日光東照宮の謎 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492929

作品紹介・あらすじ

絢爛豪華な日光東照宮は徳川家康を「神」と祀る。なぜ日光の地なのか。東照大権現とはいかなる神か。創建にまつわる謎と、彫刻群が伝える壮大なコスモロジーを解読。

江戸のほぼ真北――東照宮を江戸の真北に祀るということは、都城制における大内裏の位置を北端に設けるのと同様の意味があったのではないか。すなわち、久能山において神として再生された東照大権現が、江戸城の真北に遷座されることによって、その神格が「宇宙を主宰する神」と一体化されたことを意味しよう。つまり、東照大権現を「宇宙を主宰する神」へと昇華せしめるために、江戸城の真北に遷座しなければならなかったのである。これこそが、東照宮の日光遷座の最大の理由であったのである。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 東照宮ガイドの参考に

  • 日光東照宮には何度か行ったことがあります。
    雰囲気が好きなのですが、歴史をきちんと勉強するようになってより好きな場所になりました。

    筆者が日光東照宮禰宜で文庫長であるということもあってか
    丁寧で堅実な内容に感じました。
    難しい、堅いという書評を複数見かけましたが
    自分はまったくそのような印象はなく
    寧ろ平易でわかりやすい内容でしたし
    短いページ数に多くの情報があり、表や写真もあって
    まったく日光東照宮について知らない人でもおすすめできる内容だと思いました。

    『一度植えつけられた先入観や偏見を訂正するのは至難のわざである。』
    との言葉がありましたが、日光東照宮に限らず本当に大変なことで、
    ”勝者”にとってはどうでも良いことでも、レッテルをはられた方にとっては人生を揺るがす一大事です。

    日光東照宮はミステリー調の謎という形でばかり取り上げられることが一時期多かったように感じますが
    そうした好奇心ではなく事実や”内側”で感じることが書かれていて
    大変貴重な一冊だと思います。

    確かに謎が多いと言いつつも、それは謎にしておくべき謎であり暴くものではないのかもしれません。
    『神の本質に関わる問題は、ある特定の資格を有する者以外は触れることが許されていない。なぜならば、本質を白日のもとにさらすことは、その本質を損なう恐れがあるからであり、そこに「深秘」と呼ばれるものが介在することになる。』
    全くそのとおりですが、反面謎が憶測や誤解を呼び、理解の障害となっているというのもまた真実です。

    陽明門の真上には北極星が輝き、星々がこれを中心に巡っているというのは初めて知りました。
    また、写真で感動しました。
    秀吉のラインを断ち切るなど、方角や宇宙に目を向けた解説も面白いです。
    建築に関する費用は「お構いなし」いくらかかっても良く、百両ときいて安く済んだ、と言ったというのもスケールの大きな話です。
    謎を守るために演出として議論をしていたという発想も大変興味深いです。

    興味深いと言えば彫刻のところも本当に面白いです。
    今まできちんと数も把握していないで議論していたというのは意外でした。
    将軍の干支の話も面白いです。
    魔除けの逆柱についても興味深く読みました。紋が逆さになっているところがあるのも同じなのでしょうか。
    そう言えば観光で行った時説明してくださった方は、遊び心と説明してくださいました。

    あとがきの「なんでも知っています、ただし知っていることだけですが」。知らないことがどれだけあるかわからないというところ、とても共感しました。
    参拝者の案内をしていて考えもしていなかった質問をもらい、それがきっかけになったことも多いそうです。
    何を知らないか教えてくれた大勢の参拝者への感謝の言葉もありました。
    これも不完全であるからこその発展の結果と言えるのかもしれませんね。

  • あのきれいで壮大な日光東照宮にまつわる逸話、記録、歴史の話がまとまっている。

    日光東照宮は、当時の国内GDPの3倍の資金を徳川幕府の予算から捻出してつくったことなど、読み物として面白い。

    東照宮の彫刻は、5000以上
    全体として1つの大きな宇宙

    総工費2000億円
    GNP比 2.8%
    自衛隊の予算の3倍
    徳川幕府の支出

    こんな本もあるんですね。

  • おもに家康と日光の関係についてと、東照宮の装飾と家康と徳川家の関係について書かれていました。手頃に読めた上に面白かった。

  • 日光は生前の家康と特別なかかわりを持っていた地ではありません。家康は岡崎で生まれ、久能山に埋葬されました。そんな家康が日光に祀られた理由としては、「家康の尊敬していた源頼朝の信仰の地だった」「日光と言う名前が太陽を想像させてくれる」「陰陽五行説の立場から、祀る場所は王城の北がよいとされたこと」などが挙げられています。3つ目の理由の中の王城とは家康にとってはエドであり、日光は江戸の真北に位置しているそうです。こうして家康は死後も江戸を見守っている・・・だけではないようです。家康が見守るのは、日本全国いやもしかしたら世界中かも知れない、と言うのがこの著者の意見です(ちなみに著者は東照宮で働いている方です)。

    東照宮から真北を見上げればそこには北極星があります。東照宮陽明門のちょうど真上に北極星が見え、そしてもちろん星は北極星を中心に回ります。家康を北極星に見立てる文献はすでに見つかっており、家康は宇宙を主宰する神・北極星となった、というのが筆者の意見です。なんだか壮大なスケールの話になってしまいました。

    この本の前半のテーマは家康が日光に祀られた理由、後半のテーマは東照宮の彫刻の謎、です。

  • 日光東照宮に旅行に行くので読了。
    『日光東照宮 隠された真実』も読んだが、内容はほとんど一緒。
    家康リスペクト。宗教ディスペクト。

    東照宮に行く際にはこれらの本を読んで事前学習して、神聖な場所として東照宮を楽しんでいただきたいと思った。

  • 家康が祀られる日光東照宮。なぜ「日光」に建てられたのかという理由と意義を、地勢(方位)や星の向きなど要素を組み合わせたコスモロジーに求めた第1部。
    「眠り猫」や「三猿(見ざる、聞かざる、言わざる)」の如く有名なものを筆頭に、無数(正確には5173体あるという。数えたのか!)に存在する彫刻。これらの丹念な調査結果をもとに、意匠に込められた意味を解く第2部。
    以上の2部構成で、著者の東照宮(そして家康)への情熱と愛情が語られる。日光東照宮の入門や観光ガイド的な内容を期待すると、意表を突かれるディープな本で、著者の思いが強すぎて、やや客観的な言及に欠ける印象があるのが残念。

  • ダヴィンチコードではないけれど、「無意識に観ているもの(とくに歴史的建造物)には、時に過去の人々が強烈な「意志」を込めてそこに配置したり、細かい部分にもその論理にのっとった「コード」を設定している可能性がある」ということを気づかせてくれる本。
     この本を読むと、日ごろの寺社参詣や、歴史建造物を見に行くたびに、「なんでこの建造物にこの意匠が使われているのか」とか「なんでこの建物はこの配置なのか」と思ってしまう癖が身に着く(それは「やっかい」なことも多いけど)アリガタイ本だった。
     日光は自宅から車を飛ばせば、2時間と掛からずに到着する身近な観光地。何気なくみている東照宮や建築物、そして江戸と日光の方位関係などには徳川幕府の考える世界観や宇宙観が示されていたという内容の本。なぜ江戸ではなく日光にわざわざ葬られたのか(徳川家とはゆかりはほとんどないと言っていい土地なのに)。ほかのどの地でもない日光にである。なぜ、様々な彫刻物にあのような動物や人々が彫られ、あの配置なのか。そしてそれに込められた徳川幕府のコスモロジーとは何なのか。
     東照宮の禰宜である著者が分かりやすく説明してくれる。歴史建造物を観る一つの視点を提示してくれる。面白かった。
     

  • 日光に行こうかなーと思って読みました。彫刻の霊獣の見分け方など、とても勉強になりました。

  • 日光旅行の下準備のために購入。東照宮では聖獣を探しまわって楽しかった〜

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