はじめての構造主義 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488984

作品紹介・あらすじ

西欧文明中心の近代に終わりを告げ、現代思想に新しい地平を拓いた構造主義。レヴィ=ストロースの親族・神話研究の、鮮やかな方法と発想の背景に見えてくる、ソシュール言語学やモースの贈与論。そして遠近法にまでさかのぼる、数学史の水脈に隠されたのルーツ。モダニズムからポスト構造主義への知の戦線に、軽快な文章で歯切れよく迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 2023年9月17日読了。古典ラジオの構造主義の回で言及のあった参考資料を読んでみた。古典ラジオで内容を聞いていたせいか大学のゼミで構造主義を学んだ下地のおかげかはたまた著者の力量か、大変読みやすく構造主義のごく浅い部分についてと思うが理解できた。人間が自分の感覚で世界を理解しようとすると「未開社会は資本主義社会に進化すべき」「この世には理想の『イデア』があり万物はそこに向かう」「唯一神がすべてをデザインした」という考え方に陥りがちだがそうではない・あらゆるものの構造を理解することでその価値や機能は相対化できるのだ、とする考え方が構造主義なのだな…現代に生きる我々からすると当たり前ともいえる考え方だが、これを生み出したレヴィ=ストロースの仕事はものすごい人類史上の快挙だと思う。

  • 同じく構造主義に関する基礎的事項の説明がある『寝ながら学べる構造主義』(内田樹)を最近読んだためどうしてもそちらとの比較論になりがちなわけではあるが, 極力目を瞑ってほしい
    ちなみに結論から言うと解りやすさと話題の広範さについては『はじめての構造主義』が勝ると感じた

    まずは数学, 何よりも数学, 構造主義を論ずるには数学は不可欠なのだ
    本著ではユークリッド幾何学以降のさまざまな幾何学を位相変換の概念なども交えながら, 簡単に紹介しただけではあるが個人的には大変刺激的であった
    対してそのような内容は内田氏の書著では全く触れられておらず, 私自身も数学がこれほど密接に現代思想に関わっているのかと面食らってしまった
    加えて, 当時の西洋思想家たち(レヴィ=ストロース,サルトル,フーコーetc...)の数学的/自然科学的素養のレベルの高さを鑑みると, 改めて日本の哲学及び(経済学などを除いたゴリゴリの)文系の学者における数学的/自然科学的素養の欠如を思い知らされた

    思想の入門書というものは得てして、その主張や歴史的立場の説明に注力してしまうものだが, 本書は「ソシュールの恣意性原理」, 「ヤーコブソンの二項対立原理」等, 一見無関係にも思える言語学の変遷について論じられている
    それらの事柄がいかにレヴィ=ストロースの構造人類学及びのちの構造主義に多大な影響を与えたかについてある程度(ホントに, ある程度, すんなりはわからねぇよ)理解することができた
    一方の神話分析に関してはレヴィ=ストロースのそれと同様、あまりにも再現性が低くちょっとやそっとでは初歩的理解さえままならなかった

    第四章『構造主義に関わる人びと ほんのスケッチ』もとても魅力的だ
    彼らの主張を一つ一つ説明しているわけではないが(不可能だと思う), フーコーやアルチュセール, デリダらがどんな人間であるかについて, ほんの一欠片ではあるがまさに「スケッチ」的に描かれている
    最終的には当時の日本の思想に対する批判になってしまっていたが、その痛烈な批判もこの国の本質を言い当てており思わず唸ってしまうものだった

    遥か彼方の未来, 構造主義が完全に過去のものとして葬られた時, まだこの日出る国が残っていたとしてもその国民はおそらく1960〜1980年代と同じように流行り物に飛びつくだけの中身のない雑食動物となるだろう...

  • 「『未開』社会の神話を支えている、人々の集合的な思考の働きと、西欧近代の数学を支えている思考の働きとは、実態が同じだった。神話と数学。このふたつは、...同じ秩序を隠している、二つの制度なのだ。...知のシステムとして、どちらがどちらに優越している、ということもない。西欧近代の側に真理が味方しているようにみえるとすれば、われわれ自身が制度のなかにどっぷりつかっているための錯覚である」

    構造主義が解決しようとした問題は何だったのか、構造主義はどのような系譜で生まれてきた思想なのか、を分かりやすく解説してくれる本。
    前知識ゼロだったが、構造主義って面白いかも、とと思えた。
    母音の分類、イトコ婚、神話、幾何学、遠近法などなどいろんな分野の話が出てくるのも面白い。

  • 例えばスポーツの違いを構造主義で考えてみる。

    サッカーは選手交代に人数制限がある。野球にはない。バスケットボールは人数制限がなく、さらに一度交代した選手も再投入できる。この違いはなぜだろう?

    何が反則で何がそうでないかは恣意的に決まる。各競技で「選手交代」が指す意味は同じではない。

    一方で「選手交代」というルールは多くの競技にある。そこにはスポーツ共通の見えない構造がある、と考えられる。

    それはもしかしたら指揮権ではないか?選手と監督の二項対立。個人とチーム組織の二項対立。選手を戦術通りにプレーさせるため監督は選手交代を行う。選手交代は監督の権威を高めるためにあるのかも?

    そんでもって競技ごとに選手交代の条件が違うのは、競技ごとに監督の権威を最大化するようなルール設計がされているためじゃないか?

    とまあ、構造主義を使うと普段とは違うモノが見えてくる。構造主義は哲学というより、物事を多角的に見るための認知ツールと理解するのが良いのかもしれない。

  • 構造主義は、主体性を排除しようとする考え方である。公理の上に成り立つ定理は真理のように感じるが、それは、主体的に選ばれた公理上での制度に過ぎない。構造主義は、主体を前提とした考え方から、ある対象となるものを、無意識的な、集合的な現象として捉え、その構造を理解しようとする考え方である。

  • 初読

    構造主義少しはわかるようになったらいいな〜

    と淡い期待で読み始め、おお、確かにわかりやすい、
    これが入門書か…と読み進め、
    ふむふむここでソシュールの言語学が出てくるのか…中身はよくわからないけど……
    そして親族の基本構造ね……交換システム構造もイマイチかわらないけど……そして神話学…これはプロップの物語論とは違うの??

    から、第三章「構造主義のルーツ」
    であらゆる数学、幾何学が出てきて、わからなすぎて泣いた

    今回はレヴィ=ストロースの人生の概要がわかっただけで、
    肝心の構造主義自体は全く理解出来ませんでした。
    でも多分、面白い。この本。
    「寝ながら学べる構造主義」を読んでからまた来ます、、、

  • む、ムズい……。
    特に数学に関する部分は文系の私にとってはジャングルの道なき道を分け入っていくような辛さでほとんど理解できなかったが、ヨーロッパの超頭の良い数学者たちが2000年かけて導いた理論を、オーストラリアの“未開”の原住民たちがとっくの昔から使っていたという話にはとても感動した。

  • 同僚の先輩に勧められた本。
    正直半分くらいしか理解できなかったけど、面白いと感じれることはできたのでよかったのかなぁ。

    自分の読解力の低さにショック。

  • レヴィ・ストロースの人類学を見ていけば、最近読んだ本たちによくでてきた、黒人奴隷の問題の出口がわかってくるのかもしれないという予感の元、読み進めていきました。まあ、構造主義自体もう何十年も前にできたものなので、そのころからすでに開かれた出口ではありますが、今でも解決されていない問題ですし、かといってそれ以降よい方向へ向かわせてもきただろうから興味がありました。構造主義の「構造」とはなんぞや、といえば、人間でも物事でも社会でも、その根っこの部分の仕組み、みたいなもの、と言えるでしょう。因数分解していって残ったところで眼前にあらわれる法則、と言い換えてもいいです。そして、付け加えるならば、それははっきりと言葉にできないし、はっきり見えません。それが「構造」なんだと理解しています。たとえば、言葉にするとき、文章にするときに、その元となる動機があると思うんです。それは言葉になる前なので、ふわふわどろどろ形もなくてまだ名付けられてもいない。そういうところを動機とし、スタートとして、言葉が生まれる。もうちょっと厳しく言うと、言葉に当てはめる。要は言葉という枠にはめることなので、言葉になる前のふわふわどろどろしたものと、言語化したものは等価ではないです。まあ今回はそこのところはいいとして、そのふわふわどろどろしたものを見つめてみる行為と、「構造」を見つめてみる行為はちょっと似ているんじゃないでしょうか。そんな見方をして知覚するのが「構造」なんじゃないでしょうか。「構造」というものについては、まあ、そのくらいにしておきます。レヴィ=ストロースの人類学で見えてきたのは、欧州中心主義の否定です。それは、奴隷にされたアフリカの黒人や、アメリカ先住民、オーストラリア先住民など、いわゆる未開の民族への差別を許さないものでした。欧州人が優れている前提で彼らを頂点とするヒエラルキーを作り、下位に位置する民族からはいくらでも搾取をしていい、という植民地主義の間違いを指摘するものだった。著者は、「西欧近代の腹のなかから生まれながら、西欧近代を食い破る、相対化の思想である」と本書のはじめのほうで構造主義を表現していました。そのくらい、衝撃的な思想なんですね。

  • 本当に初めて構造主義の本を本だが、書中のどこからどこまでが構造主義なのか、理解できなかった。しかし、興味を持てたので、関連する文献にも目を通したくなった。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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