魔女と聖女 ヨーロッパ中・近世の女たち (講談社現代新書)

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  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061491250

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのは旧版の表紙だけど、たぶん内容は同じかな?
    魔女裁判や聖女の話は前半で終わり、後半は中世の一般的な女性たちの生活、宗教、地位などの話。イヴとマリアに二極化された女性性、近代になってかえって退行した女性の権利、断食の苦行から法悦を得る聖女たちや半聖半俗の女性集団ベギンなど面白い話が多い。

  • 魔女と聖女、そして、その狭間の女性たち、その歴史や性質、文化などの具体的な事柄が語られる、ヨーロッパ中近世の女性史。

    NOTE記録
    https://note.com/nabechoo/n/n502b2ffa7dcd?magazine_key=m9672e1d4fe74

    そもそも、キリスト教の影響が大きいのか。原罪の原因、イヴ。やはり昔は男中心社会であって、女はよくわからない存在で、恐怖感や嫌悪感があった。権力者は社会秩序を守るため、秩序を脅かす不穏分子として、何の罪もない女性が、魔女に仕立て上げられ、残酷な取り調べや拷問をされ、殺されていった。魔女にされた多くは、社会的弱者の女性たちだったらしい。ペストなどによって社会不安が高まった時は、民衆を抑圧するために、裁判を利用し、もてる民衆ともたざる民衆を対立させたりしていた。16世紀以降、魔女狩りが大展開し、17世紀末になくなった。ヨーロッパ随一の魔女狩りの国ドイツでは、1500~1749年に三万人以上が犠牲なったらしい。欧州全土ではどれくらいになるのか。中には、1~2割、魔男もいたと。魔男も気になるな。

    聖女と魔女は裏返しの関係で、魔女が増えると聖女も増える。当然、見分けがつかないことも。確固とした判断基準があったにしても、紙一重だな。例えばジャンヌ・ダルクとか。聖女から魔女へ? 権力者や、その時の社会状況しだいか。聖女は時代によって様々なタイプがあったようだが、基本、世俗を離れ、神に一生を捧げ、奇跡を起こし、人を救う。先と同様、17世紀末ごろには、聖女もなりをひそめる。「女性は人間ではない、天使か悪魔のどちらか」すごい言葉だ笑 それ故に、男たちはビビる。今ではありえないほどの女性恐怖・嫌悪があったんだな。(まあ今でも恐ろしいし不可解笑?)男と女は分かり合えないか? 「神は男と女を、異なった職務で神に仕えるように命じ、また互いを助けるようにと命じた。両性には、それぞれ適当な固有の本性と傾向がある」そうだね。

    ちなみに、プロローグにあった「魔女の槌」ていう本気になる。今でも手に入るのかな。当時大ベストセラーになって、17世紀にいたるまで魔女狩りの基本的なマニュアルになったと。ヨーロッパで、魔女狩りを正当化し、以降の大々的な魔女狩りをもたらした記念碑的書物らしい。でも今呼んでもあれかな。いまいちかな。

    本書では、挿絵、関連のある絵などの資料がけっこう豊富で、なんか嬉しい。満足。欲を言えば、年表なんかあると、より理解できたかも。でも思った以上に勉強になりました。

  • 「ちくま学術」から増補版が出てしまったが、とりあえず新書のほうで読んでみることに。

    著者は『動物裁判』では、ブタやバッタが裁枯れる時代を描いていたが、こちらは女性が裁かれるだけではなく崇拝されていた事実とその時代背景について描かれており、ほぼ同時に欧州に出現した聖女と魔女、その時代背景を含めて欧州における女性の地位を明らかにしていく。

    フェミニズム的な視点から「魔女狩り」や「カトリック」を眺めるのではなく、魔女の裏表としての存在である「聖女への崇拝」も含めて、聖女と魔女の誕生から終焉までを描くことで、現代新書らしい充実した内容になっている。

    とくに聖なる娼婦としての「マグダラのマリア」についての記述は印象的で、嫌悪の対象でありながら信仰の対象でもある二面性を(割かれているページ数は少ないながらも)うまく中世の女性を取り巻く状況(有機体としてのキリスト教)と対比させてみせてくれる。

    ただ全体的に新書サイズであるがために、情報はかなり不足していると思われる。書きっぷりも『動物裁判』ほどでなく遠慮のようなものが漂い、どこか消化不良なところが見え隠れしているので増補版に期待。

  • 駒沢のブックオフで100円で買った。当時この系統の本を同時多発的に読んでいたのでどれがどれだかあやふや。膝を打つほどではなかったと思う。

  • 「かれらが魔女たちを組織としてとらえるよう促されたのは、当時の人びとがキリスト教会を有機体のイメージでとらえていたからである」

    いわゆる魔女狩りのときの「魔女」と、現代の宗教/文化としての「魔女」にはほとんど連続線がない。ただ、その組織形態はある意味連続していて、どちらも大きな組織を取るようなことがないということだ。

    魔女もカヴンという組織を取ることがあるが、その場合であっても人数は13人を超えることはあまりないと言う。むしろ、そこにあるのは1人1宗派としての意識である。

    だから、魔女を宗教と捉えようとした時、その構成を普通?宗教組織に見られるようなものと考えてしまうと混乱が生じる。

    それがニューエイジ以降に見られるような宗教の個人主義(学術的にはスピリチュアリティと呼ばれるもの)と近いのは明らかだろう。では、かといっていわゆる「ニューエイジ」と同一なのかというとそれもまた違う気がする。

    魔女にもいろいろな種類があるけど、少なからずイメージやシンボルを共有しており、その点において魔女というのは非常に「宗教的」であり、必ずしも共有するシンボルを重視しないニューエイジ群の現象の中で、魔女は特殊な位置にあると考えることができる。

    まあそういうことを考えていくと、日本人的な感覚では「それって宗教というよりやはり文化という言葉のほうが表すのに適切なんじゃないか」というところにまで行き着くわけだけど、この文化と宗教の境目という問題もまたややこしい。

    とりあえず、魔女のドイツ語はヘクセという「垣根=境目」を表すものなので、魔女も「宗教と文化の境目」に位置すると捉えておくのが妥当なのかもしれない。

  • 女性蔑視が作りあげた魔女。
    女性礼讃が生み出した聖女。

    相反しているようでいて
    どちらも西欧中世の時代、確かにあった女性の姿。

    この魔女と聖女の存在を引き合いに、当時の女性観について見通した一冊。

    女性のなかに幻想をみる男性と、知らず知らずのうちにそれを煽り波立てていく女性。
    魔女も聖女も中世が生んだひとつの悲劇と言えるでしょう。

    ***
    魔女と聖女の解説というより、ヨーロッパ中世のジェンダー論と言って差し支えないかもしれません。
    扱っている内容のわりに読みやすいと思います。が、読みきるにはそれなりの根気がいる気もします。興味のある方にぜひ。

  • 面白かったのは時祷書や書籍関連の話。

    時祷書とは祈りや聖者伝の書かれた、12世紀以降のポピュラーな書物。これは何世代も受け継がれる嫁入り道具だったそうな。

    本が嫁入り道具とは面白いですね。
    また国際結婚の際、嫁が持ち込む本は異文化交流の源になっていたようだ。これもまた面白い。なんだか男尊女卑の中で、

    「あたしの持ってきた本読みたいんでしょ?」

    的なやりとりがあったとしたら、ちょっと面白いですね。妄想。

  • [ 内容 ]
    イヴ=魔女とマリア=聖女。
    蔑視と崇拝の呪縛のなかで女はどう生きたか。
    「魔性」と「聖性」をキーワードに中・近世を読み解く。

    [ 目次 ]
    1 魔女
    2 聖女
    3 魔女と聖女の狭間で
    4 したたかな女たち
    5 女性の文化は存在したか

    [ POP ]


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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 魔女と聖女について知りたいと思い、購入したが、拷問に力が入りすぎているような。あと少し感情的な描写が多い。そうなるのも分からないではないけれど、残念だ。
    ヤハウェ「お前の孕みの苦しみをおおきなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め、かれはお前を支配する」


  • 卒論の参考にさせていただきました。
    面白味にはちょっと欠けますかね。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2022年 『歴史学の作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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