傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495876

作品紹介・あらすじ

古代ギリシアの民主制の崩壊に始まり、中世を経て、ナポレオンの時代に至るまで、歴史の転換点で活躍したのは多くの傭兵たちだった。

感想・レビュー・書評

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  • 「ナショナリズムの成立の仕組みをそのナショナリズムとは無縁の傭兵たちの歴史を見ることで逆説的に探った」一冊。

  • ハプスブルク家12の物語と並行して読んでてあの戦争の裏でこんなことが!と舞台裏の一幕を覗いたようで中々楽しかった と思ったら参考文献に本書が

  • 傭兵の歴史について簡潔にまとめた本。

    スイスはユグノー戦争でフランスから時計職人が逃げてくる前までは、傭兵しか産業がなかったとか、へぇと思うことが多かった。

    近代軍の父がルイ14世と言うのも意外だった。

    傭兵の兵站とか徴収とか以外と判らない部分も明らかになっていて、非常に面白かった。

  • 古代ギリシャからナポレオンの時代に到るまでの傭兵の歴史の概説。基本的には封建制度の中で、ニッチ産業として発達した傭兵が近代には巨大な勢力となったけれども、国民国家の誕生によって意義を失っていく……ということが書かれている。ただ、傭兵という業種は滅びず、現代のイラク戦争にまで伝統は続いている。

    私が思うに、兵隊の活用が制限されると、制限外の活動を金で請け負う「傭兵」が栄えるのかな。現代のアメリカ軍が雇う傭兵的な警備会社や、フランスの外人部隊なんかは、そういうイレギュラーなことを遂行するのが主な目的になっている。士気と規律で雁字搦めになった軍隊とは別の「傭兵」という枠組みから目を逸らしてはいけないと思う。

    ヨーロッパの傭兵の歴史がこの一冊でだいたい分かるので、その点ではお得な一冊だとは思うものの、アジア(中国と日本)についての記述がないのはマイナス点。この辺りの研究が立ち後れているからかもしれないけれど。

  • 「え〜傭兵?マジ?」
    「傭兵が許されるのはフランス革命までだよね〜」
    「キャハハ、ハハ、キャフタ!」

    二千年史といいながら、メインは近世ヨーロッパ。
    悪名高き傭兵部隊、ランツクネヒトやスイス人傭兵の
    活躍を中心に、ヴァレンシュタインをはじめ戦場のプロデューサである
    傭兵隊長の生き様が描かれる。
    ナショナリズムの誕生を傭兵を道具に逆説的に説いた一冊。

    描き方がかっこよすぎて、むしろガリガリ読めなかった。
    「戦争」のスタイルを別の視点で知ることが出来た。
    兵站ってのは重要だなあ。太平洋戦争よろしく、ああいうことになって困るのは現地民ということか。

  • 学者が日本語で書いた文章は形式張っていたり賢く見せたいだったりで読みにくいことがあるが、本書は読みやすい文章でスラスラ読めた。
    著者の専門は中世から近世のようで、古代や現代の情報は薄い印象(というより中世〜近世がかなり厚い)。
    私は「傭兵と言えば三十年戦争」と思っていたのでその様子が詳しく記述され、そして思っていた以上に酷い有様で書いてあったので満足している。

    同時期に読んでいるフォン=クラウゼヴィッツの『戦争論』が軍人の立場から書かれたものなら、本書は戦争経験も徴兵経験も無い純粋な学者の側面から書かれたもので、その対比は面白かった。
    特に、クラウゼヴィッツが著書のところどころで絶賛しているフリードリッヒ大王を、したたかで冷酷(サイコパス的にも読める)な人物として書いているのは面白い。
    「傭兵=食い詰めの厄介者」のイメージだったが、イメージよりももっと酷く、平時には即座に野盗化するので定期的に戦争をしたり、十字軍で外へ吐き出したりしているのも歴史の裏側を見ているようで、新たな知見となった。第4回の十字軍全体が盗賊化したのを不思議に思っていたが納得である。

    非常にあっさりとしたあとがき(;平易な文章と合わせても自分を飾るためではなく、読者を考えて本書を執筆したのだろうなと思わせる、彼の講義を聴いてみたかったと思うような内容だった)で、傭兵についての資料の少なさや日本語翻訳がなされていない物が多いこともわかった。
    これは傭兵が一般的では無くなったが故に研究対象として遠い存在となってしまったためなのか、倫理観に許されない行為のオンパレードだから研究の対象に適さないのか。どっちなのだろうか。

  • 傭兵がどのようにして生まれ、変遷し、最終的に国民軍にとってかわられるようになったか。
    想像よりずっと傭兵が主役の時代が長くて、欧州史をダイジェストでざっと追えるくらいに駆け抜けた感があった。
    傭兵の立場から脱却して政権を樹立した日本と、一部諸侯に数えられる者はいたものの主役までには至れなかった欧州との、比較も見てみたい気になる

  • 傭兵という視点を通してのヨーロッパ史。
    こういう何か一つのテーマを通して歴史を語る書はいつも面白い。
    歴史はどの立場から見るかで印象がかなり違う。

  • 古代から近代、現代までの”傭兵”について、軽妙な語り口で解説している良書。

    金銭で雇われて、命を賭けて戦地に赴く。
    その動機はさまざまであり、また、時代とともに変遷していく。

    スイスがなぜ時計の一大立国になったのか、その背景に傭兵集団があったとは知らなかった。
    また、秘伝の砲兵技術をこっそり漏らしてしまった名もなき傭兵の話、同じ民族で戦う馬鹿らしさから戦争放棄する話とか、いろいろ興味深かった。

  • まとまりが悪く流れが見えないぶつ切りの歴史
    同じテーマの本があまりないからこれに行き着く感がある

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著者プロフィール

1948年生まれ。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。明治大学名誉教授。専攻はドイツ・オーストリア文化史。著書に『ハプスブルク家の人々』(新人物往来社)、『ハプスブルク家の光芒』(作品社)、『神聖ローマ帝国』(講談社現代新書)、『ハプスブルク帝国の情報メディア革命─近代郵便制度の誕生』(集英社新書)、『超説ハプスブルク家 貴賤百態大公戯』(H&I)、『ウィーン包囲 オスマン・トルコと神聖ローマ帝国の激闘』(河出書房新社)、訳書に『ドイツ傭兵の文化史』(新評論)などがある。

「2022年 『ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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