- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061497467
作品紹介・あらすじ
昔、中国に「盗賊」というものがいた。いつでもいたし、どこにでもいた。日本のどろぼうとはちょっとちがう。中国の「盗賊」はかならず集団である。これが力をたのんで村や町を襲い、食料や金や女を奪う。へんぴな田舎のほうでコソコソやっているようなのは、めんどうだから当局もほうっておく。ところがそのうちに大きくなって、都市を一つ占拠して居坐ったりすると、なかなか手がつけられなくなる。さらに大きくなって、一地方、日本のいくつかの県をあわせたくらいの地域を支配したなんてのは史上いくらでも例がある。しまいには国都を狙い、天下を狙う。実際に天下を取ってしまったというのも、また例にとぼしくないのである。幻の原稿150枚を完全復元。共産党の中国とは盗賊王朝である。劉邦から毛沢東まで伝説の完全版がよみがえる。
感想・レビュー・書評
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著者は中国共産党に対してご立腹の様子。その時々のイデオロギーに合うように史実を改変・ねつ造した学者が権威を持てるし、そのせいで真実が失われてしまうのだから当然至極。「完全版」で毛沢東の章が復活して何より。
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中国にはコソ泥はいないらしい。いるのは群れをなして襲ってくる盗賊。
広大な中国の国土に、耕作に適した土地はそう広くはないのだそうだ。
だから、農村に人が余る。仕事のない人があふれる。
そうするとどうなるか。
気が弱い人たちは乞食になり(こちらも集団)、血の気の多いのは盗賊になる。
だから、いつの時代も中国には盗賊がどこにでもいたのだそうだ。
ちなみに盗賊は正義や悪とは無縁である。
国や地方のお金で武装しているのが官軍、民間の武装勢力が盗賊なんだって。
やってることは変わらないらしい。
だから盗賊から皇帝になった人もいる。
略奪する官軍より、金持ちから奪ったものをふるまってくれる盗賊の方が民衆の支持を得たこともままあるそうだ。
この本で紹介されている盗賊は
陳勝・劉邦(漢の高祖)
朱元璋(明の太祖)
李自成(明を滅ぼし順王朝をつくるが、40日で清に北京を追われる)
洪秀全(太平天国の乱を起こした人)
毛沢東(ご存知の)
要するに、異民族に襲われるわけではなくして王朝が変わった時、政権を奪取した人を大盗賊と呼ぶということらしい。
この本を読むまで全く知らなかったこれらのことを、するする読みながら理解できるのだから高島俊男の本は素晴らしい。
一生ついていきます。 -
目から鱗が落ちる
それも 何枚も
ときには
「あっ そうだったのだ!」
と つい声に出てしまう
高島俊男さんの
中国モノを手に取るたびに
つくづく思ってしまうことです
ずいぶん前に
「中国の大盗賊」(1989年発行版)
を 読んでいた記憶がかすかに残っていて
その時に
「あとがき」に(本書では)ずいぶん割愛しましたよ
ということが書かれてあったのを
すっかり失念していました
それで、今一度
この「完全版」を手にしたのですが
いゃあ これが
もう 面白く 興味深く
古代の中国の歴史上に登場する
有名盗賊たちを再確認するとともに
前書では すっかり骨抜きになってしまっていた
第五章「これぞハワメツケ最後の盗賊皇帝ー毛沢東」
の章の抜群に面白いこと
その当時(1989年当時)の諸事情の編集が「物足りない状況に」させてしまったわけでしょうが…
本書のあとがきに
前書を読んだ未知の読者から
「もとの原稿を見たい」という依頼があれば
その「もとの原稿」を(資料がつまった)ダンボールごと
送られた高島さん、
そして、そのダンボールをちゃんと
送り返してこられた読者の方、それも何人もの方たち、
それらの存在が本書につながっていることを思うと
なにやら感慨深いものを感じてしまいます。 -
面白かった。
盗賊と言っても鼠小僧ではなくて、ならず者の武装集団。
劉邦、朱元璋、李自成、洪秀全から、毛沢東まで(笑
ムッチャ判る。
で、自分らの判るエリアでやっとった奴らが、全アジアから世界まで視野に入れ出したことも。
こいつら、あかんて。仲間に入れたら。 -
中国の歴代の王朝、及び現在の共産党政権は、いずれも盗賊が前政権を倒して打ち立てたもの。
本書から得られる中国のキーワードは、下剋上、弱肉強食、何でもありの油断できない社会、正直者がバカを見る社会、と言ったところ。現代中国の特徴である、したたかさ、抜け目なさ、或いは公共心の欠場等の歴史的背景が理解できたように思う。 -
本書で指すのは「盗賊」と言っても武装集団。陳勝・呉広から毛沢東まで、成功したものも失敗したものも含め、庶民出身の様々な「盗賊」を描いている。成功者には後付けらしい伝説ができるとか、指導者本人は粗野でもある程度の規模になると知識人を引き込み思想を構築するとか、各「盗賊」にはある程度の共通点もある。
この流れの中で語られる毛沢東も、共産主義の革命家というより過去のあまたの「盗賊」の一形態に過ぎないという気がする。まさにそれこそ筆者の言いたいことだろうが。また筆者は、現在の中国の革命史観による歴史の解釈(例:太平天国は農民革命)や、本書の元版刊行の1989年当時に日本の一部にあったかかる社会主義中国への理想を、本書の随所で皮肉ってもいる。 -
これまで中国の歴史に対して、思っていたことを高橋先生が見事に整理してくれたという印象。
先生の中国に対する見方は、全く同感です。特に毛沢東や周恩来に対する評価は実に的確。
中国支配層は、秦に始まり、北朝諸国・隋・唐・元・清など、ずっと異民族に支配され、異民族を同化してきた歴史なので、もし日本の大陸の植民地化政策に成功したら、中国が倭朝になって、今頃、日本も支配層にある代わりに、日本列島も中国の一部になっていたかもしれない。 -
どの盗賊も盗賊皇帝も面白い。劉邦、朱元璋の天下取り。中でも毛沢東が一番メチャクチャやっている。インテリで盗賊で好戦的で、国民だったら迷惑すぎる。
著者プロフィール
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