オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490970

作品紹介・あらすじ

西欧人の見た「残虐な征服者」は、西欧をはるかにこえる先進国だった。羊飼いでも大臣になれる開放的な社会。キリスト教世界で迫害されたユダヤ難民を受け入れた宗教的寛容性。多民族・多宗教の超大国を支えた「柔らかい専制」の秘密に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 一気に読めるオスマン帝国入門書。

    我々日本人は、学校教育の影響もあり、どうしても西欧の視点から歴史をみてしまいがちだが、本書のようなオスマン帝国を主語にした歴史の本を読むと、世界の多様性が実感できて面白い。

    オスマン帝国で興味深いのは、どうやって階層の固定化を防止し、能力主義に基づいた政治組織・軍事組織を作ってきたかどうか?

    そして、イスラムをベースにしながらも、民族・宗教や出自に関係なく、あらゆる住民が迫害されずに自由に住んでいられたのかどうか?

    西欧社会や中国社会とはまた違った文化・文明がここにはあり、日本人にとってなじみの薄い、イスラム社会においても大きな影響力を持ったオスマン帝国の実態を知ることができる。

  • 『オスマン帝国の解体』につながる著作。

  • 226
    [西欧人の見た「残虐な征服者」は、西欧をはるかにこえる先進国だった。羊飼いでも大臣になれる開放的な社会。キリスト教世界で迫害されたユダヤ難民を受け入れた宗教的寛容性。多民族・多宗教の超大国を支えた「柔らかい専制」の秘密に迫る。]

    「この本は、日本人にとってまだまだなじみの薄いイスラームについての常識をひっくり返してくれるものです。アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸にまたがり、西ヨーロッパ世界の近代化をうながし、イスラーム世界のリーダーとして20世紀まで存在した巨大なオスマン帝国、その実態はどのようなものだったのか?ー本書の姉妹編である『オスマン帝国の解体』もぜひ」
    (『世界史読書案内』津野田興一著 より紹介)

    目次
    序 「トルコの脅威」の虚像
    1 戦士集団から国家へ
    2 コンスタンティノープルの攻防
    3 イスラム=共存の知恵
    4 イスラム的世界帝国への道
    5 「壮麗者」スレイマンの光輝
    6 「組織の帝国」の伝説
    7 人材吸収・養成のシステム
    8 超大国の曲り角

  • オスマン帝国とかオスマン・トルコとか聞いたことはあったけど、よく知らなかったので読んでみた。オスマン帝国が600年も続いていたことも知らなかったし、トルコ共和国の大きさもちゃんと分かってなかったことが知れた。どんな帝国も最後はなんだか切ない。それは知ってた。ともあれ600年の歴史ある国を語るのに一冊の本では少なすぎる。

  • いつ以来の再読だろう。小笠原弘幸「ハレム」を読んだ後に、一番基礎となる概説書を読みたくなり。◆これ読んで、スルタン=カリフ制度はセリム1世にはじまる、宗教ごとに統治するためのミッレト制などは、成り立たないって学んだんだよなあ、となつかしく思い。「イスラムの寛容」も、「柔らかい専制」も手放しで称賛できるものではなく、時代や条件付きで、そういう側面もあったと言える、という段階のもの。けど、これその後一時期一人歩きしちゃった感もあったなあ、と。「イスラムの寛容」については、当時アラビア語を教えてくれていた先生が「あんな、為にするための言説」と吐き捨てるように言ってたのが印象に残る。xxページの地図のチュニジアとエジプトの属領はどこを指すのか気になった。これを読んで、ジェラーリー反乱、ネヴシェヒルリ・イブラヒム・パシャ、チューリップ時代、パトロナ・ハリルの乱、エディルネ事件についてもっと知りたくなった。以下備忘録◆宰相制度の導入。当初は政治面だけが、のちには軍事面の権能も。カプクル制度。常備軍の整備。ワクフとその収益を生む営利施設。バヤズィット2世末期のシャー・クルの反乱。セリム1世のシーア派弾圧-空前絶後の宗教弾圧-それだけサファヴィー朝の宣伝工作が脅威。スレイマン1世は、軍事も内政も、組織の統合のシンボルとして立ち会うかたちに。イスラム理念にもとづくスルタンとしての顔。1654年、最初に大宰相に官邸が与えられる(デルヴィッシュ・メフメト・パシャ)。理論上、スルタンが一律に一円的に課税しうる権利を持つ。アスケリ、レアヤーという法的身分を基軸に、宗教・民族・職能の要素が加わり、オスマン社会は多くのあい異なる社会層からなる。

  • オスマン帝国の始まりから後半までを知ることができて興味深い内容だった。最後、オスマン帝国の終わりまで描かれていなかったのが少し残念。ハーレムの語源を知ることができたのはネタとしても充分。

  • 長きにわたって存在した大国を西洋的視点ではなく、オスマン側に入り込んだ視点から分析、評価している点が興味深かった。人名の複雑さ故、2回読みをして良く理解できた。

  • 著者はオスマン帝国を「柔らかい専制」と言う。その実態を解き明かしていくのが本書である。オスマン帝国がまだ戦士集団だった時代から18世紀までの歴史の流れを追うとともにイスラムの考え方やその考え方のオスマン帝国でのありかた、また、帝国の制度なども解説されている。ようやく、世界史でのオスマン帝国の取り上げられ方も本書が説くような方向性に変わってきたように思う。オスマン帝国史入門の一冊。

  • オスマン帝国はムスリムの国のイメージでしたが多民族、多宗教が受容された帝国だったことが興味深い。
    オスマン帝国の成り立ちから最盛期のスレイマン1世までを追っているのとオスマン帝国の政治システムの説明が主な内容。

  • ST2a

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著者プロフィール

1947年生
1982年 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士
東京大学東洋文化研究所教授などを経て、
現 在 東京大学名誉教授

著書:
『オスマン帝国――イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社現代新書、1992年)
『オスマン帝国の権力とエリート』(東京大学出版会、1993年)
『オスマン帝国とイスラム世界』(東京大学出版会、1997年)
『世界の食文化(9) トルコ』(農村漁村文化協会、2003年)
『ナショナリズムとイスラム的共存』(千倉書房、2007年)
『文字と組織の世界史』(山川出版社、2018年)
『オスマン帝国の解体――文化世界と国民国家』(講談社学術文庫、2018年)
『文字世界で読む文明論――比較人類史七つの視点』(講談社現代新書、2020年)
『食はイスタンブルにあり――君府名物考』(講談社学術文庫、2020年)
『帝国の崩壊――歴史上の超大国はなぜ滅びたか』(編著、山川出版社、2022年)他

「2023年 『オスマン帝国の世界秩序と外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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