- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061494701
作品紹介・あらすじ
ヨーロッパ、ビザンツ、イスラムという全く異なる三つの文化が共存し、繁栄を誇った神秘の地中海王国。その実像に迫り、中世史を読み直す。
感想・レビュー・書評
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pp.146-7
ロゲリウス二世二使えた地理学書イドリーシーは、『世界各対を深く知ることを望む者の慰みの書』の中でこの町(パレルモ)を次のように描写している。数ある町の中で、パレルモは最も大きく最も美しい町であり、滞在としてもすばらしい町であった。この町には、尽きることのない栄光が存在し、有り余る優雅さがあった。そして、歴代の王が住まう町であった。この町は会がいい沿いにあり、その西側には高くて大きな山がある。海寄りには、日当たりのよい居住区がある。この町は美しい建物で満ちあふれ、旅人達は、これらの建物や洗練された工芸品の評判にひかれて、町を歩き出すのだった。
pp.168-172
(「十二世紀ルネサンス」とは)千九百二十七年にチャールズ・ハスキンズという中世史家が『十二世紀ルネサンス』という書物を著して以後、多くの人々の間で知られるようになった言葉である。この書物は、十二世紀の西ヨーロッパがそれまで考えられていたような「暗黒時代」ではなく、ルネサンスと同じように文化活動が盛んな時代であったことを明らかにし、西欧中世に対する人々の見方を大きく転換させた。
……
ところで、このハスキンズの十二世紀ルネサンス論において重要な位置を占めるのは、スペインとシチリア、北イタリアにおける翻訳活動である。
……
このような視点から、シチリア王国は西欧が東方文化を受け入れる場所とみなされてきた。そして、王国における翻訳活動や王国を訪れた西欧の知識人たちがとりわけ注目を浴びてきた。
……
シチリア王国が西欧の東方文化を受け入れる場所であったことに間違いはない。……シチリア王国がヨーロッパに対して果たした役割は、いくら強調しても強調しすぎることはないであろう。
……
しかし、私たちは、そのようなヨーロッパにとっての意味だけにこだわる必要もない。時間枠と空間枠を少し広げてみれば、この現象が複数の文化圏の間で生じる文化移転の一部であることが用意に理解されるはずである。
……
さらに広く時間枠と空間枠を広げてみるならば、この王国は、人類の経験としての文化交流と異文化接触に関して、豊富な実例を提供している。異文化接触や交流が恒常化しつつある現代世界にあってみれば、シチリア王国で生じた現象は、私たち自身の世界を理解するための重要な示唆を与えてくれるはずである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
NDC 237
ヨーロッパ、ビザンツ、イスラムという全く異なる三つの文化が共存し、繁栄を誇った神秘の地中海王国。その実像に迫り、中世史を読み直す。
「古来シチリア島と南イタリアは、地中海の中心部に位置している関係から、民俗・宗教・文化の十字路となってきました。宗教的にもキリスト教・ギリシア正教・イスラームが同時に共存し、それぞれの文化が融合するという世界史上でも稀有な場所なのです。ー現代のぼくたちが積極的に考えてゆくべき「異文化交流」を先取りしてきた「両シチリア王国」の歴史について、ぜひ読んでみてください。」
(『世界史読書案内』津野田興一著 より紹介)
目次
プロローグ もう一つの中世ヨーロッパ
1章 地中海の万華鏡シチリア―錯綜する歴史
2章 ノルマン人の到来―地中海とノルマン人
3章 王国への道―シチリア伯領からシチリア王国へ
4章 地中海帝国の夢―ロゲリウス二世の新王国
5章 強大な官僚国家へ―ウィレルムス一世悪王と宰相マイオ
6章 動乱から安寧へ―ウィレルムス二世善王の時代
7章 南国の楽園―めずらしい果物の島、美しい建物の町
8章 異文化接触の果実―イスラム、ギリシャ、ラテン文化の出会い
エピローグ 混迷の時代へ -
シチリア王国を扱った本はあまりないので、新鮮な気持ちで読めた。中世ヨーロッパ史で出てくるロベールギスカールが出てくるあたりが1番盛り上がった。
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塩野七生さんの「フェルディナンド2世」を読んでから中世シチリア史に興味がありますが、こちらは彼の前の時代について、さらっと書いてあり,楽しめました。関連本読みたいです。
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[評価]
★★★★★ 星5つ
[感想]
シチリアといえば地中海に浮かぶ島で古代ローマの時代にローマとカルタゴがポエニ戦争で戦った土地ぐらいの知識でそれ以降はローマの穀物供給地だったことぐらいしか知らなかった。
しかし、この本にかかれている内容を読むとヨーロッパ、ビザンツ、イスラムという全く異なる文化が共存し、繁栄していたことには驚いた。また、この三者が牽制し合うことで中世に置いては強大な中央集権国家が誕生したということも非常に面白かった。そしてヨーロッパにとってはビザンツ、アラブに対する窓口になっていたというのも意外な事実だったよ。 -
THa
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驚いたことがふたつ。
ひとつは、この国を造ったのがノルマン人であること。つい最近本で読んだ、イギリス王室をつくった、あのノルマン人です。ただし、1066年のヘイスティングズの戦いで一気に決めたイングランド征服とは全く違うやり方ですが。
もうひとつは、高校世界史ではほんの軽くしか紹介されない、この国の存在です。ローマ帝国のあと、高校世界史はヨーロッパ内陸部中心になっていきます。
>しかし、地中海が歴史の表舞台から姿を消したわけではない。それどころかヨーロッパ内陸部よりはるかに豊かで多彩な文化活動、活発な商業活動行われ、政治的枠組みの巨大な変動が生じていたのである。
>この王国の最大の特徴は、ラテン・カトリック(西ヨーロッパ)、ギリシャ・東方正教会(ビザンツ)、アラブ・イスラムという三つの政治文化圏の接点に成立し、それぞれの文化的要素を同時に内包していたという点である。
首都パレルモにある王宮は「12世紀ルネサンス」とよばれる、中世ヨーロッパの大文化活動の中心であったとみなされているそうです。 -
ざっくりいうと、趣旨はいいけど企画倒れ、という本だと思います。新書の歴史書によくあるやつ。ラテン、ビザンツ、イスラムの3大文化圏の交点としてのノルマン・シチリア王国を描きたいという意図は前書きから大いに伝わったし、その時点では期待もしたけど、本編がその期待にまったく追いついてこないんだよね。
新書の歴史書、という共通点から思い起こすに、このフォーマットでダメな本というのは、多くは「初めに企画があって、それに基づいて依頼された識者(歴史学者)が書いてる」んじゃないのかな。このパターンがよくないんではないかと、最近はうっすら疑ってる。
やっぱり本というものは、依頼なんかなくても、出版される保証なんかなくても書きたい、書かざるを得ないという、強いモチベーションから生み出された原稿が、出版社に持ち込まれるという順序で作られた場合の方が、良質なものが生まれやすいのではないかと。そんなことを思っています。
そして、そういう質の高さを求めたいいち読者としては、そろそろこの手の「趣旨はいいけど企画倒れ」な「新書の歴史書」、の一群に無難な☆3つ(平均的評価)を付けるってことを、やめなきゃいけないんじゃあるまいかと。
そんなことを考え始めています。
いや、もうほんとやめようよ、こういう雑な本がamazonで平均☆4つ超えるみたいな風潮。お読みになったあなた、一体この本から何を得ました?
なんか、既得権益にも似たイヤーなものを感じるんです。この本単体ではなくて、新書の歴史書の多くに共通する質の低さ、そしてその裏にある「依頼に応えて書きました」感、みたいなものから。
そういうのに加担するの、読者としてもやめましょうよ、そろそろ。少なくとも僕はもう、この手の本に☆3つは付けないよ?(笑) -
プロローグ もう一つの中世ヨーロッパ
1章 地中海の万華鏡シチリア
2章 ノルマン人の到来
3章 王国への道
4章 地中海帝国の夢
5章 強大な官僚国家へ
6章 動乱から安寧へ
7章 南国の楽園
8章 異文化接触の果実
エピローグ 混迷の時代へ -
読了。
中世シチリア王国 / 高山博
世界史の知識不足人としてはこの中世シチリア王国と両シチリア王国とは違うん?と思ってたわけです。
端的にいえば時代が違ったわけですが...
両シチリアは19世紀でした。
こちらは11世紀頃です。
フランス ノルマンディ地方の田舎ノルマン人騎士兄弟が傭兵として南イタリアに渡り、シチリア(南イタリア含む)に王国を誕生させる物語。
成り上がり物語ですね。
ロマンあふれる展開ですね。
塩野女史のローマ亡き後の地中海世界で触れてた部分なのでそのうち読もうと買って積んでありました。
塩野女史もこちらの作者もルネッサンスはシチリア島から始まった(きっかけ)と言ってましたので、ルネッサンス=フィレンツェというイメージは間違ってはいないがそれだけではなかったといった感じですかね。
アラブ人、ギリシア人、ラテン系が住み文化が交わる場所だから始まりのきっかけのルネッサンスのようですね。
たいへん面白かったです。
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