- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061493834
作品紹介・あらすじ
エゴイズム、親切、友情、虚栄心……人間の「姿」はいかなるものか。複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り、人間の有り様の不思議を考える。
無邪気は道徳的ではない――3歳の子供はカントの目からすれば断じて道徳的ではない。それは積極的に悪をなさないが、善をもなさないのである。まったく同じ理由により、性器を切除したために性欲に支配されなくなった男は、性欲を克服したのではない。修道院内に軟禁されている少女たちは、男遊びや飲酒や喫煙に対する欲望を克服したのではない。外形的、物理的にさまざまな欲望を除去あるいは遠ざけあるいは消去することは、いわば幼児の状態を再現することであり、決して真の意味での欲望の克服ではなく、よってこうした状況のもとにおける行為は断じて道徳的ではないのである。道徳的善は、結局自愛に行き着くさまざまな感情の傾きを物理的に抹殺ないし隔離してではなく、こうした多様な感情の傾きを徹底的にくぐり抜けて達成される。――本書より
感想・レビュー・書評
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⚫︎著者の本は過去に読んだことがあり、たしかカルチャーセンターの哲学講座の受講料を巡るとんでもなく哲学的な言い争いの記載に衝撃を受けたから。
⚫︎結果は大当たりで非常に面白い。大体、哲学の本は本当に読み難くてしんどいのだが、これはそれがない、ほんとにない。
⚫︎カチッとした哲学者という印象だけだったカントがとっても身近に感じられた。
⚫︎幼少期のどうしようもない貧しさや置かれた状況の複雑さが本人の思考に影響を与えているのはなるほどなと。
⚫︎他人を本当に必要としない人もいるんだね。
⚫︎時代が時代だけに最後の女性に関する記載はあちゃーって感じだけど…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
心も弱っている時に、意外と効く特効薬が、哲学関係の本だと思うのです。
1997/12/20第1刷発行なので、20年前の本ですが、そこから更に5年半遡る1992/6に刊行された『モラリストとしてのカント』をやや縮小し適宜改変したものとのことです。
この本は、『フロイト―その思想と生涯 (ラッシェル・ベイカー)』がフロイトの思想そのものではなく、フロイトの生涯を描いたように、カントの生涯を刻むことによって、カントの主張を浮き彫りにしようとしているような気がします。
私は、この本を中島義道さんによるカントの肖像画だと思いました。もちろん、カント自身をモデルにして描かれたものではなく、残された様々な記録を紡いで織られたものです。
色彩には、後の哲学者が採掘した顔料も塗り重ねられ、事実を追求するというよりも、中島義道という哲学者の分析というか、解釈が深く刻みこまれています。
カントという良くも悪くも偉大な哲学者の存在を、一人の人間として親しみを込めて掘り下げることによって、市井の哲学者たちが、読書メーターという井戸に感想・レビューを持ち寄るためのテーマを提供してくれています。 -
040601
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「カントの人間学」中島義道著、講談社現代新書、1997.12.20
230p ¥693 C0210 (2020.07.08読了)(2003.09.06購入)
【目次】
まえがき
第一章 エゴイズムについて
第二章 親切について
第三章 友情について
第四章 虚栄心について
第五章 生活のスタイルについて
第六章 容貌について
第七章 女性について
あとがき
☆関連図書(既読)
「永遠平和の為に」カント著・高坂正顕訳、岩波文庫、1949.02.20
「啓蒙とは何か」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1950.10.30
「道徳形而上学原論」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1960.06.25
「カント『永遠平和のために』」萱野稔人著、NHK出版、2016.08.01
「カント『純粋理性批判』入門」黒崎政男著、講談社選書メチエ、2000.09.10
「カント『純粋理性批判』」西研著、NHK出版、2020.06.01
「ウィーン愛憎」中島義道著、中公新書、1990.01.25
「〈対話〉のない社会」中島義道著、PHP新書、1997.11.04
「私の嫌いな10の言葉」中島義道著、新潮社、2000.08.30
「働くことがイヤな人のための本」中島義道著、日本経済新聞社、2001.02.19
「生きにくい……」中島義道著、角川書店、2001.07.30
「ぼくは偏食人間」中島義道著、新潮社、2001.08.10
「不幸論」中島義道著、PHP新書、2002.10.29
「ぐれる!」中島義道著、新潮新書、2003.04.10
「続・ウィーン愛憎」中島義道著、中公新書、2004.10.25
(「BOOK」データベースより)amazon
エゴイズム、親切、友情、虚栄心…人間の「姿」はいかなるものか。複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り、人間の有り様の不思議を考える。 -
道徳家としてのカントとストイックな生活者としてのカントを同一視するのではなく、生活面はむしろ執着というか自閉的な捉えが浮かび上がってくる。知行合一的な哲学者に対する見方を考え直す本でもあった。
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著者によるカントの考察が書かれている本で、ある程度カントを知った上で読むと面白いと思う。
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哲学
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中島先生のカントに対するピュアな「好き」を感じられてかわいい。
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中島義道氏による「人間・カント」論です。
第1章「エゴイズムについて」、第2章「親切について」くらいまでは読む価値はあるかなと思います。
それ以降の話は要するに
「カントは親友も恋愛も必要なく独りになれる人だった」
ということでしょう。
はぁ。 -
本書はカントを「モラリスト」として読み解く試みであるが、じつはこのモラリストという概念はたいそうつかみにくい。