安楽死と尊厳死 医療の中の生と死 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061491410

作品紹介・あらすじ

人は死を選択する権利を持ちうるのか。終末期医療と「尊厳ある死」のはざまで死の受容を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 30年ほど前の書籍、読了

    今では普通になってきたと思われる、インフォームドコンセントや臓器提供の意思表示がまだ一般的ではなかった時代、この当時の安楽死かどうかの判断は山内裁判によるとされていた。
    基準は以下の通り
    1 病者が不治の病いで死が目前である
    2 苦痛がひどく見るに忍びない
    3 死苦の緩和が目的
    4 病者の依頼があること
    5 医師の手によるのを本則とする。ただしこれによりえない場合は特別の事情があること
    6 倫理的に妥当であること

    この基準を森鴎外の「高瀬舟」の兄に当てはめていた。
    まぁ、おそらくは無罪であっただろうとの事。
    よかった…のか
    実際に喉掻き切っている場面に遭遇したら、とても正気じゃいられない、心神耗弱状態になると思う
    となると…やはり無罪じゃないかな。。。

    日本人の死生観は死んだら終わり…で、むしろこの世が極楽浄土
    西洋は通過点 死を精神的に受け入れる土壌があるそうだ。

    私も手伝ったのだけれど、数年前にうちの子が夏休みの自由研究で調べ学習をしていた。
    テーマは「日本の死体はなぜ動かないのか」
    海外の死体は割と活発に(?)動くけれど、日本では死体が動かない。
    死者が出てくるとすると、肉体を捨てた精神だけの存在(霊体?)なのだ。
    これはまさにこの死生観によるのだろう。
    我が子ながらなかなかに面白い着眼点だと思った。

    今までの傾向として日本の医師は病気を診て、病人をみない
    だから治せなくなると、退院させられる。
    治すためには、過度とも思われる治療を続ける。
    いつまで治療を続けるべきか決められないのに…である

    死んだら終わり、それ故に死についての議論を日本人は避けてきた。
    だから死に方について、方向性が固まらない…
    尊厳とは何か判断するのは本人である、それを他人が自分の判断で決めることはできない。だからこそ難しいとも言える。
    また、安楽死や尊厳死を望む人の声の中には個人の次元ではなく、日本の伝統、輪を尊ぶという傾向が窺えるとのこと。
    家族に迷惑をかける、肉親や友人の精神的負担を増す。それに耐えられない、という意識がある。
    極めて日本人的だな、と思う。

    宗教学者は3通りの死があるというらしい。一人称の死、二人称の死、そして三人称の死
    つまり自分の死、家族の死、他人の死である
    一個人にとっての死は、個人のものだけではなく、広く社会的な意味を持っているということ


    最後に、引用
    尊厳死をエゴイズムの範囲内に留めないために、死の段階まで自らの生き方が試されていると自覚することで、この理念は初めて歴史的な普遍性を持つのではないかと考える。
    だそうです。

    古い書籍ではあるものの、安楽死や尊厳死について造詣が深いことが窺え、大変考えさせられました。
    またちょこちょこ終末医療やこの分野について、本を読んでいきたいと思う。

  • 2010/11/29

  • 延命のみの治療はいやだ。心臓を動かすだけの生なんてひとかけらもいらない。生きたくもないし死にたくもない。自由に死ぬ、いや違う、自由に生きない権利が個人にあるべきだと思ってる。

    安楽死と尊厳死の違いはわかった。僕が望むのは安楽死。だけど、社会の中で自分の意志で死ぬことはどれだけ難しいことなのか、ということもわかった。せめて尊厳死だけでもできるようリビングウィル(宣言書)ぐらいは用意しておこうかな。最近は遺書を書くのも流行りみたいだし、用意しておきたい。尊厳死協会にも興味ある。

    この本は20年も前に書かれたものなので、現在の社会・法制、医療の進展で状況はだいぶ変わってるだろうと思う。まだ調べてないけど、よくなってる(死にやすくなっている)かもしれないし、悪くなっている(尊厳死は悪という考えが広まる)かもしれない。様々な歴史認識から思想も変わってきてるはずだし、もう少し新しい情報を調べてみたい。

  • "memento mori"この言葉が真っ先に浮かんだ。
    安楽死、尊厳死、自殺、自殺幇助、脳死、延命措置、臓器移植、植物状態。

    何をもって、尊厳と云うか。その定義は明確ではないな。
    読み進めれば、読み進めるほど、解から遠退いて行くような感じ。
    筆者自身も述べているように、混沌混乱しながら進んでゆく。

    しかしながら、どうしても、この哲学観、倫理観だと個人的主観に拠るのでいた仕方ないとも感ずる。
    死生観のエゴイズム。

    現行の健康保険制度では、薬を大量に使用し、検査を頻繁に行い、長期入院させれば、保険料収入が莫大なものになるという構図をもっている。
    延命治療の善し悪し。いや、善し悪しで決めることではない。

    欧米や日本と比べた場合、どうしても宗教的背景で差異が生じるのは致し方ないな。

    さて、どうしたものか。
    リビング・ウィル、ドナー提供。

    植物状態でチューブだらけで、生ける屍。人間としての尊厳...

    関連の文献を更に読みたくなりました。

  • 少し古い本ですが、安楽死・尊厳死に関する最良の入門書です。
    僕はこれを学生の頃に購入し、安楽死・尊厳死と法制度との関わりについて考える上で、ずいぶんと参考になりました。

  • 学校の図書室で手にした一冊。小論文対策コーナーをみてて面白そうだった。読みかけだけどまぁ面白い。ただ、、古い。

  • 12/15 市立図書館

  • 高校時代、ディベートの資料として購入。もう一度、読んでみるべきかも。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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