神風と悪党の世紀: 南北朝時代を読み直す (講談社現代新書 1243)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492431

作品紹介・あらすじ

蒙古襲来を機に高揚する、神国思想。各地で進む、寺社・荘園の再建、聖地回復の民衆運動と、排除された者たち。時代の変革願望がもたらした、後醍醐天皇の「新儀」とは。鎌倉末から南北朝へと続く、動乱の世紀を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で購入。

    本書では、13世紀末~14世紀を「『神国日本の誕生』の1世紀」と位置付けている。
    言い換えれば、
    「蒙古襲来を直接のきっかけとして、神風に象徴される日本神国観念が台頭し、寺社造営や殺生禁断の民衆運動が全土に拡大した時代」
    ということになる。

    鎌倉末~南北朝についてこれまであまり知ろうとしてこなったけど、なかなかおもしろい。
    寺社勢力の動きに着目してこの時代を見る本は、初めて読んだ。

    蒙古襲来への危機感と寺社勢力の喧伝によって台頭した日本神国観。
    民衆レベルにまで浸透した日本神国観に乗じて勢力を拡大する寺社。
    その中で、「神の戦争(=祈祷)」を行う寺社に反抗する者には「国土の怨敵」として「悪党」の烙印が押される。

    その一方で、この時代は領主集団による荘園(公領)制の再編の時代でもあった。
    肥大化した領主集団と細分化された所領を一円所領支配と再分配でまとめ、領主層のリストラをおこなうとともに自立した封建権力をつくり上げようとしていた。

    そうした動きが後醍醐天皇の下でまとまり、より鋭い改革が加えられて次の時代へつながる決定的な流れがつくり出されていく。
    しかし「神国日本」の観念は、自らを仏神をも統制する超越的な存在にまで高めた後醍醐天皇の没落により、共にその権威を失墜させた。
    南北朝期は天皇・朝廷の滅亡が現実のものになりかけた時代であった。

    まさに激動。
    う~ん、おもしろいぞ南北朝。これからちょっと意識して本を読んでみよう。

    この本で印象的だったのは、後醍醐天皇の評価かな。
    後醍醐が挙兵によって打ち倒したのは鎌倉幕府、というのは間違い。
    真に打ち倒されたのは蒙古襲来以来の幕府・朝廷の協調路線であり、後醍醐は「鎌倉・京都」を滅ぼして新たな政権を樹立したのだという。

    すごい。
    後醍醐天皇って個性は、もっとおもしろいものを持っていそうだなぁ。

  • 南北朝時代を新書で扱っている作品は少ないが、所謂通史と少し違う視点で記述されている

  • [ 内容 ]
    蒙古襲来を機に高揚する、神国思想。
    各地で進む、寺社・荘園の再建、聖地回復の民衆運動と、排除された者たち。
    時代の変革願望がもたらした、後醍醐天皇の「新儀」とは。
    鎌倉末から南北朝へと続く、動乱の世紀を活写する。

    [ 目次 ]
    第1章 異国の要求
    第2章 神国の誕生
    第3章 悪党の烙印
    第4章 徳政と伊勢神道
    第5章 荘園社会の危機
    第6章 後醍醐天皇の専制
    終章 神国日本の行方

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  • 109夜

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。
東京学芸大学卒業、同大学院修士課程を経て、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程で単位取得。専攻は日本中世史。現在、和歌山大学教育学部教授(二〇一三〜一六年 観光学研究科博士課程兼任)。
著書に『中世の変革と徳政─神領興行法の研究』『蒙古襲来』『楠木正成と悪党』、編著に『きのくに歴史探見』『中世終焉』『紀伊国桛田荘』『中世都市根来寺と紀州惣国』がある。

「2019年 『新 神風と悪党の世紀 神国日本の舞台裏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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