- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061494367
作品紹介・あらすじ
古事記では死んで黄泉に行くイザナミが日本書紀では死なない-両者を別の神話として読む画期的論考。
感想・レビュー・書評
-
『古事記の達成―その論理と方法』(1983年、東京大学出版会)以来、『古事記』と『日本書紀』を一体のものとしてとらえる「記紀神話」という枠組みを批判してきた著者が、あらためて『古事記』と『日本書紀』のちがいを説くとともに、「記紀神話」解釈の歴史についても論じた本です。
著者の他の著作を読んだことのあるひとにとっては、『古事記』と『日本書紀』のちがいにかんする著者の議論はすでになじみ深いものです。本書ではそれに加えて、9世紀における講書を通じた「日本紀」の形成と、本居宣長による記紀神話解釈、さらに近代以降の「日本神話」というイデオロギー装置の形成から、戦後の研究に「記紀神話」という枠組みがのこりつづけた経緯について論じられています。
全体を通じておもしろく読めたのですが、新書の分量のなかに多くの話題を詰め込みすぎなのではないかという印象を受けます。著者の年来の主張である『古事記』と『日本書紀』のちがいが説明され、それを踏まえて「記紀神話」という枠組みの形成史を解き明かすというのが、おそらく本書のもくろみなのでしょうが、「日本神話」の入門として本書を手にとる読者が多いのではないかということを考えると、どちらか一方にテーマを絞って、よりていねいに解説をおこなったほうがよかったのではないかという気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古典文学に興味があり、自分なりに読んだりしているが、上代の文学には、どう興味を持っていいかわからないところがある。
ただ、この本の「はじめに」に、「とにかく関心の持てるところを見つけ出し、そこから読みはじめてもらえれば、本書の意図は受け止められる」という言葉に励まされて、読んでみる気持ちになった。
本書は、古事記と日本書紀を、古代天皇神話(人間の起源ではなく、天皇の起源を明らかにする神話)と規定する。
そして、両書を独立した別個の本として読もうとする。
思い返してみれば、いつのころからか、日本書紀を二流の古事記のように見てきた。
日本書紀は中国の史書のスタイルに無理やりあてはめて書かれたもので、独自性が薄く、古事記によって補って読まなければ、と。
ところが、こういう見方が、神野志さんによれば、「日本神話」(日本という国の起源を語る物語)の思想なのだという。
イザナギが死ぬ古事記と、死なない日本書紀。
アマテラスが皇孫を天下らせる古事記と、タカミムスヒが下らせる日本書紀。
こうした違いは、両者の世界観の違いに結びついているそうだ。
そうした異なる世界観を持つ二つの書物を、一体的に読む試みは、平安時代からあるのだとか。
この本で初めて知ったことの中で、このことがとても印象的だった。江戸や近代に入ってからのことではないのだ!
神話はナショナリズムと結びつきやすい。
神野志さんは、神話を解釈することが、ナショナリズムの文脈に回収されてしまうことにも、意識的だ。
これから、日本書紀や古事記がどのように読まれていくのだろうか。 -
古事記や日本書紀(記紀)の物語を解説するのではなく、記紀が歴史的な背景のもとに解釈が変遷させてきたということを、本居宣長から始まり、中世古代と遡って、最後に近現代までを語るものです。
簡単に言ってしまえば、ある意味で都合よく意味が解釈されてきたのはどこの時代も同じようです。古代においては、自家の役割の正当性を説き、中世では神仏習合の中で記紀神話は解釈されました。近代においては、天皇の権威づけとして利用されたことは周知のとおりです。
記紀の内容について知りたい人が読むべきものではないと思います。もちろん内容もないではないのですが、それが本筋ではないと思うので。 -
うる覚えな古事記と日本書紀、少しは補完できたかな。
この2つの違い?
解説等のおもしろい所があった。 -
来年は古事記編纂1300年の年だそうです。今、本居宣長の古事記伝を、ノートをとりながら丹念に読んでいます。この本は宣長の言うところをチチンと理解するのに絶好の教科書だと思います。
-
[ 内容 ]
古事記では死んで黄泉に行くイザナミが日本書紀では死なない―両者を別の神話として読む画期的論考。
[ 目次 ]
第1章 本居宣長『古事記伝』をめぐって
第2章 中世の『日本書紀』
第3章 古代天皇神話
第4章 『古事記』の神話的物語―ムスヒのコスモロジー
第5章 『日本書紀』の神話的物語―陰陽のコスモロジー
第6章 多元的な古代天皇神話
第7章 神話の一元化
第8章 近代国家における『古事記』『日本書紀』
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
古事記と日本書紀が各時代でどう扱われてきたのか。
本文の内容についての解説にも多くのページを割いている。
ところどころ面白い。古事記と日本書紀はセットで読まないとダメだね。片方だけじゃ気づかないことも多々あるってことだ。 -
イザナギなイザナミの国づくりや、天の岩戸の話などの日本の神話。古事記と日本書紀の両方に現れるが、一つの神話ではなく、それぞれ似て非なる神話と捉えるべきというのが、本書の主旨。ただし、そんな難しい記紀研究論文なテーマは理解できなかった。それでも、単に古事記と日本書紀の神話要素の解説本として読んでみても、充分に勉強になった。
-
ともに天皇神話。古事記はムスヒ、日本書紀は中国的な陰陽のコスモロジーと、各々違うんだそうだ。以上、覚書。
-
購入済み
内容(「BOOK」データベースより)
古事記では死んで黄泉に行くイザナミが日本書紀では死なない―両者を別の神話として読む画期的論考。
著者プロフィール
神野志隆光の作品






この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。





