アメリカ合衆国大統領 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061489004

作品紹介・あらすじ

元首にして軍・行政府のトップ。独自のブレーン体制。CIA・通商代表部などの支配。議会・最高裁とのバランス、政策決定プロセスから最強権力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 時代的にレーガンまでの話なのではあるが、現行大統領選が二大政党維持のためのものであることとその理由はある意味当たり前の話なのだが興味深かった。イランの人質解放のエピローグもよかったな。

  •  アメリカの大統領はどういう過程で選出され、どういった権限を持つのか、大統領周辺にどういう組織があるのかといったことについて、歴代大統領(と言ってもパパブッシュまで)の例を挙げて説明してある。
     アメリカの政治について基本的な情報が知れて役立つものだが、もう30年近く前の本なので、もちろんインターネットなんてものも一般的でない時代の話だし、本当に参考程度でしか読めなくなってしまっているのが残念。歴代大統領の評価の話で、「要は、その大統領が政策実績や行動で示した価値観が、その後の時代に生きる人の価値観と一致した時、その大統領は偉大だとみられるようになる。」(p.65)として、まだレーガンやカーターの評価が定まりにくいみたいな話があるが、つまりはこの本が書かれたのはまだそういう時代だったということらしい。
     本当にアメリカ政治に疎くて初めて知ったことが多かったが、特に「長官 secretary」っていうのは日本の「大臣 minister」とは結構違うんだなということが分かった。「アメリカの内閣、閣僚は憲法に規定されていない。憲法には『デパートメント(行政部局)の長』という表現があるだけである。各省の長官が『秘書』にも通ずるセクレタリーの名で呼ばれる事情もこの辺にある。」(p.41)ということで、「近年の大統領はだんだん各省の長官の意見を求めるよりも、ホワイトハウスや直轄行政機関の側近たちに手っ取り早く頼るようになった。」(p.42)らしい。省のトップの役割が日本と違うのかなと思った。
     大統領の拒否権(veto)と、拒否された法案でも両院三分の二以上の多数決でoverrideでき、大統領の署名がなくても法になる(p.89)というのが面白い。「戦争権限法」という法律がそうだったとのこと。『ジーニアス英和辞典』に How many votes are needed to override the President's veto?という例文があり、語彙の勉強になった。
     三権分立の話が分かりやすいが、最高裁の権限についての話で、50年代の赤狩りの時の例が興味深い。「もしこの時最高裁の力がなかったら、今でもアメリカ共産党は非合法化されていたかもしれなかった。」(p.110)とか、「共産党に対しては、不正行為があった時のみ罰せられるとして、共産党員であるがために罰せられることはないとの判断を下して、連邦政府、議会に対して共産党狩りを封じたのである。このアメリカ危機の時代に、自由なアメリカを守ったのは最高裁だった。」(p.110-1)ということらしい。1965に成立した「投票権法」というのも、「南部など人種差別の激しい州の州政府から投票管理権をとりあげ、連邦政府が直接管理にあたり、テストを廃止することなどを骨子としている。」(p.112)ということで、ある種の極端に行きがちな行政をチェックする機構であることが分かる(それよりも行政だけで結構極端な方に流れていってしまうものなんだという恐ろしさも感じるのだけれど)。pp.113-5でも「人種・社会問題での規範作り」としてこれまでの最高裁の演じた役割が述べられていて、アメリカについて勉強するには最高裁の判断について色々勉強してみる必要があると感じた。
     最後に、大統領が選出される過程については、この本よりももっと簡単な前提や仕組みを理解していないと、分かりにくいと思うところもあったが、本音と建前的なところも大きいのだなと思った。例えば選挙制度、二大政党制自体が多様なニーズに応えつつもある程度まとめていかないといけない必要に応えたものであり、「アメリカの大統領は、中道化するように運命づけられている。」(p.189)、「アメリカの選挙制度のあり方は、大統領のあり方を規定し、世界の安定にまで影響を与える制度になったと言ってよいだろう」(同)といった部分に本音が表れているように思う。もっと具体的な、予備選制度や選挙人制度にもそういった本音と建前を窺い知るところもあったが、おれにはもう少し基礎的な知識が必要だと思った。(16/07/20)

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