多重人格 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 72
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061493902

作品紹介・あらすじ

自分のなかに棲む他人-人格の解離はなぜ起きるか。幼女連続殺人・M被告の精神病理とは。最新の知見で心の闇を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 多重人格(解離性同一性障害)についての解説書です。

    多重人格が精神医学でどのようにあつかわれてきたのかを振り返り、精神医学になじみのない読者にわかりやすく説明しています。

    また、連続幼女誘拐殺人事件を引き起こした宮崎勤の精神鑑定書の検証する章もあります。著者の結論は、宮崎はトラウマによる多重人格とPTSDの合併として診断されることになりますが、理非弁別能力をそなえた人格が犯罪を犯したと考えられるため、責任を問うことはできるという立場に立っています。

    最後は、著者の持論である「シゾフレ人間」と「メランコ人間」の区別に基づいて、多重人格をあつかった『24人のビリー・ミリガン』などに共感を寄せるひとが増えている日本の現状を、周囲にあわせるのが得意で確固とした自己をもたないシゾフレ人間が増えているという考えに基づいて説明を試みています。

  • 面白かった。
    変に人の興味をそそるような書き方もしておらず、
    誠実な本でした。
    結構思わせぶりなだけでつまんない本があるからね。
    久しぶりにこういう臨床心理的な本を読んだけど、
    やはり興味は尽きない。

    何故こういうことに惹かれるのかはわからないけど、
    題材としては実に興味深いんだなー。

  • 多重人格=解離性同一性障害について、判りやすく解読してくれる一冊。学識者が書くこの手の新書はともすると専門的・難解・かつ独自の視点に偏ったものが多いというのが個人的印象だが、きわめて平易に、ディテールを深追いせず総論として俯瞰できていて、そのうえ就寝前に読んでも眠くならない程度には「心の闇を覗き見ている快感」を味わわせてくれる。多重人格の入門としてオススメです。

  • 歴史から医学的背景と実際をまとめた教科書

    読了日:2008.01.06
    分 類:教養書
    ページ:266P
    価 格:700円
    発行日:1998年2月発行
    出版社:講談社現代新書
    評 定:★★★


    ●作品データ●
    ----------------------------
    テーマ : 多重人格
    語り口 : やや筆者の感情寄り
    ジャンル : 一般教養書
    対 象 : 少し詳しく知りたい一般向け
    雰囲気 : PTSD寄り
    カバー・イラスト : 国米 豊彦
    ---------------------------

    ---【100字紹介】------------------------
    コンパクトな新書に、多重人格の歴史から、解離、
    トラウマや複雑性PDSDのような精神医学的背景、
    更にアメリカと日本の社会病理、
    多重人格の精神鑑定を受けた刑事犯罪の被告の
    症例検討まで盛り込む一般向け教科書
    -------------------------------------------

    多重人格について、えいや!と詰め込んだ本です。第1章で歴史、第2章でメカニズム、第3章で事例検討、第4章は一般の人が抱きやすい3つの疑問について論じ、第5章で日本で多重人格はどうなるかを書いています。

    第1章の歴史は、菜の花は全然知らなかったもので大変勉強になりました。第2章のメカニズム。メカニズムというよりは、精神医学的にこういうものなんだよー、という説明みたいな感じかも。実際、菜の花は「解離」についても全然知識が足りませんでした、ゴメンナサイ、って感じでした。スプリッティングってそういうことだったのか、とか、精神分裂病と多重人格ってどういう関係よ?とか、かなり基本的なことが分かっていなかったのが続々と判明する感じ。それは菜の花の勉強不足、ということもあるかもしれませんけど(しくしく)、実際に「多重人格」ということばほどには、その内実は一般には浸透していないのじゃないかしら、というのは強く感じました。知らなかったことを知ることが出来る、というのは読書の醍醐味ではありますが、この内容はもっと一般にも知られていいことかもしれないねえ、とちょっとばかり思いましたね。

    で、こういう本を読んで情報収集は大切だ!とは思いますが、ちょっとばかり問題はなきにしもあらずですね。2点ほど、菜の花にはこの本を誰にでも推しにくい理由がありました。

    1つは、ちょっと難しめに書かれていること。比較的とっつきやすく書いてあるのは分かりますが、慣れない人だと読みづらそうです。菜の花は途中で少々キツかったですね。多少、教科書チックすぎる部分があるので、その辺りで挫折寸前になる恐れがあります。まあ、教養書なのだからそれくらいは頑張って読もう!ってところでしょうか。

    もう1つは、やや古い、というところですね。何しろ発刊が10年前ですから。医学分野は発展が速い分野でもありますから、10年前の本は時代遅れもいいところ…の可能性があります。実際には非専門である菜の花にとっては、どこがどう変わっていっているかはまったく分かりませんが、まさかこのまま何も変わっていないことはありえないでしょう。研究をしているときもですね、絶対に古い論文を読んだら、新しい最近の論文も読んで、今も通用する内容かどうか、もしも捨て去られたものならどのような変遷が起こったかを把握しておかないと無意味になってしまいます。なので、この本を読むなら必ず、新しい知見の書かれた本を探すべきですね。もしかすると…180度風向きが変わって、常識のはずのことが非常識になっている可能性だってあるのです。

    というわけで完全には推せないのですが、なかなか面白い本だとは思います。取っ掛かりとしては…。

    ちなみに第3章の事例検討は連続幼女殺人事件のM被告について。第4章で取り上げられる3つの疑問は、「多重人格を診断できるか?」「増えているのか?」「治せるのか?」です。第5章では、何故日本の若者にこれほどまでに「多重人格」が受け入れられたか(多分、多くの若者が「24人のビリー・ミリガン」をあってもおかしくないこと、と受け入れたように菜の花にも感じられます)、アメリカとの違いなどの個人的見解について滔滔と語る、といったところでしょうか。

    全体としては文章は並み、ややとっつきにくく、分かりにくい専門的な説明もありますが、多重人格について殆ど知識がない人なら、情報収集の一助になりそうな作品です。

    ---------------------------------
    文章・描写 :★★★
    展開・結末 :★★★
    簡 潔 性 :★★
    独 自 性 :★★★
    読 後 感 :★★★
    ---------------------------------

  • タイトル通りですね。現障害名:解離性同一性障害の解説書。フランク・W・パトナムの方よりも、読みやすさは感じられます。誤解・偏見なども生まずに綺麗に纏められているかと。解離性障害や、その周りに付随してしまう障害名等の単語説明も有。

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著者プロフィール

1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『60代から心と体がラクになる生き方』(朝日新書)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス新書)、『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)など著書多数。

「2023年 『病気の壁』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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