戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495999

作品紹介・あらすじ

日本はなぜ太平洋戦争に突入したのか?明治維新以降の「戦争の論理」を解明した画期的近代日本論。

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新から太平洋戦争まで、政治家や軍部、報道、あるいは世論が日本を取り巻く環境やそれに対する外交・安全保障をどう認識していたか。そして、そうした認識が戦争の開始にどう影響したかをつぶさに見ていく。
    客観的な事実として何があったかではなく、その事実をどう受け止め意義づけ、どのような主張や行為に結びついたのかという主観に焦点が当てられる。事実そのものでなく事実に対する認識が物事を動かすことは往々にしてあることで、そこに着目することは意義のあることだと思う。

  • プロイセン 1808までプロイセンは軍事費を出し惜しんだばかりにフランスに負けた 出し惜しみした10倍にあたる1億2000万フランもの賠償金払う それがフランスの軍備充実に使われた 1874 ドイツ帝国議会 モルトケの演説

    中立あるいは局外中立という概念は、戦争状態にある二国あるいは三国以上の間にあって、どちらの側にも与する利益がない場合、その国は局外中立を宣言して戦争にまきこまれないようにできることを指す
    義務 容認義務(海上封鎖したら容認)、回避義務(中立国は交戦国に援助してはならない、軍需品の売却してはならない、公債に保障を与えてはならない)、防止義務(交戦国が中立国の領域を軍事的に利用するのは、中立国は実力をもって防止しなくてはならない)

    中立を維持できるかどうかは当該国の軍事力の多寡というよりは、2つの陣営にとって当該国が中立でいたほうが都合がよいとの判断が、双方に共有されていたかにかかってくる

    日清戦争開戦時 軍艦28隻、水雷艇24隻 ひとつとして世界的な水準で主力艦でない
    日露戦争開戦時 152隻 1896年から海軍が戦艦6隻(富士、八島、敷島、初瀬、朝日、三笠)、装甲巡洋艦6隻(浅間、常磐、八雲、吾妻、出雲、磐手)を基幹とする建造計画に着手

    日清戦争 8個師団(近衛、第一―七師団)
    1898年 8-12師団(弘前、金沢、姫路、丸亀、小倉) 日露戦争開戦前後 13-18師団(高田、宇都宮、豊橋、京都、岡山、久留米)

    日露戦争 戦費 増税、増税以外は国債(内国債6,72億、外国債 8億円)

    日露戦争後 山県有朋 ロシアは早晩、復習戦争に打って出るとみていた、どうやって備えるか頭を悩ませていた。さらに山形は、それでも日露戦争のときにはたしかに存在した「国家の元気」というものは、こん後は続かなくなると悲観していた
    現役兵では到底足りずに、欠員を予後備の兵士たちを動員して埋めた。しかし、正直な所、当初は期待していなかった予後備兵のなかには、現役兵に勝るともい獲らない活躍をしたものが少なくなかった。これは日露戦争までの日本には未だ「維新中興の偉業によりて養成されたる子かの元気」があったからである。と山形は総括していた
    ロシアの復讐戦に備えなければならない大変な時代を、国家の元気をもはや期待することができない状況で迎えなければならないという見通しがあった。

    第一次世界大戦
     戦後、パリ講和条約 日本が提出した要求3つ 期待太平洋の旧ドイツ領南洋諸島処分問題、山東省利権継承問題、人種差別撤廃問題
    人種差別撤廃問題 豪、米 日本移民の排斥
    1907 米国連邦移民法 米国本土以外を経由した日本人移民を排斥する条項が挿入
    1913/8 カルフォルニア州で外国人土地法
    日本が、外の力で、相手国の国内問題を牽制しようとした

    米国が大戦によって学んだ最大の教訓の一つは、速戦即決の必要。積極的攻勢に出なければ、戦争は長びく。その結果どちらが勝利しても共倒れになる

    石原 23年の国防方針における戦争の想定にしたがって、中国をめぐる米国との対立から戦争になることを予期していますが、その米国との戦いにおいては、中国全体を根拠地として戦争を続ければ、戦争によって戦争を養えると、こう論じています。一厘もお金を出せないというのは、軍閥が支配に苦しむ中国へ、あたかも解放軍として日本軍がのりこんでいけばよいとの構想でした

    中国の資源で米国と戦争を続けるという発想は、対日経済封鎖をおこなえば日本側がとるであろうと米国海軍が想定していたシナリオとまさに一致していた

    リットン報告書 膨大な報告書で調査団が判断を下しているのは3ヶ所
    1 9/18の関東軍の行動は自衛行動でないが、関東将校が自衛と考えて行動した可能性については否定しない
    2 満州の独立は、中国の主権の尊重と行政的統一を図る9カ国条約に抵触するとの判断
    3 前段で日本の経済的権益養護の必要性について述べ、後段で、満州を中国の国民性と切り離すことはできないとの認識を示した部分

    報告書は、張学良政権の満州復帰も、満州国の存続もともに認めないものでした。連盟理事会が中国と日本を招請し、東北についての行政組織を考えるための諮問委員会を組織する。そして国民政府から広範な自治権を賦与された政権を作るため、日中双方と日中おのおのが推薦する満州地域の現地代表者を加えた、三者による直接交渉によって最終的解決を図るべきである、と提言
    注目すべきは、報告書が附議書が、日本側の主張していた経済的権益の侵害についてほぼ認める記述をしていたこと

    1935 ソ連が極東に配備できる飛行機 950機 日本220機

    日中の戦争を米国が戦争と認定して中立法を適応すると、日本は交戦国の権利として、米国商船の臨検、戦時禁輸品の捕獲を実行できるようになる
    日本にとっても、中国に宣戦布告すれば、米国も中立法を適用せざろう得なくなる。物資と資金の最大の供給先である米国との経済的絆を切ってしまうとことになる中立法の適用は避けなければならないことだった。

  • 2002年刊。先に著者の書籍を何冊か読破済みで、既読感ありといわざるを得なかった。最初は岩波「シリーズ日本の近現代史」で、丁寧な叙述に感服。が、少し批判的な目で見ると幾つか気になる。①アジア諸国のナショナリズム等やや不合理な感情の影響を明記しない。また、②為政者の心性理解という事実確定と責任の帰属とは異質だと明示しない。事実確定と過失を構成する事実との分離作業をしないと過失認定の誤謬を招来し、安易に責任否定の論に援用される危険。③保有情報の非対称性や、当時の国の情報操作の影響を軽視しすぎ。

  •  タイトルどおり、征韓論から太平洋戦争まで、各時々の戦争を支える思考方式を追っている。現代の感覚で見ると奇異に感じるものもあるが、当時はそれが受け入れられていたことや、総力戦の時代にあっては国民を納得させる理由付けが必要だったということも念頭に置いておく必要があろう。筆者は、日本近代の一つの特徴として「内にデモクラシー、外に帝国主義」を挙げ、その源流を征韓論に見ている。
     また、各当時の日本の行為が実際に国際法違反であったかはともかく、国際法の存在は認識されて正当化の理由付けが必要だったわけである。また、時には米(移民法)や中(間島在住の朝鮮人の処遇、満鉄併行線)の側を国際法に基づき非難もしていた。筆者は、国際法の威力を使おうとするこの原理的な姿勢は1920年代には生まれており、国民のリットン調査団報告書への期待が非難に変わったのは必然的で太平洋戦争を準備していく国民的な心性を形成した、と述べている。

    ・征韓論者の唱える、国家の元気を取り戻すための立憲と維新の組み合わせ
    ・日本の独立維持と国権拡張について、民権派と軍事当局者の一致
    ・利益線たる朝鮮の中立の重要性認識、その源流はシュタイン
    ・日清戦争の論理は、朝鮮の改革推進vs反対にはじまり、開化vs保守、文明vs野蛮、朝鮮独立確保のための義挙など
    ・日露戦争でも文明vs非文明の論理、戦中は国民の主体的な参加感覚、しかし戦後は政府・国民双方に「国民の元気」の喪失感
    ・パリ講和会議の二つの衝撃:1)帝国主義による権益獲得は「野暮」との認識発生、2)米移民法などを国際法違反と主張する原理的な対決姿勢の発生
    ・ロンドン海軍軍縮会議は、リアリズムと「現実的な力を持った理想主義の実現」との相反するとらえ方
    ・周到に計画された満州事変、意義付け:1)9か国条約に対しては「中国人自身の分離」、不戦条約に対しては「自国の安全に関係する自衛行動」として抵触しないとする、2)条約を守らない中国への非難

  • 開国および明治維新の近代化政策から太平洋戦争にいたるまでの戦争史です。ここらへんの歴史観は人によってかなり異なる所ですが、高校までの歴史の世界から一歩踏み出して「歴史を線としてどう見たらよいか」というのを考えるのにとてもよく出来ています。"東大式レッスン"というタイトルも、口調が大学の授業風の口語体に近く、史料も噛み砕いて分かりやすく説明していますので、日本の近現代史に興味を持ち始めたばかりの人にお奨めしたい一冊です。最近流行りの「失敗学」を考えるにも有用な一冊かもしれませんね。

  • 新書文庫

  • アメリカの中立法、五ヶ年の重工業転換計画、宣戦布告しない利益、日中戦争の始まりでした。

  • 難しい…!
    日本史の知識が乏しく、特に大切な後半はわからないところもあったけれど、なぜ日本人が無謀とも思えるアメリカとの太平洋戦争に臨んだのか、なぜ戦争が容認されるようになっていったのか、といった問いが、その時代だけで完結する問題ではないことが理解できた。
    一度もう少し易しいものも読んでみようと思う。

  • 明治以降どのように「戦争止むなし」という論理と空気が醸成されていったのか。ありふれた表現だが一つ掘る下げた形で展開される。

    当時生きていた人たちはその論理と空気で生きてきたのであり、分析は出来ても否定はできない気がするよね。

    戦後の平和主義も「何故受け入れられたのか」という問いを立てることもできるし、昨今の所謂「反動」も同様の問いを立てることができる。

    結局はポジショントークになってしまう気もする。

  • 為政者、そして国民が「だから戦争に訴えるのだ」という感覚を持つようになり、それを書き記すようになるのはどんな論理の筋道を得た時なのか。
    というのがライトモチーフになっている。

    戦争につぐ戦争の時代。
    全九講。
    その時期に書かれたものを引用して説明されている部分があり、なるほど…となった。

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プロフィール

加藤 陽子
1960年、埼玉県大宮市(現、さいたま市)生まれ。1989年、東京大学大学院人文社会学系研究科修了(文学博士)。現在、東京大学大学院人文社会学系研究科(日本史学)教授。専門は日本近現代史であり、特に1930年代の外交と軍事を中心に研究を続けてきた。
著書『徴兵制と近代日本1868-1945』(吉川弘文館、1996年)、『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書、2007年)、『昭和天皇と戦争の世紀』(講談社、2011年)、『模索する1930年代』(山川出版社、2012年)、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、2016年)、『戦争まで』(朝日出版社、2016年)などがある。

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