教養としての〈まんが・アニメ〉 講談社現代新書 (講談社現代新書 1553)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495531

作品紹介・あらすじ

主人公の内面をどう描くか。メディアミックスの先駆者はだれか。戦後の古典、名作をたどり、作家たちの手法を読み解く決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後のマンガとアニメを、10人の作者+Iアニメ会社(ガイナックス)にスポットライトを当てながら、その意義を説きつつ概観するもの。

    特に興味深かったのは、梶原一騎(あしたのジョー)、富野由悠季(ガンダム)、石ノ森章太郎(仮面ライダー)あたりの解説。

  • ふむ

  • 2大ジャンルであるまんがとアニメ、その今日の隆盛は、先人たちの試行錯誤や挑戦そして失敗の上に築かれたもので、本書ではそのキーパーソンや作品を通じて、発展の系譜を追っている。当時の読者や視聴者を驚かせた斬新な表現や革新的な試みの数々は、今や当たり前すぎて気になることさえ無く、その意味で玉石混交の黎明期が羨ましく感じた。ガイナックスの章での、プロより質の高い作品を造るアマチュア、という一節は、成熟は反面停滞でもあることを示唆している。執筆時期が2001年にも関わらず、良くも悪くも内容が古くないのは、まんがとアニメにおける、直近20年と戦後からの20年の濃度の差だろう。

  • 漫画やアニメを網羅的になのかと思ったら、意外にもそれぞれ4人ずつに焦点を絞って、というものだった。ということは、ガイドとしての意味合いはあまりなく、まあタイトルから考えたらその通りなんだけど、教養としての論文という体裁。それぞれ最初の一章ずつを読んでみたけど、もう少し肩の力を抜いた内容を求めていた。積読へ。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2306/K

  • 2001年刊。漫画・アニメ論を漫画誌編集者らが論じる。対象は①手塚、②萩尾望都、③吾妻ひでお、④岡崎京子、⑤梶原一騎(漫画)の一方、①宮崎駿と高畑勲、②出崎統、③富野喜幸、④庵野らガイナックス(アニメ)。補論・石ノ森章太郎。手塚的記号的表現はよく論じられる(ただ、漫画の記号的表現は手塚より前から)が、本書は漫画表現に含まれる主題、「成熟」について検討。手塚は成長・成熟しないロボット(アトム)の悲哀、梶原は成長を拒絶する矢吹ジョーを、成熟=女性の身体性の気づきとする萩尾につき、作品解説とともに論を展開。
    岡崎は24年組論の発展と、吾妻は彼の先駆的描述、つまり記号的表現に欲情しつつも、その表現にすら直接的接触のできない男性を論じる。他方アニメ。①富野に関しては、大人になることを模索したザンボットに対して、ガンダム以降は大人になることすら拒絶し、神(超人的なニュータイプはその例)になるしかないところまで行き着く。特にイデオン。②もののけ姫以降、物語を紡がない宮崎(オープンクエスチョン表現か、話の中で問題解決しない等)に対して、アニメ(映画)を自己の主張を説明・説得する媒体と捉え続ける高畑と、作劇の違いが鮮明化
    ジョブナイル(成長物語)を描き続ける出崎。破滅するしかない夷形を描く石ノ森を解説。さらには、アマとプロとの境界を融解させたガイナックスの説明が興味深い。ガイナックスは、仲間うちに向けられた表現を良しとしているらしいが、個人的には、エヴァ等で描写されるあからさまな既視感(オマージュ)を楽しめない自分がいる。別の作品なら別の表現があるでしょう、言いたくなる。リメイクと目される「ウルトラマン」最終回と「帰ってきたウルトラマン」最終回とが違う世界観で見ることが出来たように…。

  • 本書のタイトルになっている「教養」とは、現代日本文化の一部であるマンガやアニメについての常識程度の知識といったものではなく、サブカルチャーを「語り、伝えていくというその「立場」そのもの」を問題にする視座を意味しています。

    全体は二部構成になっています。大塚が執筆する「第1部・まんが論」では、手塚治虫、梶原一騎、萩尾望都、吾妻ひでお、岡崎京子の5人が取り上げられています。手塚のマンガが、傷つくこともなく成熟することもない「記号的身体」を問いなおすというモティーフを秘めていたことが論じられ、「記号的身体」と「生身の身体」との相克の歴史として、戦後のマンガ史を解釈するという議論になっています。

    ササキバラが執筆する「第2部・アニメ編」では、宮崎駿と高畑勲、出崎統、富野由悠季、ガイナックス、石ノ森章太郎の五組が取り上げられています。戦後マンガ史についての独自の解釈に基づく第1部に比べると、それぞれのクリエイターたちの仕事の意義の客観的な解説になっているように思います。

    興味深く読みましたが、「教養としての〈まんが・アニメ〉」というタイトルにも関わらず、戦後のマンガやアニメの概要を知るという目的にはあまりそぐわない本だという気がします。大塚はべつのところで、サブカルチャーに「正史」という概念が必要なのかという疑問を提出していたことがあったように記憶していますが、批判されるべき正史すら存在しないという現状が、果たしてサブカルチャー論において望ましい事態なのだろうかという疑問を覚えます。

  • マンガ・アニメの歴史の中で、その転換期を作ったクリエイターを中心に据えて糞真面目に深く分析を加えた本。ゴメンというしかないのだが、期待していなかった分だけ感銘を受けてしまった。なるほどそういうことか、と肯首する主張が多い。偶然だけど、読んだこと観たことのある作品がほとんどで、その点も良かったね。

  •  岡崎京子を読もう、と思いました。

     

  • 漫画
    (1)成熟の困難さをめぐる「アトムの命題」―記号的な身体に付与されてしまった“死”と“現実”。
    成熟出来ないキャラクタライズあるいは“身体の発見”による、達成されないビルドゥングスロマン。
    (2)女性性の表現をめぐる「フロルの選択」―身体(性)の発見から内面(自意識)の発見へと辿り着いた少女漫画における“戸惑い”。
    性をどのように受け入れるかという模索。

    アニメ
    (1)“日常”の面白さの発掘。表現の進化
    (2)思春期向けの作品づくり。「大人社会」への批判的な眼差し
    (3)プロアマ境界線の崩壊
    (4)メディアミックス

    前半の大塚さんの文が面白かった。
    アニメについては、特に目新しいことは書かれていなかった。

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著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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