日本海海戦の真実 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061494619

作品紹介・あらすじ

東郷平八郎は奇跡的勝利の真の立役者だったか。海軍極秘資料に基づき、その意外な真相に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎の『坂の上の雲』によってひろく知られている日本海海戦を検討しなおし、あらためてその真相を明らかにする試みがなされている本です。

    本書が見なおしの対象としているのは、バルチック艦隊の通過コースの予測をめぐる、日本海軍の実態です。東郷平八郎は、バルチック艦隊が対馬海峡を通るコースをえらぶことをはじめから確信していたとされていましたが、本書ではそれを否定する「密封命令」が存在していたことが指摘されています。

    もうひとつの検討対象は、T字戦法の考案者です。これも、秋山真之が考案したという説がひろく流布しており、また日本水軍の古来からの伝統的な戦法だったという説もありますが、著者は山家他人という軍人がT字戦法の考案者であったとしています。

    さらに日露戦争後についても、主に小笠原長生による統合の神格化と、時代遅れの大艦巨砲主義の発想が、その後の日本の運命に大きな影を落とすことになったのではないかという見かたが示されています。

  • 「日本海海戦の真実」野村実著、講談社現代新書、1999.07.20
    230p ¥693 C0231 (2022.02.19読了)(2012.02.03購入)(1999.09.10/3刷)
    「海の史劇」吉村昭著、を読んだついでにこの本も読んでみました。
    日本海海戦についての真実に迫りたい人には参考になるかもしれませんが、この本も著者の憶測を交えながらの記述なので、納得できるかどうかは、読者次第でしょう。

    ・東郷平八郎は、バルチック艦隊が対馬海峡を通ると確信していた。
    「日本の連合艦隊司令部は、日本海海戦の直前に、バルチック艦隊は対馬海峡ではなく津軽海峡を通過すべく、日本の太平洋東岸沖を北に向かっているのではないかと疑い、待機地点を対馬海峡から津軽海峡に変更しようとする意見が浮上し、命令(密封命令)も発出されようとしていた。」(221頁)
    ・丁字戦法の創案者は秋山真之だと伝えられている。
    「山屋他人という軍人こそ、丁字戦法の考案者だった」(175頁)

    【目次】
    第一章 歴史の闇に埋もれていた極秘資料
    第二章 幸運な男・東郷平八郎と連合艦隊
    第三章 バルチック艦隊、対馬へ
    第四章 「三笠」での軍議―五月二四~二五日
    第五章 決戦! 日本海海戦
    第六章 「丁字戦法」に潜む二つの謎―「連合艦隊戦策」に秘められた真実
    第七章 その後の日本海軍―神格化された東郷と巨艦主義の敗北
    あとがき
    日露戦争・日本海海戦関連年表

    ☆今後読みたい本
    「ポーツマスの旗」吉村昭著、新潮文庫、1983.05.25
    「検証 日露戦争」読売新聞取材班、中公文庫、2010.09.25
    ☆関連図書(既読)
    「日清・日露戦争」原田敬一著、岩波新書、2007.02.20
    「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子著、朝日出版社、2009.07.30
    「ニコライ遭難」吉村昭著、新潮文庫、1996.11.01
    「海の史劇」吉村昭著、新潮文庫、1981.05.25
    「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    (アマゾンより)
    海戦史上空前の勝利の通説をくつがえす誰も書けなかった「丁字戦法」の真相!
    東郷平八郎は奇跡的勝利の真の立役者だったか。海軍極秘資料に基づき、その意外な真相に迫る。
    日本海海戦の勝因――世界中が驚いた連合艦隊の完勝には、ふたつの重要なポイントがあった。つまり、杳として行方がつかめないバルチック艦隊の通過コースを的確に予測し迎撃できたこと、そして「誰もが予期しなかった」緒戦における敵前大回頭である。日本海海戦の勝因については、ほかにもさまざまな要素がからんでいるのだが、このふたつのポイントで成功したことが「アドミラル・トウゴウ」の名を世界に知らしめ、「日本海軍が生んだ天才」秋山真之の知謀を称揚することになったと言ってよいだろう。しかし、日本海海戦の舞台裏については、……まったく別の真実が存在する。――本書より

  • 1999年刊行。著者は元防衛大学校教授、愛知工業大学客員教授。◆日露戦争の帰趨を決めたに等しい日本海海戦。①その際、効果を発揮したT字戦法。そして、②何故対馬海峡で待ち続けられたのか。これらに関して、埋もれていた史料からその実相が明らかになった。◆①は一般に、海戦中、東郷平八郎が即座に思い付いたものであり、またT字戦法自体は秋山真之参謀が考案したとされてきた。が、まず、前者は、戦前に東郷が定め、かつ十分な準備・訓練をしてきた戦術案であった。しかも、後者は秋山ではなく、山屋他人(後の第一艦隊司令長官)。
    また、②についても、一般に秋山真之首席参謀の発案とされてきたが、これも第二戦隊司令官島村速雄と第二艦隊参謀長藤井較一、特に後者の猛烈な反対と、東郷と島村との信頼関係の強さにあったとのこと。◇これらの分析が、第二次大戦終戦時に焼却処分された資料(「極秘明治三十七八年海戦史」「五月二四日配布にかかる密封命令」)が皇居に一部残存していたことに由来するということのよう。◇このような史実を歪曲し、日本海海戦の神格化についても最終章で触れるのも良。

  • 新書文庫

  • 長く一般の目に触れなかった「極秘明治三十七八年開戦史」の研究結果から、日露戦争の日本海海戦の定説(=概ね坂の上の雲に書かれている内容)を覆している。
    1999年発行なので、最近発行の本はこの本の説を採用しているかもしれない。
    要旨は下記のとおりである。
    1. 一般には東郷平八郎はバルチック艦隊が対馬沖を通過すると確信を持っていたと言われているが、実際は日本海海戦の数日前まで北進すべきか迷っていた。
    2. 一般に丁字戦法の採用は東郷平八郎が決戦の直前に直感的に決定したとされているが、実際は日露戦争前から山屋他人が考案したものを東郷平八郎が推敲していたた。

  •  いわゆる通説ってやつを知らないと、少し難しいですね。でも、海戦の様子は結構わかりやすかったです。

  • 司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読んだあとに目を通すと、いろいろと気づきが得られると思います。

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著者プロフィール

立命館大学衣笠総合研究機構 専門研究員

「2021年 『モビリティと地方創生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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