とか「キツネが庄屋を化かす」とかいうのは、ことがらの表層(<構造>に関係ない、どうでもいいこと)にすぎない。そういう表層にとらわれないで、いろんなジャンケンのの間の変換関係を調べ、その<構造>をとりだすのが大切である。
    ・ゲーデルの不完全性定理:数学が完全であることを、その数学自身によって示すことはできない
    ・要するに、オーストラリアの原住民の結婚のルールは、抽象代数学の、群の構造とまったく同じものなのだ。
    ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの四元群」にたどりつくまでに、短くみても二千年かかった。つい最近まで、誰もそんなもの、知らなかったのである。ところが、オーストラリアの原住民の人々は、誰にも教わらないでも、ちゃんとそれと同じやり方で、大昔から自分たちの社会を運営している。先端的な現代数学の成果と見えたものが、なんのことはない、「未開」と見下していた人々の思考に、咳回りされていたのだ。
    ・レヴィ・ストロースは、主体の思考(一人一人が責任をもつ、理性的で自覚的な思考)の手の届かない彼方に、それを包む、集合的な思考(大勢の人々をとらえる無自覚な思考)の領域が存在することを示した。
    ・構造主義-自文化を相対化し、異文化を深く理解する方法論-

  • 「構造主義といえばレヴィ=ストロース、レヴィ=ストロースといえば構造主義」というのは知っているけど、「じゃあ、構造主義ってなに」という素朴な疑問に応えてくれた本。〜主義って言うわりには、イデオロギー的な重さはなくて、思索の方法論のような感じがする。とはいえ、単なる思考ツールでもなく、ひとつの思想ではあるのだろう。こや構造主義に至るまでのメジャーな思想もいろいろおさらいしてくれるので有難い一冊。

  • 兼ねてから気になっていた構造主義に関する入門書として読んでみた。中高生を含む初学者向けに書いたとのことで、確かに読みやすい。

    構造主義は社会の相対化を導くということで、勝手に主客反転の思考プロセスで生まれたのかと思っていたが、言語学・科学・数学をルーツに持つことに驚き面白く読めた。

    ただレヴィ・ストロースに偏っていること、この思想の影響が表層的にしか語られていないこと、提言が出版当時(1988年)の社会状況に依っていることなどには少し物足りなさを感じたので、「寝ながら〜」の方も併せて読んでみたい。

著者プロフィール

はしづめ・だいさぶろう 1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会学者。東京工業大学名誉教授。主な著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『言語派社会学の原理』(洋泉社)、『政治の教室』(講談社学術文庫)、『面白くて眠れなくなる社会学』(PHP研究所)、『橋爪大三郎コレクション1~3』(勁草書房)、『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ)、『政治の哲学』(ちくま新書)など多数。大澤真幸氏との共著に『ふしぎなキリスト教』『げんきな日本論』(ともに講談社現代新書)、『ゆかいな仏教』『続・ゆかいな仏教』(ともにサンガ新書)、『アメリカ』(河出新書)などがある。

「2019年 『小林秀雄の悲哀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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