ヨーロッパ型資本主義-アメリカ市場原理主義との決別 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496286

作品紹介・あらすじ

弱肉強食の米国流よ、さらば!これが、市場の暴走を許さず、福祉を重視する西欧スタイルだ。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカが嫌いなんだなというのが、よく伝わった。EUの上院が本当に機能すれば、世界の主役は戻ってくるであろう。本書で触れられているように加盟国それぞれに拒否権があること、ドイツ以外は経済システムが破たんしていること。本書出版以降にギリシャやスペインの経済が破たんしたこと。等を鑑みると、大分、幻想的なシステムだと感じた。ましてやアメリカ合理主義との差別化を強引に図っているような、抽象的な倫理観を重視するシステムでは、まず機能することはないであろう。衰退の一方たどるEU各国の中でドイツだけが日本人とも似た気質で発展を続けていることに感銘を受けた。世界大戦でベッコベッコにされた国が世界で発展を続ける。国の情勢の変動幅が大きいほうが、その反動で大きく飛躍するのであろうか。
    それとも、各国の国民性のポテンシャルなのか。システムうんぬんよりも、それぞれの文化にマッチしたシステムに巡り合えた国が発展するのではなかろうか。アメリカが世界一なのは合理主義を採用したからではなく、合理的なシステムが国民性にマッチしているからなのではなかろうか。
    どっちにしても、もっとヨーロッパの歴史や文化を学びたいと強く思った。

  • ◆資本主義は一種類だけではない。歴史・地理・環境その他、その国固有の事情に伴い変容している。その当たり前の事実に依拠し、本書は欧州的な資本主義の特徴を米国と比較しつつ検討する。日本が真に学ぶべきは米でなく欧?◆

    2002年刊行。
    著者は野村総合研究所主席エコノミスト。

     シンクタンクに所属し、米ワシントン・欧州を主フィールドに、調査研究をしてきた著者が、米・欧間の「資本主義」概念の違い、それが生まれた背景を踏まえ、資本主義の多様性、欧州の長所を米と比較しながら開陳し、米的資本主義一辺倒になりがちな日本の資本主義の方向性に竿を差そうとする書。

     資本主義というものは一つの概念に包摂されて、どこの国のそれも違いはないと感じる向きもあるかもしれない。
     しかし、ジャパンバッシングではないが、日本異質論が展開されるところを見ると、資本主義といっても国毎に差があるということは正面から承認してもよいはずだ。ある意味、国毎で歴史は違い、資本主義の発生や導入経緯にも差異がある。そして資本主義が生まれてからも、人口や地勢、保有資源の差、さらには科学技術の進展の違いや、海外市場との離隔や国内市場の大きさなど異なる歴史を歩んだ様々な要因に違いがあり、それは単に日欧の差というのではなく、欧米各国間にも違いがあると言えるだろう。

     この観点で、印象的なのは、米国の母体であり、米的資本主義に最も親近性のある旧強国イギリスが、現代的米国資本主義の導入・実施に対する逡巡が見受けられる点。
     そもそも国力が強くないと米的資本主義は受忍し得ないとの感想も生まれるところだ。
     また、独仏の差異も考えさせられる。

     とはいえ、欧州統合の理念と実務。これを主導したフランス政治家ジャン・モネ、欧州共同体(EC)から通貨統合・欧州連合への道筋をつけたEC委員長ジャック・ドロールの軌跡を検討しているのは、本書の買いであろうか。

     総じて、ミレニアム前後の、子ブッシュ政権下の米国の独善的行動に対する、EUへの期待感が高揚した時期の著作であり、それゆえ、その後のギリシャ危機・南欧危機、これに伴うユーロ危機は等閑視される。まぁ難民流入に伴う右派台頭の危険性は本書でも指摘されているが…。

     そもそも資本主義といっても多様性があり、現代日本においては、意外にドイツとドイツ企業体制を学ぶべきではとの読後感が残る。それは、製造業の国内生産における影響力、職人に対する日本的心性との共通項、株主以外のステークホルダーへの関心と利害尊重の必要性などに依る。

     故に、経済学の先生方も、アメリカ一辺倒ではなく、ヨーロッパへ留学する人たちが増えればいいのになぁ、と思うのは私だけか。

  • 資本主義下の現代社会において、どれだけ効率的な生産体系、市場機構を作り出せるか、どれだけ他国とのGDP競争に差をつけることができるか。これらは、非常に重要な関心事であり、国家の活動目的も、この点にのみ存在する。このような認識は、本書で著者が述べているように、日本的な資本主義社会の一つの特徴かもしれない。

    しかし、EU各国が展開させている国家活動は、決してGDPのためではなく、国民そのもののためにある。この点を、著者は、市場の限界を理解し、国内の経済活動に対し、必要なところに規制を創り、足りないところに歳出を繰り出す、というようにまとめている。

    もちろん、EU各国が何らの問題も抱えずに上手く統治業務を行えているわけではない。しかし、事が実際に機能しているかどうかよりも、国家のあり方そのものを捉え直し、行政のやるべきことは何かを考えていく上では、EU各国の動向から学べるものは多いように思う。

  • 米国の市場万能・自由主義的資本主義への批判と欧州の福祉国家型資本主義の賛美が本書の主な主張ですが、EU経済史として非常に良くまとまっておりますし、英、仏、独の実情についてもコンパクトながら触れられています。本書を読んで、近時の米国におけるSarbane-Oxley法の制定なども含め、経済活動のプレーヤーにどのようなルールを守らせるか、そして資本主義のタイプを規定するルール作りがどうあるべきか、を考えさせられました。
    出版のタイミングが9・11のすぐ後だったこともあって、中東情勢について陳腐化した記述もあり、日本経済への言及も若干中途半端な感もありますが、EU経済の入門書の最初の一冊としてお奨めします。

  • [ 内容 ]
    弱肉強食の米国流よ、さらば!
    これが、市場の暴走を許さず、福祉を重視する西欧スタイルだ。

    [ 目次 ]
    序章 テロ事件と市場原理主義
    第1章 強まるヨーロッパの対米批判(基本的な社会観 経済政策と制度のあり方 ほか)
    第2章 福祉を重視する経済大国づくりの戦略(「社会的な」ヨーロッパづくり宣言 モネ構想からローマ条約へ ほか)
    第3章 自己変革に取り組むイギリス(没落の五要因 没落の実例 ほか)
    第4章 今後の米欧対立と日本(テロ事件後の米欧関係の変容 テロ事件以降の経済安定志向 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 406149628x  246p 2002・10・20 1刷

  • ヨーロッパの資本主義と市場原理主義に基づくアメリカ型資本主義の違いを述べた一冊。著者は、落着きとゆとりのある社会をつくり、貧富の格差をそう大きくせず、治安の良い状態を維持していこうという考えが、ヨーロッパ資本主義の考え方であるという。それは、30年戦争や、第一次・二次世界大戦など、大きな動乱を経験したヨーロッパだからこそ、生みだされたものなのだと思う。著者が言うように、日本はアメリカばかりを見るのではなく、ヨーロッパに目を向け、ヨーロッパの資本主義に対する考え方にも目を向け、日本流の資本主義作りを計るべきだ。

  • 福島 清彦

  • 11月25日購入。12月19日読了。
    2002年に初版ができ、2007年までに9刷出来というこの新書、サブプライムで混乱している世界経済を目の当たりにした今、経済のモデルを吟味しなおすために必読すべきだ。
    20世紀のテーマが資本主義か社会主義かであった。21世紀を通じるグローバルなテーマは資本主義のあり方である」と著者は言う。仏のアルベール氏の資本主義モデルやヨーロッパの経済状況、欧州の思想の流れなどを紹介(アングロサクソン型、アルペンライン型、合成型)し、アメリカ経済批判をしていくというのが本書の流れである。
    EUの歴史が仏と独の政治的情勢で発端したことを初めて知った。EUの前身であるEECのもとであるECSCが石炭・鉄鋼共同体なのは、経済利益が主目標なのではなく、戦後ドイツをどう欧州に組み込ませていくかという政治的目標であった(独仏国境地帯は石炭鉄鋼に恵まれていた)。その根回しに尽力したのが「ヨーロッパの父」モネ氏。商人、戦時中の国防省特別職員、販売業、銀行家など数々の職歴と英米露などの国を歩き回ったモネ氏ならではの行動力である。
    ドイツはフリードリヒ・リストの「政府主導型混合経済思想」とエアハルト元西独首相の「社会的市場経済論」が改革構想の基本となっている。プロシア帝国の後生まれたワイマール共和国は悪性インフレと階級闘争で崩壊した。インフレ抑制、労使政の協調に中世の「マイスター制度」を受け継ぐ職人集団の社会。
    フランスは「重商主義」、「エリート主義」。
    今後の世界経済はイギリあスがどう動くかで変わっていく。金融市場、労使対立、ものづくりを軽視する教育・文化(全人口の12%が難読)、遅れてEECに参加したこと、低水準の交通網。イギリスの階級制度は能力ある人々に意欲と誇りを持たせるのにはよいが、大衆が参加する大量の労働力が要求されると欠陥が露呈する。
    フランスのコルベール、プロシアのビスマルク、イギリスのフェビアン。欧州は市場の限界と政府の役割について、先人の思想を受け継ぎ、それが改革と統合を支えている。日本は今アメリカ市場主義に傾いている。経済成長も需要増加も人口減少、労働力減少の現在見込めない。日本は「自信をもって消費できる環境」すなわち、社会保障の行き届いた政策を実行すべし。

  • 目次
    <序章>テロ事件と市場原理主義

    <第1章>強まるヨーロッパの対米批判
    基本的な社会観
    経済政策と制度のあり方
    ミクロの経営
    世界の安全保障と地球環境
    米欧対立の機軸

    <第2章>福祉を重視する経済大国づくりの戦略
    「社会的な」ヨーロッパづくり宣言
    モネ構想からローマ条約へ
    ドロール氏が確立した「社会的な」路線とその発展
    新型地域大国EUの目指すもの
    欧州統合の行方
    EUが目指す新しい資本主義の諸相
    ドイツの社会的市場経済
    フランスの混合経済
    進化するヨーロッパ資本主義

    <第3章>自己変革に取り組むイギリス
    没落の5要因
    没落の実例
    エリートと活力
    ブレア改革の評価と課題
    ギデンス教授の論理体系
    改良主義の伝統
    EU統合の影響

    <第4章>今後の米欧対立と日本
    テロ事件後の米欧関係の変容
    テロ事件以降の経済安定志向
    日本への示唆

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著者プロフィール

立教大学経済学部教授。1944年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。国際経済学論専攻。野村経済総合研究所ワシントン事務所所長、同ヨーロッパ社長を歴任。主席エコノミストを経て現職にいたる。著書に『アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ』『環境問題を経済から見る』(ともに亜紀書房)、『持続可能な経済発展』(税務経理協会)、『ヨーロッパ型資本主義』(ともに講談社現代新書)などがある。高橋亀吉賞、大来佐武郎記念賞、日経BP・BizTech図書賞受賞。

「2009年 『オバマがつくる福祉資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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