- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061491502
作品紹介・あらすじ
資本主義の駆動力は何なのか。ゆたかさの果て、新たなフロンティアはどこに求められるのか。差異・距離が生み出す人間の「欲望」の観点から、エンドレスな拡張運動の文明論的、歴史的な意味を探る。
感想・レビュー・書評
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資本主義を「欲望」という観点から論じている。第4章「外」へ向かう資本主義における、ヨーロッパの消費革命についての記述が面白かった。また、書籍のテーマである「欲望」についても頷かされることが多い。昨今では、これに類似したテーマが扱われることが多いが、本著は20年以上も前に記されたものである。そのような点からみても一読の価値はあると思いました。
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資本主義は
国外のフロンティア
→国内の大衆消費者
→人々のアイデンティティ
→広告で作られた実態のない「好奇心」
の順に欲望を拡張してきた、と言う話。
最近までを綺麗に書いてるなぁと思ったが、読み終わって奥付を見たら1993年出版でびっくりした。
日本の成功は、同質な品を大量生産する米国的製造から、より細かいニーズに添う生産にいち早く変えたから。
その後は「個々人」に寄り添うことが出来ず、広告代理店が「好奇心」を煽り実態のない消費を作った。
いまIT企業がイケイケなのは、テクノロジーで個々人に寄り添うことを実現したからか。
小麦の罠と一緒で、豊かになって増えるからより作らなきゃいけない。
でも、昨今世界的に突然少子化が進んでいるから、もう作らなくていいというフェーズになった。
これが「モノ消費」から「コト消費」への転換駆動力な気がするな。
30年前の本だけど、近年流行った「お金2.0」とか「モチベーション革命」とかと書いてあることは同質で、なんか気が抜けた…
人間言うことは流転するんだなぁ… -
ヴェーバーのプロテスタンティズムの倫理と資本主義の成立を関連づけた議論ではなく、資本主義の成立をバタイユの蕩尽やゾンバルトの理論を援用しながら展開し、その特徴や病理をあぶり出している。
ヴェーバーに対して漠然と抱いていたモヤモヤ感が少し明快になる感じ。 -
私自身は、イデオロギーやそれを軸とした経済システム、法体系というのは、人間の支配欲から成り立ち、それを統制するべく形成されたという立場である。著者は、経済史家のブローデルによりなされた資本主義と市場経済の区別を用いながら、資本主義の形成を、欧州が中東の舶来品を入手したいとする欲望から順を追って説明する。カール・ポランニーによる欲望の交換などの考察からすれば、些か手順に飛躍があり、資本主義の存在そのものを文明国に限った断定的な感が拭えないが、前提が受け入れさえすれば、著者の考察は理解しやすく、馴染みやすい。
また、欲望の条件は、客体に距離のある状態、すなわち分離された対象に価値を自覚する事、としたジンメルの欲望論を引いている。これについても、希少性や対象への競争が価値を高めるという説明だが、これも一つの条件に過ぎず、言葉の定義としては物足りない。労働を生み出す労働者の価値、商品の価値を限界効用に照らしながらも、では、普遍的価値とは何か、もう少し掘り下げられたかも知れない。
グダグダ述べたが、種々参考文献を引きながら、著者のように論理的に資本主義を考察するには、私自身には参照用のストックもなければ、事実関係を確かめる時間、実力もない。然るに、考察の助長として非常に有益な著作であると言える。
欲望の果てにあるもの。資本主義の終焉、それはシュンペーターの言う社会主義への移行では決してない。価値追求が即ち競争であるなら、その果てにあるのは、支配の許容、つまり究極の格差社会だ。支配欲の統制システムが瓦解するのだから、当然、支配世界が復活する。 -
新奇なものを手に入れたい欲望が資本主義の根底にある、と読みました。
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資本主義と、それを動かす動力である「欲望」について論じた本です。
「市場経済」という観念とその基礎にある「自由」の観念は、個人主義や自由主義、デモクラシーといった西欧の価値観と深く結びついています。しかし、資本主義の中から現われ出た「産業主義」は、むしろ西欧の社会を支える骨格に対する挑戦とみなされると著者は言います。
著者は、ヨーロッパに資本主義が生まれた歴史的経緯について考察をおこない、ヨーロッパの外にある文明への「欲望」が、資本主義を動かしてきたと論じています。しかし、資本主義の「外」が容易には見いだせなくなり、さらに大衆の顕示的消費さえもが魅力を薄めつつある現在、人びとは改めて、資本主義によって覆い隠されてきた文化や知識、価値といったものに気づくことになるのではないかと論じて、資本主義の危機が新たな可能性にもつながっていると語られます。
資本主義と欲望をめぐる歴史的経緯についての解説は、興味深く読みました。ただ、著者が最後に語っている資本主義の「後」の可能性については、多くの問題があるようにも思います。直接「文化」や「価値」といったものについて語るとき、私たちはどのようにしてそれらを調停すればよいのか、まだ具体的な手段を持っていないように思われるからです。現在の社会制度に即した手続き的な正当化以上のものを求めることはよしたほうがいいような気がするのですが。 -
資本主義に対して人間の欲望という新しい切り口からみた面白い本である。無目的な経済成長至上主義を前提とされている資本主義システムを再度見直す時であるかもしれない。差異への欲望、真新しさへの渇望を前にして無限拡張する世界はどうなるんだろうね。
著者プロフィール
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