- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061492301
感想・レビュー・書評
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膨大で独創的な折口信夫の論を分かりやすくまとめ、現代の視点からその体系を検証した本。民俗学の本をある程度読んだ人間としては、「この考え方も折口発だったのかー」というのが色々あって面白かった。
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折口信夫について一切の知識がなかったので、彼について、ざっくばらんに知るために読んだ。
折口の生涯などには一切ふれず、彼の著作の流れ、基本となる著作の紹介と、著作にたいする筆者じしんの批判。批判は、誠実な検証がなされているという感じがして、すごく好感が持てた。(ただ、好感が持ててしまうだけに、折口初心者なので、折口にたいする不信感が募った)
折口は、日本民俗学の領域で、柳田國男とならぶ双頭であること。柳田に触発されて多くの論文を発展させていること。(柳田が庶民の生活の解明につとめたのに対して、折口は芸能史や国文学の研究につとめている)
柳田の研究は、帰納的、個別的。多くのデータを取ることで自然科学的に実証していた。
対する折口の研究は、演繹的、体系的であった。実感尊重主義であり、かぎられた資料をもとに、実感を駆使して頭の中で理論をくみたてる。のちになってその理論に都合の悪い資料が出てくると、素早く理論の組み替えをおこなうが、前の理論との整合性には考慮がはらわれず、矛盾した理論がかれの名前のもとに同居することになる。
紹介されている折口の論は、
まれびと、翁と三番叟、依代、鎮魂、常世・他界。
データとして使えるのかは甚だ疑問に思ったが、紹介されている折口の思想はどれも魅力的。まれびとの考え、依代のところ、神への犠牲は殺すべき神の身代わりである。個人は異教の人を他界人と考えた。など。
その他、筆者の書いていることで面白かったこと
犠牲が神の身代わりではなく、神そのものであること。(アイヌのイヨマンテ)
折口の天皇論が、戦時の国民にイデオローグとしてもたらしたこと
折口の天皇論では、天皇霊論のモデルが、沖縄地方の支配者の支配権を保証する世かけセジにあること(天皇の起源)
筆者の論が中心的ではあったが、そこまで筆者が前面に押し出てきてうるさいわけでもなく、説明もすごく分かり易かった。 -
折口に関しては概要しか知らないのですが、ある程度の彼の理論に対する知識がないとやや読みづらく、用語解説もほとんどありません。
彼の主要な理論を項目ごとに分けて整然と批判を加えていくのですが、そのために引き合いに出される国内ないしは中国、朝鮮の宗教的儀式の数々が非常に面白く、興味深かったです。
彼の研究は日本の原信仰からあの世観、能などの古典芸能まで幅広く、この本の中でどれもある程度触れているので、民俗学にあまり明るくない自分でも十分楽しんで読めました。
著者プロフィール
諏訪春雄の作品





