- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061494596
作品紹介・あらすじ
欧米語に比べて日本語は本当にあいまいか。「ムカつく」「キレる」に潜む若者言葉の落とし穴とは。画期的視点で語る日本語論。
感想・レビュー・書評
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日本語から見た日本人、日本文化論。「暗黙の了解」、「他人への配慮」の前提が組み込まれた日本語は、昨今悪い意味での「曖昧さ」を呈し、その「曖昧さ」に甘やかされながら、「思考停止」状態に陥ろうとする日本人に警鐘を鳴らす、といったことが分かりやすく明快に論じられる。その無意味な「記号操作」の例が冒頭から出てくるが、笑える。でもこれだけ根付いてしまったこの「悪徳」は、もう改められることはないだろうな、という諦めを感じた。「詞−辞」の話が分かりやすい。(07/06/18)
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日本語は難しい。日本語はあいまいである。日本語を否定的
に捕らえる時によく言われることだ。確かにそういう面も
ある。漢字と仮名の混ざった表記、物事をハッキリと言わ
ないことが美徳だとでも言わんばかりのあいまい表現、文章
の最後まで聞かないと否定か肯定かわからない、情的に
過ぎて理論を語るにはあまりにも適していない等々。だが、
我々は日本語の中に産まれ日本語を話し日本語で考えるしか
ない日本人なのだ。であるならば、日本語の良い所悪い所を
しっかりと把握し、よりよい表記・表現を手に入れるべく
努力するしかないのである。そのためのヒントがこの本には
書かれているような気がする。「記号操作」には長けるが
「記号化」は苦手な日本人というのは卓見であろう。簡単に
わかったつもりで使ってしまっている漢語には注意したい
ものだ。 -
あいまいさを排除せず、相互の慮りを期待する日本語の特徴とその問題について論じた本です。
日本語は、藤原定家の歌に見られるような、重層的なコノテーションを生かした高度な言語的境地を開く可能性を持っています。その一方で、言葉にしなくても分かってもらえるという「甘え」を許すという問題点もあります。著者は、このような日本語の特徴を、単に日本語の運用上の問題と考えるのではなく、日本語の構造そのものから生じる問題だと主張し、時枝誠記が論じた「詞-辞」構造や、柳父章の「カセット効果」などの議論を紹介しながら、そうした日本語の構造的特徴について考察を加えていきます。
「百年一日のごとく「日本語は膠着語であり、云々」とやって、その膠着語であることが私たち日本人の思考にどのような影響をもたらしてきたかを考えもしない講壇言語学」への批判は勇ましいですが、文化的・社会的要因に根ざすものと、日本語の構造そのものに由来する問題の区別が今ひとつ分かりにくく、けっきょくのところ著者の印象にすぎないのではないかと感じてしまいました。 -
私はそんなに日本語があいまいだとは思っていない。日本語以外の言葉を日本語に、日本語を日本語以外の言葉に、どちらか片方に無理に揃えようとするから日本語があいまいな表現に近くなってしまうだけであって、日本語があいまいな言語というわけではないと考える。作文やレポート、自己PRカードなるものなどを学校の授業で書かされたときに私はいつも疑問に思っていた。『~だと思う』と書くと『もっと自身を持って書きなさい』とかそういう言葉が書き加えられることが多かった。しかし、私はそう思ったか『~だと思う』と素直に書いただけなのに何故いけないのだろう、といつも思っていた。この本を読んで、『~だと思う』でも問題はなかったんじゃないだろうかと今更ながら思った。
著者プロフィール
加賀野井秀一の作品





