身分差別社会の真実 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492585

作品紹介・あらすじ

身分とは何か。誰が差別されたのか。被差別民の起源は。身分制社会の矛盾を追究し、江戸の社会構造を捉え直す。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で購入。

    「身分制社会」の時代であった江戸時代。
    「身分」はあらゆる階層に「差別」を生み出し、人々の意識も基本的にはそれによって貫かれていた。
    それは、「総差別の時代」とでも名付けうる時代であったのである。

    江戸時代の身分差別は、「武士⇔農民」という一般的なイメージのようなものよりも、むしろ同一身分の内側にこそ厳しい階級差があった点に特徴があった。
    石高による大名間の階級、禄高による武士間の階級、寄合参加資格の有無による農民間の階級…
    現在抱かれているイメージよりはるかに複雑な様相を帯びていた。

    こうした社会のすべてに差別をつけて組み立てた「総差別」の時代において、最たるものが「えた・ひにん」の問題である。
    この江戸時代の「被差別民」の実像を実証的に考証しようというのがこの本のテーマ。

    「ケガレ」た存在と見なされて他の身分との付き合いから排除され、「平人」との縁組を禁止され、死してなお差別戒名によって人間扱いされない。そうした悲惨な差別を受けてきた人々。
    しかし筆者は彼らが「貧しく」「惨めな」生活を強いられていたとは必ずしも言えないと主張する。
    皮革業や竹細工業、あるいは灯心生産などの専業によって財をなす者、農地を取得することで大地主となった者など、裕福な被差別民は少なくなかった。
    そしてそれを「分不相応」として抑圧しようとする支配者や平人たちに対し、自らの権利を堂々と主張する者も数多くいた。
    その全てが認められたわけではないが、我々の想像以上に彼ら被差別民が前を向いて生きていたことに驚かされる。

    被差別民が生業とした数々の仕事が、差別する側の生活を支えていた。
    斃牛馬の処理や罪人の処刑によって培われた医学的な知識、武士の妻子をも魅了した優れた芸能。
    様々な顔を持つ被差別民の実態は興味深く、またおもしろい。

    「ケガレ」「キヨメ」という、中世以来(あるいは更に古くから)の観念が絡むだけあって問題は根深いが、まずはイメージによらない事実を知るところから始めるべきだろう。
    そういう意味で、偏ったイデオロギー色のない本書は手頃な入門書になっている。

  • 被差別民を中心に中世から近世の身分差別の実態を記した一冊。

    差別の成立や差別の中身に留めずその生業、生活や差別層との交流や抵抗等に広く触れています。そこから導かれる差別民像は惨めであると同時に勤勉で理知的な部分すら感じます。また、差別民と被差別民との距離感も現在と大きく異なります。明治以降の経済格差が差別をより陰湿化させた感があります。

    ちなみに武士階級間や農民階級間での差別に関しても触れています。身分制度の確立が江戸の発展を支えていた事実も無視できません。問題はそれを過去の「やむを得ない過ち」とせずに利用し続け、反省するまでに時間をかけすぎた事なのかもしれません。
    3.11後、伝統的「ケガレ」感によって新たな差別が芽吹きつつあります。差別の歴史にふれる事で、それに立ち向かう知識を得ていきたいこのごろであります。

  • 当初、別のことを期待してタイトルだけで選んだ本でしたが、意図せず、現代社会につながる差別問題の根源を知ることとなりました。大変勉強になりました。ただ、ひとつ残念なのは、文書表現に、かなり推定的表現が多いこと。著者自身が書いている様に、現在も差別社会の原点を学んでいる途中で、まだまだ知らないことがたくさんあると言った謙虚さの表れでもありますが。その点、好印象でもあります。

  • 新書・江戸時代シリーズ№2。近世の被差別民の実相を、史料や先行研究に基づいて解説する。まぁ、本書の指摘する①死の穢れに端を発する通交拒絶という差別内容、②被差別民の淵源が中世前期に遡行する点は、今では割に知られた内容だろうが、それとは別に、近世期における被差別民の継時的な人口増加、これを支える一定レベルの経済力(皮革製品や雪踏、草鞋等の製造販売)など、いわゆる商業資本主義の萌芽ともいうべき状況が、被差別民の生業から見て取れるのは本書の売りであろうか。1995年刊行。著者は㈶信州農村開発史研究所所員。

  • [★★★]優れた入門書(ところどころ、文章が緩いのが気になるが)。
    「わたしもり」への差別があったとは...! その背景には、大自然・宇宙(この場合は川)を操る人間への畏怖の感情があるというが、これは、西洋中世における粉ひきへの差別と同じ論理だろう(阿部謹也によれば、粉ひきは水車を操り水位を調節することで、<大宇宙>と関わったため、人々に畏怖の念を抱かしめ差別下におかれた)。

    「えた」のなかには手工業や農業で力をつけ、中には大地主となるものがいたこと、医薬に関する高度な知識・技術を身に着けた者も多かったこと。いずれも、教科書的なイメージと乖離があり、新鮮だった。

  • 主に江戸時代に軸をおいて、日本の身分差別の歴史をひもとこうとした一冊。
    ここに書かれたことすべてが真実とは限らないし、すべてを書き切れているわけでもなければ、著者自身もよく分からないと書いていることもあります。
    けれど、学校で習った差別の歴史に違和感を抱き続けていたので、これを読んで大部分すっきりしました。
    いま、学校やマスメディアで一般的に語られる昔の日本と、実際の実態というのはかなり乖離しているのではないかな、と思います。

  • 授業では「えた・ひにん」はただ差別されてたとしか学ばなかったが、より詳しく時代背景をもとに知ることができた。他にも被差別民がいた事、裕福な暮らしをしている人もいた事などいろんなことを知ることができた。著者の「差別」を無くそうという意気込みを感じられる一冊。(図書館)

  • こんなちっちゃい島国の中で、同じ人種なのに差別が存在して、今も完全になくならない。。

    小学校でチラッと学んだ記憶はあるけど、大衆が襲って惨殺した…とか、そういう記録を知るとそこまでの憎しみを何が生み出したのか考えてしまう。
    自分の先祖を辿ってみれば、そうやって排除してきた側だったりするのかな…

  • 江戸時代における被差別部落について書いている本。被差別部落の人々が‘ケガレ’を‘キヨメ’る役目をにない、人々の生活に欠かせない役割であった事など大変勉強になりました。

  • 上の本のシリーズ2なのだが,これは外したかな.確かに江戸時代は社会秩序の根底に身分差別の構造があるが,その中でエタ,ヒニンにフォーカスすることが江戸時代の社会秩序分析に役立つとは私には思えない.つまり,最も極端なクラスのケースを一般に敷衍することが妥当かという問題.
    また,非差別民たるエタ,ヒニンが,同時に捕吏を勤めるという,差別の相互構造にも殆ど触れていないところにも,読んで不満を持った.

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