ウィトゲンシュタインはこう考えた-哲学的思考の全軌跡1912~1951 (講談社現代新書)
- 講談社 (2003年7月19日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061496750
作品紹介・あらすじ
『論理哲学論考』から最晩年の思索まで、すべての「遺稿」をあらたに読み直す力作。
感想・レビュー・書評
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攻略本的。ウィトゲンシュタインのテキスト群をあまねくまとめ直し、手稿や草稿、その他遺稿から代表的なテキストである『論考』と『探究』を時系列な流れや論理構成を読み取って論じている意欲的な作品。かなり読んでいて著者の情熱を感じる。最後の『確実性』の部分で、「私」が魂を持つ存在であるということを表明する言語行為が超越言明だ、という話は少し納得がいかなかった。本当にそうなのだろうか。そしてそれが異なる世界像の対立において一条に光を差し伸べるということなのか疑問。全体としてはウィトゲンシュタインが主に取り組んできたテーマとそのおおまかな内容を知ることができたので大変助かった。ウィトゲンシュタインがもっと長命であったなら、相対主義の克服に対してどのような解を与えたのだろうか、『確実性』や『探究』をどのようにまとめ直したのだろうか、ということがやはり気になって考えずにはいられない。
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P7
ある男が奇妙で複雑な哲学的問題について
生涯考え続けたとしよう。
彼の思考が生み出したものは
なんの役にも立たず、
誰の関心も惹かなかったが、
彼は哲学的思考のおかげで生きることができ、
その果てに安らかに死ぬことができた。
この男の生涯は幸福だったのであり、
男の哲学的思考は彼にとって比類なき価値を
持っていたのである。
…
男が生み出したものが、
実は人々のものの見方や生き方を根本的なところで
動かす力を持っていることが後になって判明したとしよう。
男の存在はにわかに我々の心を激しく揺さぶるような
属性を帯びはじめるだろう。
それは「時に背を向けながらも、
そのことによって時を超える者」という属性である。
こうした者をある種ヒーローと呼ぶことができよう。 -
こちらは手練れとは無縁、三分の一にしなければ新書の意味なし。これだったら原典読みますよ。
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感想も何もない。
新書サイズとはいえ、ウィトゲンシュタイン初心者にとって十分に丁寧に解説した内容にただ驚くばかり。
かなりのページ数で読み終えるまでにかなりの日数がかかったが、再読欲かなりある。「手っ取り早く」理解するにはこれか。 -
× 在庫なし
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ウィトゲンシュタインは、やはり偉大だった。
本書を読んで、その事を再認識した。
偉大なんて言葉では言い表せないくらい、素晴らしい人物だったんだと思う。
そして、その凄さを余すことなく伝えてくれた、鬼界氏も素晴らしいです。
まさに力作という言葉が、本書には相応しいと思います。
サブタイトルの<blockquote>哲学的思考の全軌跡 1912-1951</blockquote>という文言は、決して誇張ではありません。
一冊の本ですべてを語り尽くすのはどだい無理な話ではあります。
だからこそ、そのエッセンスを掻い摘んで、大まかな流れを追いかけることを主眼に置いた構成が見事でした。
ウィトゲンシュタインの遺した「哲学」は、氏の「生き様」そのものなのですね。
<blockquote>こうした私哲学という光の下で見直すとき、ウィトゲンシュタインが残した膨大な言葉と思考の全体は新たな意味を帯び始めるのである。それは哲学によって生きるという生き方そのものである。この意味、この生き方こそ、彼が我々に残した最大のメッセージである。</blockquote>本当にその通りだと思います。
哲学とは、そこに書かれていることだけが重要なのだという風に、ぼくは思っていません。
哲学とは、その思考を辿ることによって、先人たちの「視点」を追体験することに意味があるのだと思います。
そこに書かれてあることを咀嚼し、消化し、自らの血肉となる糧とすること。
それが、「哲学書を読む」という行為だと思うのです。
そのような意識で接したとき、ウィトゲンシュタインという人物が遺した「もの」は、本当に偉大な財産だと思います。
その遺産に触れることが出来る幸せを、これからもっと噛み締めていきたいなと思います。 -
ウィトゲンシュタインをテクストから丁寧に読み解いていく入門本。
といっても、テクスト自体の論理に忠実に読むというより、テクストの生成過程、つまり日記やメモなど膨大な遺稿を年代的に分析していくことから、その思想がどのように生み出されたかを丁寧に推察していくという文献学的なスタイル。つまり、ウィトゲンシュタインという人の思想のプロセス・ドラマを追っかけるというもの。
一般論としては、過度に人とテクストを結びつけて読むのはどうか、という気もするが、ウィトゲンシュタイン特有の結論だけが脈絡なしにならんだ(ようにみえる)テクストを解読するには、こうしたアプローチは重要だろう。
そして、結論的には、これは、画期的に分かりやすいウィトゲンシュタイン本となっている。ウィトゲンシュタインの最後の言葉「私の人生は幸せだった」が、不可解な謎めいた言葉ではなく、哲学的人生を全うした人間のまさに必然的な言葉であったことが分かる。
といっても、もともと訳が分からないウィトゲンシュタインについての本なので、分かりやすさにも限界がある。でも、この本を丁寧に読みながら、ウィトゲンシュタインを読めば、いつの日にか、理解できる日がくるのではないか、というほのかな希望が持てた。
まあ、そこまでして、理解しよう、という根性はないけど、長年の課題「哲学探究」にチャレンジするか、という気にはなった。 -
読み助2017年3月26日(日)を参照のこと。http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2017/03/post-ea4e.html
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ウィトゲンシュタインの前期から後期までを紹介。文献学的な感じなのかな?
個人的には相変わらずウィトゲンシュタインの良さはわからなかったが、後期にはあまりふれたことがなかったので、ちょっと考えは変わった。
個人的にはGOFAIの黎明期的な思想から、つまり、フレーゲ的な世界から後期に向かって呪いが溶けて行って、普通の思考になっていった(僕的な意味で)ってかんじなのかな
それにしてもなんでこの頃の哲学者はこうも執拗にシンボルグラウンディングを避けるんだろうな。 -
2012/12/26購入
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