中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 290
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497467

作品紹介・あらすじ

昔、中国に「盗賊」というものがいた。いつでもいたし、どこにでもいた。日本のどろぼうとはちょっとちがう。中国の「盗賊」はかならず集団である。これが力をたのんで村や町を襲い、食料や金や女を奪う。へんぴな田舎のほうでコソコソやっているようなのは、めんどうだから当局もほうっておく。ところがそのうちに大きくなって、都市を一つ占拠して居坐ったりすると、なかなか手がつけられなくなる。さらに大きくなって、一地方、日本のいくつかの県をあわせたくらいの地域を支配したなんてのは史上いくらでも例がある。しまいには国都を狙い、天下を狙う。実際に天下を取ってしまったというのも、また例にとぼしくないのである。幻の原稿150枚を完全復元。共産党の中国とは盗賊王朝である。劉邦から毛沢東まで伝説の完全版がよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。

    盗賊と言っても鼠小僧ではなくて、ならず者の武装集団。
    劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全から、毛沢東まで(笑

    ムッチャ判る。

    で、自分らの判るエリアでやっとった奴らが、全アジアから世界まで視野に入れ出したことも。

    こいつら、あかんて。仲間に入れたら。

  • 本屋で見つけてからずっと興味があったモノをやっと読破。意外と古い本だった事に少々驚いた。著者の高島敏男さんという方は今まで存じ上げていなかったが、時に非常に軽い文体になりならがも、しっかりとした知識に支えられた本である事がよくわかった。他の本もぜひ読んで見たい。それにしてもどのストーリーも中国らしく、登場人物の数が多く、相関関係がすっと入ってこない・・。中国の盗賊とはなんぞやという一貫したテーマで書かれており、非常にわかりやすかった。またところどころに現代の中国人に感じる行動様式等が見受けられて非常に興味深かった。

    以下、興味深かった所の抜粋。

    P.167 (李自成の章にて)
    次に宣伝工作を活発にやりだした。「我々は人民の困苦を救うための正義の軍隊である。共に力をあわせて罪悪に満ちた明王朝を妥当しよう」というような意味のことを、古典の用語をいっぱいちりばめた華麗な文章に作り、宣伝ビラにして、各所に貼り出したり配布したりした。こうした宣伝ビラは知識自むけである。庶民はそんなもの読めもせず、わかりもしない。

    P.168
    これより三百年後、李自成の故郷である陜北の地を毛沢東が占領した時にも、民衆工作に歌を使った。有名なのは例の東方紅である。
    双方に共通するのは、救世主の名前を売り込もうとしていることだ。何百年たっても、中国の大盗賊のやることに大した進歩はない。

    P.200 (洪秀全の章にて)
    王慶成という、太平天国研究のトップリーダーが、人民共和国建国以来の研究史を振り返って述べている。

    すなわち「労働者階級(共産党)のみが農民を解放できるという真理」を証明すること、「プロレタリアート(共産党)の政治闘争に参考資料を提供すること」が彼らの太平天国研究の目的なのである。なおここで「科学的」ということを言っているが、それは靴に合わせて足を切るようにマルクス主義の理論に合わせて中国の歴史を切る、ということでわれわれの考える「科学的」とは全然意味が違う。

    P.205
    ふつうの庶民の家でも、子供に勉強をさせて、その子が科挙に合格すれば、たちまち支配階級に乗り移れる。その意味では、昔のヨーロッパや日本などよりも、平等でチャンスの多い社会であった。
    ただ子供に勉強をさせるというのは大変にお金がかかる。特に従来書物を読む人間が1人もいない一族のばあいは、かならず学校へ行かせるなり家庭教師をやとうなりしないといけないから、いっそうお金がかかる。
    そこで一族のなかで向上心と指導力のある男が、一族の子供たちのなかで比較的かしこそうなのに目をつけてその子に科挙を受けさせる計画を立てる。他の一族全員は、歯をくいしばって働き、爪に火ををもす切り詰めた生活をして、1人の男の子の弁級にすべての希望を托する。十何年もしくは何十年の辛苦ののち、うまく行ってその子ないしその子の子が合格して官僚になれば、その地位と声望と収入とはもちろんその子一人のものではなく、一族全員の長期にわたる努力の果実なのであるから、当然全員が享受する。わるい言いかたをすれば、みんなでたかる、その結果、一族の他の人々の子や孫も、小さい頃から勉強ができるようになる。

    P.224
    いったい中国の歴史は王朝交代の歴史であるが、新しい勝者が天下を取ると、前の王朝の宮殿に火をつけて景気良く焼いてしまい、新しく自分の宮殿を作る。秦の始皇帝が立てた阿房宮を楚の項羽が焼いた時は、三ヶ月のあいだ燃えつづけた、というのは有名な話である。我々日本人はケチだから、「なんともったいない、そんな立派な建物があるのならありがたく使わせてもらえばいいのに」と思うが、中国人は太っ腹だからそうは考えない。天下を取ったということは全中国の富を手中にしたということなのだから、宮殿くらいはいくらでも建てられるし、新しい宮殿を作ってこそ「こんどはオレが中国の王になったんだぞ」ということを天下に示すことができるわけだ。

    P.258(毛沢東の章にて)
    王希哲の言うt

  • 中国の歴代の王朝、及び現在の共産党政権は、いずれも盗賊が前政権を倒して打ち立てたもの。
    本書から得られる中国のキーワードは、下剋上、弱肉強食、何でもありの油断できない社会、正直者がバカを見る社会、と言ったところ。現代中国の特徴である、したたかさ、抜け目なさ、或いは公共心の欠場等の歴史的背景が理解できたように思う。

  •  本書で指すのは「盗賊」と言っても武装集団。陳勝・呉広から毛沢東まで、成功したものも失敗したものも含め、庶民出身の様々な「盗賊」を描いている。成功者には後付けらしい伝説ができるとか、指導者本人は粗野でもある程度の規模になると知識人を引き込み思想を構築するとか、各「盗賊」にはある程度の共通点もある。
     この流れの中で語られる毛沢東も、共産主義の革命家というより過去のあまたの「盗賊」の一形態に過ぎないという気がする。まさにそれこそ筆者の言いたいことだろうが。また筆者は、現在の中国の革命史観による歴史の解釈(例:太平天国は農民革命)や、本書の元版刊行の1989年当時に日本の一部にあったかかる社会主義中国への理想を、本書の随所で皮肉ってもいる。

  • これまで中国の歴史に対して、思っていたことを高橋先生が見事に整理してくれたという印象。

    先生の中国に対する見方は、全く同感です。特に毛沢東や周恩来に対する評価は実に的確。

    中国支配層は、秦に始まり、北朝諸国・隋・唐・元・清など、ずっと異民族に支配され、異民族を同化してきた歴史なので、もし日本の大陸の植民地化政策に成功したら、中国が倭朝になって、今頃、日本も支配層にある代わりに、日本列島も中国の一部になっていたかもしれない。

  • どの盗賊も盗賊皇帝も面白い。劉邦、朱元璋の天下取り。中でも毛沢東が一番メチャクチャやっている。インテリで盗賊で好戦的で、国民だったら迷惑すぎる。

  • 面白い。中国史もう一度勉強したい

  • 一介の盗賊が国を作る、こんな例が中国には、たくさんあるんですね。
    「みんなが代表を選んで、その人に国を建設してもらう」
    、、、民主主義の「人の選び方」とは、何もかも違います。

    盗賊が国を作った、だから、、、中国はどうひっくり返っても、民主的な国家
    (ほんとは、国家と言えないと思いますが、、、)になることはできないと確信しました。
    人民裁判は、てっきり「人民による裁判」だと思ったのですが、高島先生は、「人民の前でやる裁判」と
    喝破します。これでは、、、一生、法治国家になることはできませんね。

    中国の歴史を知れば知るほど、面白いのですが、日本とは、絶望的に「うまくやっていけないな」と
    いうか、カノ国は、そもそも、他の国とうまくやっていくことなんて、端から思ってない!
    だって、盗賊のメンタリーティーを、建国した方々は持っているのですから、、、。

  • 古書店にて250円で。取り上げられている〈大盗賊〉は「燕雀いづくんぞ……」でお馴染み陳勝に漢の高祖劉邦、明の開祖朱元璋、明朝と清朝の狭間で僅か40日天下を謳歌した李自成、太平天国を築いた洪秀全、そして〈完全版〉にて当時の原稿を復元した毛沢東。同著者の本は『三国志 きらめく群像』と『水滸伝の世界』しか読んだことがないのだが、難解な内容になりそうな題材を平易な文章で判りやすく仕上げているのはさすがである。参考文献についても、どの本がお勧めでどれがイマイチかなどユーザビリティ第一に書かれており好感が持てる。

  • 中国の歴史を作ってきたのは盗賊である。我が国の歴史との違いをまざまざと見せつけられた。毛沢東の記述が興味深い。記述も平易で親しみやすい。
    いわゆる歴史認識問題について、なんとなく向こうの思考回路が垣間見えた気がする。

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プロフィール

1937年生れ。兵庫県相生出身。東京大学大学院修了。専攻中国文学。大学教員を経て現在フリー。主な著書に『水滸伝の世界』、『水滸伝と日本人』(第5回大衆文学研究賞)、『漱石の夏やすみ』(第52回読売文学賞)、『三国志きらめく群像』、『本と中国と日本人と』(以上、ちくま文庫)、『李白と杜甫』(講談社学術文庫)、『中国の大盗賊・完全版』(講談社現代新書)、『水滸伝人物事典』(講談社)、『本が好き、悪口言うのはもっと好き』(文春文庫、第11回講談社エッセイ賞)、『漢字と日本人』、『座右の名文』(文春新書)、『お言葉ですが…』〈1〉~〈10〉(文藝春秋)・〈11〉(連合出版)、など多数。

「2018年 『本が好き、悪口言うのはもっと好き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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