- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061497443
作品紹介・あらすじ
生きていく辛さから逃れ得たら幸福だろうか? 停滞した時間、閉じた世界にある「充足に似たもの」は脆く表面的なものだ。世界と自分と現実とをリンクさせ、ささやかな日常を味わって生きる、大人な人生論。 第1章 幸福の1ダース 第2章 不幸の中の幸福 第3章 幸福と不幸との間 第4章 断片としての幸福 第5章 散歩者の視線
感想・レビュー・書評
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精神科医の春日武彦さんの幸福論(講談社現代新書)を読んだ。
彼は、不幸を退屈さと不全感が混じりあった感情であるとし、その漠然とした感情を、事物への具体的関心という形で対応していくという手法について説明する。彼が若い時に、出会った、小児科医にして、全米第一の詩人であるウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩についてこう語る。
《塀のあいだ(片桐ユズル・中山容訳)
病院の
裏の出っぱり
では
何も
生えないが
灰
のなかで光る
こわれた
みどりのビン
のかけら
ウィリアムズのように、きちんとした市民として日常を送りつつ、散歩者のような視線で「No ideas but in things」(思想は事物の中にしかない)を実践すればよいのだと思った。
(中略)
世界を能天気に肯定するわけでもなければ、テロリストのように憎悪するわけでもなく、もっとさりげなく世界と折り合いをつける方法はある筈なのである。それを探し求め、遂行していくところに幸福は立ち現れるだろう。ただし百パーセントの幸福などあり得ない。幸福は常に断片として現れる。ほのめかしとして現れる。点が三つ、逆三角形の配列で打たれていればそれを見た者は必ず顔を認知するという。その「三つの点」に相当するものを見出し、幸福な表情を発見しながら、我々は日常を生きていくのである。》
街角に遍在する、事物を媒介として断片としての幸福を積み上げるという連続性の中にこそ幸福感があるという具体性が、新しいマニュアルとしてぼくの心の中のモザイクの一片としてパチッとはまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022/07/14
そこまでかなぁという感じ
最初は面白かったけどだんだんお腹いっぱいになって眠くなってくる、、いや、おもしろいところはあるんだけど -
38279
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思索
社会 -
105円購入2011-10-22
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図書館で借りて速攻で読了。幸せだと思う人が幸せだという、読むと幸せな気分になれる本。
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2017年4月26日購入。
2018年3月5日読了。 -
あまたある軽薄な人生指南書やいかがわしい教条書などに取られがちなタイトルなれど、中身は一級のエッセイ。文章が美しく、新書系の同業作家の中でも群を抜くだろう。教条にとらわれず、しかし展開される主張はその臨床にまつわるエピソードと相まって、強い。
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なんとも不思議な幸福論だった。視点が独特で引き込まれた。良かったらご一読をオススメします。