参謀本部と陸軍大学校 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.24
  • (1)
  • (10)
  • (23)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 124
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497078

作品紹介・あらすじ

大東亜戦争敗戦の真因は組識と教育だった。統帥権独立のため創設された参謀本部が権力闘争の具と化し、参謀養成のための陸軍大学校が教育方針を誤まったことで破滅した日本軍の絶望的な内実を克明に追う。(講談社現代新書)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 統帥権や軍部(省部)にかかわる勉強を少ししておきたいと思って、秦郁彦『統帥権と帝国陸海軍の時代』の次に読んだ本。参謀本部の誕生から参謀本部・陸軍大学校の消滅までの歴史を軸に本論が展開されていく。秦書とほぼ同じ指摘がなされている部分も多いように感じるが、タイトル通り本書の範疇は陸軍の参謀本部と陸軍大学校に比較的絞られている。

    筆者は太平洋戦争での敗北には参謀本部の時代適応力のなさと、エリートを養成する陸大教育の失敗によるところが大きかったと指摘する。作戦教育重視の風潮、人文・社会科学のような大局的な視野を養う教育の欠如が相まって、結果的には幕僚としての資質のなさが露呈してしまった。

    組織論的な部分にも触れており、元老なきあとには欠陥のある組織だけが残ってしまったと論じている。さらに、不備を補うための組織乱立とそのシステムとが複雑化をまねき、意思決定と実行の円滑さを欠く原因になったと指摘されている。現代を生きる人たちもこのような失敗を歴史的教訓にしていくことが求められる、と筆者は最後の部分で訴えている。

    参謀本部の登場から終焉までが通史的に描かれているという点で、やや長々としているような印象もなきにしもあらず。また、参謀本部・陸大・軍・戦争の歴史を並列的に展開しているためか、少し理解が交錯してしまった節もあった。しかしながら、上にも書いたように最終的に言いたいことは明快。参謀本部(陸軍中央部)と陸大教育の関係性を学べたのはよかった。秦郁彦氏の著作と比較・分析しながら読むのもよいのではないだろうか。日本近現代史に予備知識があると読みやすいかもしれない。
    (読了:2008.6.9)

  • なぜ日本は無謀だとわかっていた太平洋戦争を開始してしまったのか?
    内閣と陸軍の分裂、陸軍と海軍の分裂、参謀本部と陸軍省の並列関係、陸大の「総力戦」学軽視、という組織や教育の側面から説明した力作。
    戦前の軍の状況はあまり知られていないが、首相は大本営メンバーではなかった、陸軍大臣は参謀本部長よりも格下だったなど、意外な事実を学ぶことができた。戦前の軍組織の関係を知らなければ、当時の意思決定を正しく知ることはできないはず。

  • 山県有朋の参謀本部◆幻となった統合参謀本部◆陸軍大学校とメッケル◆参謀本部の初陣-日清戦争◆問われた陸大の真価-日露戦争◆衝撃と迷走-第一次世界大戦◆石原莞爾の挫折-日中戦争◆組織が生んだ狂気-大東亜戦争

  • 「なぜ無謀な戦争に走ったのか」がわかれば、将来「無謀な戦争に走らずに済む」わけではないような気がしてきた一冊。

    新書サイズにも関わらず、陸軍大学校と世界大戦の関係をきっちりと時系で説明できていて著者の知性というかドヤ顔が伺える。

    陸軍大学校の創立から消滅まで、敗戦の一因としての立ち位置を新書レベルで克明に書かれている。例えば学校の卒業者が受けた教育の内容が貧弱だったために、第一次大戦において陸軍は「欧州に派兵しない(したくない)」という結論に至ってしまったのだが、これが無残な結果を招くことが予想できなかったなどなど。また共産化を防ぐという目的を離れて中国大陸で戦闘を初めてしまう暴走ぶりなど、どう考えても幼稚で痛々しく時代遅れの知識が背景にあることがよくわかった。

    「戦争はんたーい」と叫んでいれば戦争に「巻き込まれない」なんて幼稚に考えてると、また「敗戦」するかもね。

  • 2004年刊行。著者は防衛庁防衛研究所戦史部主任研究官。アジア太平洋戦争で敗れた要因は、政略・戦略眼の欠如、実行能力の不足、情報・兵站の軽視などに存すると見て、そこに至った理由が軍事指導者を輩出した陸軍大学校の教育の拙さにある。このような観点から、陸軍大学校の教育内容やその変遷、参謀本部の設立からその組織改編、現実の戦争指導等を広範に解読。陸軍大学校の教育内容に触れているのが少ない中、貴重な書だが、日清戦争以降の戦争指導の有りようも記述されているため、もう少し大学教育の部分を膨らませてほしいと感じた。
    個人的な関心事からすれば、第三章、第四章1、2、第五章2、3、第六章3、4、第七章3、第八章1、2で十分かもしれない。

  • 新書文庫

  • 参考
    「戦争の日本近現代史」

  • [ 内容 ]
    日露戦争に勝利した新興国家はなぜ破綻したのか。
    組織の欠陥と無定見な教育に敗戦の真因を見出す新史観。

    [ 目次 ]
    第1章 山県有朋の参謀本部
    第2章 幻となった統合参謀本部
    第3章 陸軍大学校とメッケル
    第4章 参謀本部の初陣―日清戦争
    第5章 問われた陸大の真価―日露戦争
    第6章 衝撃と迷走―第一次世界大戦
    第7章 石原莞爾の挫折―日中戦争
    第8章 組織が生んだ狂気―大東亜戦争

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日本はなぜ太平洋戦争へと突き進んでいったのか?陸軍、関東軍の暴走というのはよく言われている。ではなぜ陸軍がそうなってしまったのかを、陸軍の士官を養成する陸大の教育の分野から問い直している。その対象は広く、陸大・参謀本部の成り立ち、関係性や海軍、政府との関係について詳細に説明されている。また私が今まで勉強して来なかっただけだが、太平洋戦争に至るまでの動きが細かく書かれていたので、勉強になった。
    人材教育の重要性と難しさは企業や現在の義務教育の場面にも当てはまると思った。また何を教えるかとはどんな人材を作るかであり、それは数十年後の日本や世界のビジョンをきちんと描かれていなければならず、今の日本にも不足している点だと思った。

  • メモ:上原 勇作,福田 雅太郎,武藤 信義らの主張;海戦初頭の短期決戦で戦争目的を達成するための常備兵力と,それを可能にする初期動員の即応性を重視し,兵器の質・量の劣勢を精神力などの無形的要素によって補うというもの.昭和8(1933) 時点.p.179

    メモ:吉田 善吾海相の報告;海軍が実施した対米図上演習の結果,仮に蘭印の資源地帯を占領しても,海上交通線が確保出来ないため,蘭印攻略は無意味.昭和15(1940)時点.p.228

全16件中 1 - 10件を表示

黒野耐の作品

参謀本部と陸軍大学校 (講談社現代新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×