天皇と日本の起源 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496484

作品紹介・あらすじ

天皇号と国号「日本」はいかにして成立したか。
推古・厩戸から天武・持統まで、権謀と動乱の謎を解明し、国家形成の軌跡を描く。

厳密な意味で飛鳥時代といえば、それは舒明天皇が飛鳥岡本宮を造営し、そこに遷り住んだ630年以降ということになる。そして、通説のいうように、飛鳥時代の終わりを藤原へ遷都した694年と見なすならば、630年から694年までのおよそ60年間が飛鳥時代ということになるのである。
このわずか60年ほどの間に、「天皇」という君主号と「日本」の国号が生み出されたわけで、飛鳥という土地が、さらにそこで展開した歴史が、「天皇」や「日本」を生み出したといっても決していいすぎではない。飛鳥に「天皇」と「日本」の起源があるといえよう。
飛鳥という土地のどのような要素が、また飛鳥時代のどのような出来事がそれを可能にしたのか、それを追究し、解明していくことが本書の課題なのである。――(本書より)

感想・レビュー・書評

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  • 序章 飛鳥への道
    第1章 飛鳥寺創建―推古女帝の設計
    第2章 飛鳥と、斑鳩と―厩戸皇子の実験
    第3章 飛鳥か、百済か―舒明天皇の挑戦
    第4章 板蓋宮の政変―皇極女帝の陰謀
    第5章 飛鳥と、難波と―皇極・孝徳姉弟の契約
    第6章 飛鳥=倭京の完成―斉明女帝の創造
    第7章 飛鳥と、近江と―天智天皇の試練
    第8章 飛鳥をめぐる攻防―天武天皇の死闘
    終章 飛鳥との訣別―そして、「日本」が生まれた

    著者:遠山美都男(1957-、東京、日本史)

  • 2010年、奈良を訪ねた。
    世間が平城京遷都1300年に沸いているとき、奈良まで行って平城京には寄らず、飛鳥斑鳩だけを周ってきた。
    けれど、飛鳥がこんなに国家形成の上で重要ポイントだったとは、その時は知らなかった。

    一般的には、飛鳥時代というのは推古天皇の592年から、持統天皇が藤原京に遷る694年の、およそ100年間のことを言うらしいけど、厳密に言うと推古天皇の宮は飛鳥という地域から少し離れていたらしい。

    が、まあ、推古天皇の頃からということにしておこう。
    敏達天皇の後を継いだ用明天皇がすぐに亡くなり、その後の崇峻天皇は蘇我馬子に暗殺されて、次の男性天皇が現れるまでのつなぎとしての女性天皇が推古天皇、と学生時代習った。
    数少ない女性天皇はすべて、ワンポイントの中継ぎだ、と。

    しかし、推古天皇はタフだった。
    蘇我氏を後ろ盾に、仏教(寺院建立)によって、大王の威光を示した。
    「聖徳太子は実在しなかった」という説が最近出てきているようだけど、この本によると厩戸皇子は主に外交を担当していたという。

    聖徳太子といえば17条の憲法や、冠位十二階などを制定したことになっているので、内政にももちろん参画していたのだろうけれど、彼の住む斑鳩は、飛鳥と難波をつなぐ交通の要所だったというのだ。
    なるほど。
    隋に国書を送ったことは有名だが、それだけではなく朝鮮半島や中国本土との人事交流はあったのだろうから、そうすると難波と行き来のしやすい斑鳩は、外交官厩戸の居住地としては適切だろう。

    推古天皇が中継ぎではなかった証拠に、厩戸は推古天皇をサポートしながら、ついに自ら即位することはなかった。
    先に死んじゃったしね。

    さて、推古天皇の後を継ぐのが、孫の舒明天皇。
    彼は、推古天皇が長い年月をかけて作り上げた飛鳥を棄てて、百済の地に(奈良県だよ)新しく都を造るのだが、いろいろあって挫折&薨去。
    舒明天皇の奥さんが皇極天皇となったとき、彼女は夫の宿願であった百済の都をさくっと棄てて飛鳥に戻る。
    やっぱり大王の権威は飛鳥あってのことなのよ、と思ったかどうかは定かではないが、この後彼女は飛鳥の地に宮や寺院を造って造って造り倒す。

    話は少し戻るけれど、推古天皇の跡継ぎは二人考えられた。
    孫の田村皇子(舒明天皇)と、厩戸皇子の息子である山背大兄皇子。
    父の人気もあって、山背大兄は自分が跡継ぎにふさわしいと思っていた節があったらしいけれど、田村皇子の方が年齢が上で、なおかつ山背大兄は性格的にまだ未熟と思われていたらしい。
    推古天皇は死の間際に二人をそれぞれ呼び、後事を託した。
    そして蘇我蝦夷にも。

    ところが舒明天皇の後を継いだのが妻の皇極天皇。
    「え?次は俺じゃないの?」
    面白くないのは山背大兄。
    放っておくと内紛のもとになる。父の七光りで人気はあるから。
    というので、蝦夷がまず天皇の意向を伝えるが、いうことを聞かない(っぽい)ので、蝦夷の息子の入鹿が成敗する。もちろん天皇の御意志のたまものだ。

    そうでしょう。そうでしょう。
    入鹿と山背大兄はいとこ同士。なのになぜ入鹿は山背大兄を殺したのか。
    そしてそれを、蝦夷はどう感じていたか。
    これがずっと気になっていたのだけど、天皇の意向を汲んでということなら納得。
    私の知っている蝦夷なら、そうするはずだよ。うん。うん。

    天皇の意向を汲んでことに及んだ入鹿が、今度は中大兄に殺される。
    なぜか。
    皇極天皇が即位した時点で皇太子は古人大兄皇子(舒明天皇の息子だが、皇極天皇の息子ではない)ということになっていたのだが、皇極天皇の弟である軽皇子に跡を継がせることにしたときに、邪魔になった古人大兄の後見である蘇我氏を排除することによって、古人大兄を切り捨てた。
    手を下したのは中大兄だが、黒幕は皇極天皇。
    なるほど、大物は自ら汚れ仕事をしないものだよね。
    というわけで、入鹿は殺され、古人大兄は仏門に入り、蝦夷は自殺する。
    そうそう。蝦夷って詰めが甘いんだよね。

    この後皇極天皇はその位を弟である軽皇子改め孝徳天皇に譲り、政治は彼にお任せ。
    自分は飛鳥の町づくりに専念する。
    孝謙天皇は難波で組織改編など、新しい国の在り方を実現するが、道筋が見えてきた段階で、皇位を姉に取り戻される。
    かくて孝徳天皇のあとは再び皇極改め斉明天皇が国を治めることになる。

    その後斉明天皇→天智天皇→天武天皇→持統天皇と続くのだけど、皇極・斉明天皇の無慈悲っぷりでお腹いっぱい。
    彼女は皇位を約束しておきながら都合が悪くなると簡単に切り捨てる。
    山背大兄、古人大兄、孝徳天皇。
    怖いですね~。
    歴史の授業ではほとんど触れられない地味な天皇だったのに、わからないものですなあ。

    さて、やけに蘇我蝦夷にだけ思い入れがこもっていますが、それはやっぱり『日出処の天子』にどっぷりつかった学生時代のたまものです。
    また読みたいなあ。

  • タイトルを読み違えていました。天皇家の先祖は、一体何者かという話かと勝手に解釈し、記紀や中国の文献から大王家の真相にせまるものかなと思って読み始めました。
    内容は、飛鳥から藤原京までの大王家のお家事情というところでしょうか。
    天皇号と日本という名称がいつから使用されたかということが、終章に書かれていますが物足りないですね。乙巳の変や壬申の乱の記述にくらべて安直な気がしました。
    今回、以前読んだとき、どうも頭に入らなかったので、不明瞭な言葉や人名は辞典で調べる。どうも頭に入りにくいところは、ノートに自分の言葉で書き直す。人物の系図は自分で造る。簡単な年表と天皇家表をノートにし、参照しながら読んでみると以前読んだ時と違って理解できたので驚きでした。
    この本を読んでいて、気になったことがあります。歴史の通説と著者の想像が同じような調子で記述されている箇所がかなりみられます。

  • [ 内容 ]
    天皇号と国号「日本」はいかにして成立したか。
    推古・厩戸から天武・持統まで、権謀と動乱の謎を解明し、国家形成の軌跡を描く。

    [ 目次 ]
    序章 飛鳥への道
    第1章 飛鳥寺創建―推古女帝の設計
    第2章 飛鳥と、斑鳩と―厩戸皇子の実験
    第3章 飛鳥か、百済か―舒明天皇の挑戦
    第4章 板蓋宮の政変―皇極女帝の陰謀
    第5章 飛鳥と、難波と―皇極・孝徳姉弟の契約
    第6章 飛鳥=倭京の完成―斉明女帝の創造
    第7章 飛鳥と、近江と―天智天皇の試練
    第8章 飛鳥をめぐる攻防―天武天皇の死闘
    終章 飛鳥との訣別―そして、「日本」が生まれた

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2009/7/19 チェック済み

  • 天皇号と国号「日本」は、いついかにして成立したのか。
    古代国家の形成期とも言える七世紀の歴史の舞台となった飛鳥。
    鄙びた、当時でも田舎であった飛鳥に何故都が置かれたのか。
    その謎解きを中心に、権威の象徴としての「天皇」が生まれた
    背景や経緯が書かれている。
    多くの有力豪族の力に押されていた「大王」の存在を、他の氏族とは別格であると言うことを見せつける為に、様々な手段を講じて、力と権威を身につけていった軌跡が、良かった。
    ただ、部分的には納得のいかない部分も多々ある。
    作者の推論の背景は日本書紀が中心となっていて、それ以外の様々な史料との比較検討もあるものの、史料の信憑性と言う点に関して、作者の推理に都合の良い部分だけを用いているような印象があった。
    そういう風に読み取れるかもしれないけれど、そうとも言えないんじゃないの?と思う部分が多く、その辺がちょっと・・。
    例えば、ある記事を見て、こういう行動は、こういう考えがあったとしか考えられない、と言ったような決めつけ的な部分が結構ある。
    私が小説好きなせいだからなのかもしれないけれど、人間の思考って一貫性があるようで無かったり、無いようであったりと複雑。
    それを思うと、やはり歴史って難しいよな〜。
    皇極(斉明)女帝への評価には、今までとは全く違った捉え方でかなり勉強になったけど、当時の王位継承権については、ちょっと納得がいかないかな。

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著者プロフィール

遠山美都男

1957年、東京都生まれ。学習院大学文学部卒業。同大学大学院人文科学研究科に進み、博士(史学)を取得。専門は日本古代史。『壬申の乱』『白村江』『天皇誕生』『蘇我氏四代』『大化改新と蘇我氏』ほか著書多数。

「2022年 『新版 大化改新 「乙巳の変」の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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