立志・苦学・出世-受験生の社会史 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490383

作品紹介・あらすじ

受験生はどこから来たのか。怠情・快楽を悪徳とし、刻苦勉励、蛍雪読書する禁欲的生活世界は勉強立身の物語に支えられる。「苦しい受験生」を生んだ近代日本の心性をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 受験現象の時代区分は3つに分かれるとの事だが、特徴的な視点は明治30年代半ばから昭和40年代までの70年間は変化がないとし、戦前戦後で分けていないという事である。ここはあえてそう唱えているのだろうが、男女平等や民主化といった事を無視するのはやや大雑把には思えるものの、総じて興味深い内容ではある。
    著者の時代区分は以下のようになっている。
    ・30年代半ばまでの旧士族中心の「前受験時代」
    ・30年代半ばから昭和40年代までの民衆の中核的エトス(生活倫理)である努力・勤勉に価値を置く「受験のモダン」
    ・それ以降の偏差値導入による相対化とゲーム化の「受験の脱モダン」であり、学歴資本だけではどうにもならず、経済資本や社会資本が重要視されるようになったとする。
    30年前の本なので、内容的に少々古さを感じる所があり記述にも同意しかねる部分がなくはない。特に終盤の記述はポストモダンの影響を受けているのか、社会学・歴史学を逸脱して記述がかなり観念的になっている。
    その後の教育社会学においては格差問題がクローズアップされて、経済資本や社会資本が学歴資本に影響を与えるようになってきているという指摘がある。という意味においては、30年前のバブル崩壊前の著者の指摘は当たらずも遠からずといった印象もあり、先見の明があると言えなくもない。
    昨年は大臣の「身の丈」があり、受験制度改革が話題となっている。また、コロナによる9月入学といった話もでている。偏差値導入から50年が経過し、高校・大学全入時代を向かえて、受験(生)の社会史は新たな展開になりつつあるのかもしれない。

  • 1

  • 明治以降の「受験」を取り巻く社会的環境の変遷を、歴史的にたどった本です。

    福沢諭吉の『学問のすすめ』やスマイルズの『西国立志編』の影響のもとに、勉強を通じての立身出世という物語が広く語られるようになったことや、合格をめざす勤勉や努力と華やかな都市生活への憧れとが表裏となって結びついていたという指摘などがなされています。

    また、豊かな社会の到来によって学歴エリートをめざすというエートスがしだいに色あせていったことや、受験が「地獄」や「刻苦勉励」といった言葉で語られるものから「ゲーム」や「要領」といった言葉で語られるものに変化したことを、ポストモダン社会と結びつけて論じています。

    ふたたび教育格差が問題視されるようになっている現代の状況からは少し離れた議論に終始していますが、私たちがそれなりに苦労してくぐり抜けてきたあの受験とはいったい何だったのかということを、歴史的な視野の中で見なおすことができるという意味で、おもしろく読めました。

  • 受験時代を思い出す。

  •  妻が以前読んだのか、自宅にの本棚にあったので何気なく読み進めたが面白くて読んでしまった。受験生がどの時代にどのように誕生したのか、当時の資料の受験生のエピソードも交えながら具体的な記述があり大変興味深い。さらにそれを教育社会学的な視点から分析しており、受験熱への加熱が歴史的にどのように醸成されていったのか、またそれが逆にどのように冷却する機能をもっていったのか、という言及も詳細である。学生の頃よりも教育職についた今だからこそ実体験と比較しながら読むことができ、大変有意義だった。

  • 二日で読み切った。特に第6章が面白かった。

  • 受験生はどこから来たのか、というのに、明治くらいから始まっている。そこは中国の科挙あたりから始めて欲しかった。神童で、一族の期待を一心に背負って、何度も落ちて、30代になってやばいどうしよう、という一昔前までの司法浪人みたいな話が結構漢文で残ってた気がするのに。。。

    明治40年頃には予備校などが既に発達していた。私立大学が財源確保のために官立大学入試対策の予備校を経営したりもしていた。(高等教育進学者は大目に見ても該当人口の1%)名物講師や定番参考書なども登場

    欧文社の通信添削(昭和6年~。ただし、大正10年には英語添削会というのができていた。)受験旬報という月刊誌も→蛍雪時代。軍国主義の煽りで旺文社と名前を変更。

    イギリスにもアメリカにも月間の受験専門雑誌というのはない(本当か?)
    韓国では1988年に創刊された「勉学」というのがあるらしい

    「受験生」という物語の登場

    ガンバリズムの受験生活。誘惑にかられて堕落、精神を病んで神経衰弱、などの落とし穴と隣合わせ。

    勉学ルートに乗れなかったものに、講義録が人気だった。ただし、中学校へ行けなかった人間の不満を、時間をかけて緩和させる役割が大きかったと思われる。

  • 本書の要旨からははずれるかも知れないけれど「特有の意味や定義が付与され 、区画化された時間にフォーマットされる」という人生における〇〇時期の成立過程があること、受験時代に特有の「神経衰弱」には受験熱の冷却、受験生活からの退避場所としての役割があり、「隠喩としての病」であることといった指摘は面白い。6章ポストモダン云々は能く分からず。

  • 最近まで本書でいうところの「受験生」だったので、登場するエピソードにうなずきながら読み進めることができた。もちろん旧制のナンバースクールを受けるような勉強とは比較にはならないけれども、寸暇を惜しんで勉強したことに違いはない。

    今は、勉強立身といわれた明治期と違い、教育がユニバーサルなものになったとはいえ、受験生一人ひとりに思いやドラマがあることには変わりはない。受験勉強中の“堕落”や“神経衰弱”も変わらない。仕事時間以外の時間を予定の「時間割」も作り、記録を残した。これは東條英機と取り組み方に似ているようだ。

  • [ 内容 ]
    受験生はどこから来たのか。
    怠情・快楽を悪徳とし、刻苦勉励、蛍雪読書する禁欲的生活世界は勉強立身の物語に支えられる。
    「苦しい受験生」を生んだ近代日本の心性をさぐる。

    [ 目次 ]
    第1章 受験生の一日―明治40年7月9日
    第2章 勉強立身から順路の時代
    第3章 受験雑誌の誕生
    第4章 「受験生」という物語
    第5章 苦学と講義録の世界
    第6章 受験のポスト・モダン現象

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著者プロフィール

1942年、東京都生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。京都大学大学院教育学研究科教授などを経て、現在、関西大学東京センター長。関西大学名誉教授・京都大学名誉教授。教育社会学・歴史社会学専攻。著書に『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会、第39回日経経済図書文化賞)、『革新幻想の戦後史』(第13回読売・吉野作造賞)『清水幾太郎の覇権と忘却』(ともに、中公文庫)、『社会学の名著30』(ちくま新書)、『教養主義の没落』『丸山眞男の時代』(ともに、中公新書)、『大衆の幻像』(中公公論新社)、『立志・苦学・出世』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『教養派知識人の運命 阿部次郎とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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