禁酒法: 酒のない社会の実験 (講談社現代新書 1284)

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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492844

作品紹介・あらすじ

「高貴な理想」とは裏腹に、もぐり酒場の隆盛、密輸・密造業者の暗躍をもたらした禁酒法とは。華やかな「ジャズ・エイジ」を背景に問う。

感想・レビュー・書評

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  • ビール→当時は液体のパン。薬剤。
    食欲増進、ビタミンミネラル、利尿

    禁酒法は人々が民主的に理性的な判断を下したが、結局酒という身体を直接的に刺激する快楽には抗えない、それくらいのことだと思っていたし、その面もあったが実際は利益を追い求めるための政治的な理由もあったんだなと知る。

    人間って結局よくに抗えないよね、的なものを期待していたが禁酒法の成立から廃止までの史実をなぞるのがメイン。

  • 図書館で見かけて。ドライ派(禁酒推進)に傾き、ウェット派(禁酒反対)に揺り戻すダイナミックさがすごい。アメリカの社会情勢がしっかり描かれていて読みごたえがあった。「実験」は14年で終了したが、著者は失敗とは捉えておらずその理由に納得した。それは当初の目的を達したから。①政治と社会の浄化、②素面の生活信条。 
    まるで国家が自分の意思を持って荒療治を施し目的を達したからもうやめようと判断したように見えておもしろかった。

  • 歴史では、現代から振り返って見ると奇異に感じる決断も、当時の状況から考えると一つの流れの中にある、という事例がある。この禁酒法もそのひとつと言える。かねてから飲酒による被害に頭を悩ませていた米国社会では、第一次世界大戦への参加を背景に享楽よりも自制的、節制的な生活を望み、禁酒法を掲げる議員への強い支持をし、成立させた。効果は見られたが当初の喧伝ほどでは無く、また、副作用も多くあり、大戦の終了と少ない効果による失望から、半禁酒法の議員が支持を集め、この法律は無効化された。
    物事の理解には、断片的な事実だけでは困難で、背景や全体の流れが重要であることを気づかされた。

  • 始めはキリスト教系婦人会の活動だったが大統領が賛成するまでになった。
    禁酒法下でも所有は許されていた。
    取り締まる側と不正に参加していた。
    禁酒法賛成派の経済の成長をあげていたが世界恐慌で力を失った。
    禁酒法の成果をあげるとしたらアルコールの消費量は減っていた。

  •  WOWWOWで『ヴォードウォーク・エンパイア』というドラマを放映している。 禁酒法時代のアトランティックシティを舞台にしたギャングたちの抗争とそれを追う連邦捜査官たちとの攻防を描いていて、とても面白い。


     でも謎なのが、なぜ禁酒法なんていう滑稽な法が施行されたのかということ。禁酒法がなければギャングたちが金儲けすることはできなかったはずなのに。


     というわけでこの本でお勉強をした。


     禁酒法といっても飲酒する行為自体は罰則の対象になっていない。禁酒法が適応されるのは、酒類の製造・輸送・販売だ。禁酒法が施行以前のお酒を個人が保管していて、それを飲むこと自体は自由。酔っ払っても自由。つまりは供給ルートを断つというのがその目的だった。


     読んでみると、禁酒法はそれほどおバカな法律ではないことがわかる。


     禁酒法施行以前のアメリカの政界ではドイツ系の酒造業者が幅を利かし、不正がはびこっていた。それに加え第一次世界大戦を契機にドイツ移民への反感が強くなり、政界で親ドイツ派を一掃する活動が活発になった。これが禁酒法成立の背景のひとつ。
     
     また家庭内においても、酒びたりの亭主の横暴に女性たちが立ち上がった。稼ぎを酒と女とギャンブルにつぎ込む男たちの社交の場は酒場だった。
     職場でも酒酔いによる事故が多く、作業能率も低迷したため、経営者たちは過度の飲酒をなんとか止めさせようとしていた。
     酒場は悪の巣窟とみなされ、犯罪の温床となっていた。


     酒が無くなればいい、酒場がなくなればいいと、まあ意外にも、社会全体では禁酒法賛成の気運は高まっていた。


     とはいってもねえ…


     著者はある程度の効果はあったと言う。


     政治腐敗は改善されたし、低賃金の労働者は地下酒場の高い酒は飲めなくり、飲酒の習慣が減ったという。


     でも新たなギャングが政治力を手にしたし、違法で危険な酒で健康被害を受ける人も出るしで、やっぱり失敗だったんじゃないのかな…


     今だったら禁酒じゃなくて、増税すれば事足りると思う。
     

  • 禁酒法が罷り通った…法律として明文化された時代/政党背景。
    製造や販売、運搬の禁止など程度は州によって異なる。
    禁酒を強いられた人々はあの手この手で酒を求め、お上といたちごっこ。
    よりよい社会を求めて施行されたものの、汚職事件や、密造業者ばかりが利を得て法律を順守したメーカーが割を食い、更には命までも失う原因となったのは悲しい。

  • 禁酒法という法律がどうしても理解できないので、読んでみました。
    時代背景と法律の成立ちは分った気がします。
    製造、販売、移動が禁止されてるだけで、個人が家で飲むのは構わないのね。家で簡単にワインを造るための濃縮還元ぶどうジュースが爆発的に売れた、という話が何か笑えました。

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著者プロフィール

2016年5月現在広島大学大学院総合科学研究科教授

「2016年 『アメリカにおけるタバコ戦争の軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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