デパートを発明した夫婦 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490765

作品紹介・あらすじ

19世紀半ば、パリに産声をあげた、世界初のデパート「ボン・マルシェ」。衝動買いを誘うウィンドウ・ディスプレイ。演奏会、バーゲンなど集客戦術。からへと、消費のキイワードを一変させた天才商人、ブシコーとその夫人の足跡を追う。

感想・レビュー・書評

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  • 一生を雇われ人として終わることを予め覚悟したうえで、ヒエラルキーを昇ることだけを励みに、全社のために人生を燃焼させる人間、すなわちサラリーマンが誕生することになる。

    ベトナムなどを歩いても分かるが、本来お買い物とは、個人商店に行って値段交渉するものだった。しかもその商品は商店のオリジナル商品(一点モノ)である場合も多い。それがデパートの誕生によって一転し、どのような階級の人も同じ値段で大量に購入することができるようになった。ここまでは何となく想像がつくのだが、デパートは労働者も変えてしまったという。丁稚奉公なしにデパートに「入社」し、「昇進」することによって誰でもある程度の保障とお金を手に入れることができるようになったのだ。コネがなくてもチャンスさえあればお金持ちになれる社会の始まりだった。デパートに着眼し、現代への幕開けを語るとても面白い本。「悪女入門」の著者なので、軽やかな文章で読みやすかった。

  • 設計部M野さん推薦の本。
    「デパートとは顧客を教育するためのもの」、という発想がすごい。

  • タイトル通り、「デパートを発明した夫婦」の話。「デパート」のシステムはすべてたった一人の天才とその妻が19世紀に作ってしまった!魅力的な商品をそろえること、バーゲン、目玉商品、消費を喚起する店舗デザイン、広告展開、客に「買わせる」店員教育、店員の意欲を高める福利厚生…他にもいっぱい×2。大規模なデパートを運営するためのシステムの大部分がこの世界最初のデパート「ボン・マルシェ」で確立されてたとか、すごすぎ!デパートを作ったブシコーの脅威のアイデアマンぶりに、アップルのジョブズが重なった。一人の天才が世界を動かす話って、痛快でおもしろい。

  • 欲望は教育される。

    きっかけは素朴な疑問だった。
    「デパートはいつ誕生したのか?」
    その解答がこの本だ。

    1852年、アリスティッド・ブシコーはフランスで「ボン・マルシェ」という
    世界初のデパートを誕生させた。
    日本は黒船来航の前年だ。

    パリにウインドーショッピングが広がってきた時代。
    ブシコーは「ボン・マルシェ」の共同経営者となる。
    そこに誕生したのは「欲望喚起装置」としてのデパートの発明だった。
    薄利多売、バーゲンセールの発明、大売り出しの発明。
    中でも白の博覧会と呼ぶべきテーマセールは
    俗にいうニッパチの閑散期を埋める独創的なアイデアだった。
    デパート中が白のアイテムで埋め尽くされたという。
    今のデパートが行っている祭事やビジネスモデルのほとんどが
    そこに生まれていることに驚く。
    ブシコーは壮大な新館を建設し
    スペクタクルとしてのデパートを完成する。
    何かを買わなくても訪れたくなる
    豪華絢爛たる場所にデパートはなっていった。

    さらにブシコーは「教育装置」としてのデパートを発明する。
    ライフスタイルを提案する中で商品を売っていく。
    フランスで一般的な「ヴァカンス」も
    上流階級のそのライフスタイルを
    中産階級にまで広げたのが
    「ボン・マルシェ」だったのだ。
    さらにキリスト教の手帳である「アジャンダ」を模して
    ボン・マルシェ「アジャンダ」を生み出し
    そこに年間の催事を掲載していく。
    人々の欲望は教育によって、喚起されていく。

    さらに「従業員の教育装置」としてのデパートを発明する。
    従業員の地位を高め、ふるまいを優雅にし
    ホワイトカラー化、ブルジョア化していく。
    これはデパートのポジションを高め
    情報発信装置としてのデパートの価値を高めていく。
    さらに従業員自らが新たなライフスタイルの伝道者となっていく。

    現在、デパートのPR販促広告活動で行われているほとんどが
    この段階で発明されていることに驚く。

    そして、ブシコーは「ボン・マルシェ」というデパートを通じて
    モノにあふれたデパートのような日常への欲望を社会全般に蔓延させていく。
    モノにあふれ、モノを求め、モノを幸せの価値基準とする物語は
    「ボン・マルシェ」から世界中に広がっていった。

    そして、2011年。
    日本のデパートはかつての輝きを失っている。
    新たなデパートの発明が求められている。
    その形は郊外化・大型化が進む
    ショッピングモールが担い始めているのかもしれない。
    そのキーワードはデパートが担ってきた優美で美しい大きな物語から
    週末のショッピングにまつわる小さな物語への転換なのだと思う。
    その象徴が、有楽町西武からルミネへの変遷かもしれない。

    しかし。かつてのデパートがつくりだしてきた
    伝統的なスノッブでブルジョアでリッチな物語の
    行く末もより高度な形であるのではと思う。

  • KS4a

  • 百貨店はどのようにしてできたのか?

  • 19世紀の半ば、フランス・パリに世界最初のデパート「ボン・マルシェ」を開店したアリスティッド・ブシコーの評伝です。

    ブシコーは、人びとに新しいライフ・スタイルを提示することで、彼らの欲望を刺激し、大衆消費社会を切り開いたと著者は考えます。また、経営の管理や店員たちの福利厚生にも力を注ぎ、ホワイト・カラーという存在を作り出した点でも、現在の高度産業社会の基礎を築いた人物だとされます。

    本書は、こうしたブシコーの一代記というべき内容をまとめたエッセイです。さらに著者は、このような視点から「近代社会」の形成をかいま見ようとしているといってよいように思います。

  • めっちゃ面白いし読みやすい。タイトル通り十九世紀後半、デパートを発明したフランス人・ブシコー夫妻の話。世界初のデパート「ボン・マルシェ」が如何にして創設され今日の百貨店商法に繋がっているかという全体が書かれている。
    歴史雑学を知るような気持ちで読み始めたが、知らなかったのが恥ずかしいくらいこの夫婦すごい。
    今では当たり前になってる未使用品の返品対応・薄利多売とバーゲンセール・国外へのカタログ注文受付の発想だけでもすごいのに、
    消費者の階級上昇志向を巧みに操り購買=義務と認識させる手腕(本文ではデパートが消費者を教育すると書かれている。すごい)や、
    当時は前例がなかった(?)とされる従業員への基本給+歩合給制度、社宅社員食堂の無償提供、退職金や積立年金の制度の確立…
    消費者の購買意欲をもっともそそる、清潔で教養を感じせさせる販売員を育成するため外国語や音楽の一流教育まで受けさせたというのが本当にすごい…
    福利厚生の拡充で会社のブランド力・帰属意識を高め、それが利益を生む原動力に…ってもう話が上手く行き過ぎてて、これ全部考えたってどんなこっちゃという感じ。
    ブシコー夫妻は高等教育を受けていたわけでもなく、観察眼と行動力と誠実さが武器だったと言っていいのかわからないけど、時代の波を作って乗りこなした人たちなんだな。
    優秀な協力者もいたと思うけど、そのあたりは言及されていないのでこの本だけでは不明。

    商人優位で購入者に心理的負担が強かったとされる当時の店頭販売が、買い物中毒者を生み出すほどの快感行動に変わったというの、歴史の面白みがすごい。
    読んでよかった〜

  • 19世紀の半ば、フランス・パリに世界最初のデパート
    「ボン・マルシェ」を開店した
    アリスティッド・ブシコー

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E7%99%BE%E8%B2%A8%E5%BA%97

    https://nakaeshogo.com/boucicaut/

  • 現在流通中なので今の表紙しかないか……
    旧装幀で読みました。

    19世紀半ば、パリに産まれた世界初のデパート<ボン・マルシェ>
    ゾラの小説『ボヌール・デ・ダム百貨店』とその取材記録である調査ノート、大量のボン・マルシェ発刊物を使って、創業者ブシコー夫妻の天才っぷりを紹介した本です。
    旦那の経営者としての才覚も凄いですが、奥さんもデキるんだわこれが。
    二人揃えば最強。
    物を必要にかられて嫌々買うのではなく、特に必要でなくとも買うことに嬉々とする「消費者」を産み、彼らに奉仕する従業員-後の「ホワイトカラー」を作り出し、「固定給+歩合制・昇進有り/寮・食事付き/制服支給有り/退職金・年金有り/社内貯蓄制有り」といった現在に繋がる制度を次々と導入。
    (なんとデパートの上階は男女別の従業員寮と専用食堂!当然そこで働くコックたちもいました)
    そうやって稼いだお金は、<ボン・マルシェ>と従業員につぎ込み、余ったお金は惜しげもなく慈善事業に使ったため、夫妻が亡くなった時にはたくさんの人が追悼したとか。

    発行が古い本ですが、なかなか面白かった。
    鹿島さん入門にはいいかも知れない。
    『馬車が買いたい!』も気になってるので、みつけたらそのうち読みたい。

    装幀 / 杉浦 康平+赤崎 正一
    カバー絵 / 建築家ポワローと技師エッフェルの作ったクリスタルホール(1874年完成)

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著者プロフィール

1949年生まれ。東京大学仏文学科卒。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。フランス文学者。1991年『馬車が買いたい!』(白水社)でサントリー学芸賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)で講談社エッセイ賞、2000年本書『職業別 パリ風俗』(白水社)で読売文学賞評論・伝記賞受賞。著作は他に『「レ・ミゼラブル」百六景』(文藝春秋)、『パサージュ論 熟読玩味』(青土社)、『情念戦争』(集英社)、『渋沢栄一』(文藝春秋)、『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』(新潮社)など多数。書評アーカイブWEBサイトALL REVIEWS主宰。

「2020年 『職業別 パリ風俗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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