希望の心理学: 時間的展望をどうもつか (講談社現代新書 1577)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495777

作品紹介・あらすじ

ひとが生きるうえで最も必要なのは希望をもつことである。現在・過去・未来の統合=「時間的ふくらみ」の重要性を解説し、絶望を乗り越え、未来を構想するための方法論を説く。

感想・レビュー・書評

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  • 一か所だけ抜き書き。

    ・今、夫人が主人に向かって「新種のスープをつくってみたの。どんなものかしら」とそのスープを差し出しながらきいたとしよう。
    もしそのスープがおいしいなら問題なく夫は「うまい」と答えて、夫人は喜ぶことになる。
    またもしも、あんまり、おいしくなく、それを遠慮せずに正直に答えるなら、これもまた問題はない。
    しかし、もし、まずいスープなのにそれを正直に言って女房をがっかりさせたくないとしたら、実はこのような反応が統計的に最も多いのだが、ここに問題が生じてくる。
    すなわち「物レベル」では、それはこの場合スープのことであるが、夫の答えはノーであるが、「関係レベル」ではイエスというわけだ。しかし我々は一つの言語しかもっていない。
    さて夫はどう答えるのだろうか。イエスそしてノーとは答えられない。彼はたぶん「うん、おもしろい味だ」くらいに応えて何とかこの苦境を切り抜けるだろう。その答えで、きっと夫人は夫の言いたい本当の気持ちをわかってくれるだろうという願いをこめて。
    …そして彼ら夫婦は今や16年が経ち、夫はそのスープが嫌いだというのにこの密かな希望をたくすやり方を改めることになる。妻の反応がどうなったかは読者の想像におまかせしたい。

  • 「現在の中に過去と未来が統合される」という時間展望なる概念がある事を知り時間論の観点から何かヒントになるものがあるのではないかという期待から購入。第1章は定義的な話でここは引き込まれる。特にP25の時間展望を理論化したレヴィンの図は概念を見事に図示しておりちょっと感動する。
    2章以降はフランクルの話から、東西文化論や発達心理学等々いろいろ盛り込み過ぎて焦点がボケてしまった印象(但し、4-1の「時間と自己のねじれ現象」は興味深いものがある)。一応、心理学の本なので実証的な考察もあるのだが、後半に行くに従いどんどん話が広がって、現在主義から他者論に展開してみたり、それを過去から未来への世代論にまで広げ、「不在の他者」と言い出してみたり・・・。こうやって宿命論的なものまで持ち出されると宗教的となり、何か大きなものへの一体化へという懸念も生じる。この事により安心感を得る事が希望ではないだろう。
    一応著者もその点には留意はしているようにも見受けるが、過去・現在・未来の話から個人・社会への話へと展開していく事の難しさを感じる。やはりこの両者は区別して考えるべきなのか?それとも上手い具合に統合的に考察可能なのかが哲学・思想的課題であるように思える。

  •  自分が自分であるというアイデンティティは、過去から未来へと続く時間の中で現在を構築する作業、つまり「時間的展望」という視野が必要である、ということを解説した本。どのような時間的展望が望ましいのか、といったことが書かれている。
     「時間的展望」という言葉は「心理学の世界では、誰もが知っているスタンダードな専門用語である」(p.5)とあるが、知らなかった。が、そんなに難しい話ではなかった。要するにフランクルの話かなと思って読んでいたら、フランクルが出てきた。「将来展望を書き出す」とか「ライン・テスト」とかは自分でもやってみたい実験だなと思った。「過去を引き受けるとは、どうしようもないことは運命として認めてしまうこと」(p.140)であり、「諦め(giving it up)と明らめ(making it clear)を区別し」(p.94)、「できることをすることによって、できないことを克服し、目標に向かう」(p.141)ことが重要である、というのが印象的だった。また、原爆を体験して絶望した女性のエピソードの話で、「一歩前にいて自分と同様に厳しい状況でも頑張っているひととの出会いは、自分のあり方の反省を促し、見通しを与える」(p.158)というのも納得できた。「ロール・モデル」という言葉もあるが、こうやって人に希望を与えることができるというのも人の持つすごい力だと思った。
     「今の時代ほど、過去が問われ、未来が問われ、現在が問われている時代はないような気がする。災害や事故、犯罪、戦争など、さまざまなニュースが次々に飛び込んでくる」(p.3)という書き出しになっているが、これは2001年時点での書き出しで、東日本大震災と原発事故を経験した日本を先取りするような感じになっているのも、この本の有効性を示すものだと思った。(14/01/24)

  • [ 内容 ]
    ひとが生きるうえで最も必要なのは希望をもつことである。
    現在・過去・未来の統合=「時間的ふくらみ」の重要性を解説し、絶望を乗り越え、未来を構想するための方法論を説く。

    [ 目次 ]
    第1章 時間的展望という視点(時間的展望とは何か―現在が過去と未来を生み出す;遠い将来を見通す―将来展望の発達としくみ)
    第2章 未来に立ち向かう(確かな希望をもつ―閉塞状況における時間;不安と向き合う―少年非行の心理)
    第3章 現在を生きる(ポジティブな現在指向のすすめ―中年の危機を乗り越える;未来指向のバイアスを越える―文化による違い)
    第4章 人生を刻む(時間が速く過ぎるのはなぜか―時間と自我のねじれ現象;人生に刻みを入れる―世代と世代を結ぶ)
    第5章 過去を引き受ける(過去を通して未来を構想する―記憶と回想の役割;歴史をつくる―外傷体験からの回復)

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著者プロフィール

大阪教育大学教育学部 教授

「2022年 『アイデンティティ 時間と関係を生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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