タブーの漢字学 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.36
  • (4)
  • (5)
  • (23)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 77
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497511

作品紹介・あらすじ

性の話、トイレの話…はばかりながら読む漢字の文化史。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なかなかに壮絶な内容。漢字から読取れるタブーに主眼をおいて、あれこれ語っている。
    これ系の本にありがちな「これ、雑学ね!」的な展開は無く、言葉に対する配慮を感じるし、文字を学問してるので最後まで気持ちよく読ませてくれます。
    しかし、表意文字は果てしないな…。

  • 性の話、トイレの話…はばかりながら読む漢字の文化史。

  • ことばは、様々な理由で言い換えられる。
    不吉だから
    縁起を担いで
    恥ずかしいから
    言いにくいから
    言い間違えたから
    大切だから
    ……


    そうした中で、タブーのものに関しては、言い換えが多い。それは、以下の目次を見てもよくわかるだろう。
    特に、死や便所に関しては、多くの言いかえが存在することはよく知られている。
    その中で、「漢字」を中心に、中国語から見ていくのが本書だ。そこで、性についての現代中国語については、注意深く避けている、とのこと。間違っても、中国から来た女性に向って、卑猥なことを言う、などということが起きないようにとの配慮なのだそうだ。
    つまり、古典から考察されているのだが、それはそれで面白い。


    序章 言い換えられることば


    第1章 「性」にまつわる漢字(タブーの漢字を書かない理由/性器を表す漢字)
    よく、女偏の漢字は見かけるが、「男」を使った文字は少ない。あまり見かけない。それは、別のものが男を表しているからで、それが、「士」と、「且」とのこと。どちらも、男性特有のものを表しているとのことだ。
    また、罵倒語としては、中国では、性的なものが多いそうだが、英語にももちろんあるし、日本語にもある。
    それにしても、以前より不思議だった「色」が性的な意味合いを持つことについてむしろ、わたしの思い込みが逆で、性的な意味合いの方が先だ、ということに驚いた。初めて作られたときは、性行為そのものを指していて、それがのちに、男女関係→美しい女→美しいものになったのだそうだ。


    第2章 「死」をめぐる漢字
    「死」という字は、人と、骨が崩れた様からなっていて、人は、その骨に拝礼しているのだそうだ。
    しかし、「死」はあまりにもあからさますぎて、避けられる。
    そこで本来は、「歿」が使われたのだが、当用漢字によって「没」に書き換えられてしまった。
    また、皇帝なら「崩」、諸侯の地位にあるものは「薨」、「夢」と「死」を合わせ、悪夢で呪い殺される字である。もちろん、それ相応の地位にあるものがされることだからである。さらに、高級官僚の大夫は「卒」、一般官僚の士は「不禄」、場合によっては、「卒」が天寿を全うし、「不禄」が夭折となる。


    第3章 大小便と「月のさわり」(大小便について/月のさわりについて)
    糞、屎尿など、便には「米」という字が紛れている。
    もちろん、人がコメを食べて排泄するから、というわけではなく、「小粒のもの」という意味が米にあるからだ。
    「コン」という、囲いの中に豚が入った字がある。これは、古代中国では、トイレの下に豚小屋があり、豚がそれを食べていたからで、落ちれば死ぬほどの高さがあったそうだ。うう。そんな死に方、嫌だ。もちろん、これは、呂后の話でもおなじみだ。うう。怖い。
    それにしても、「今、生理中」と口にしにくいからといって、中国の後宮では頬紅をしていたらしい。その方が、よほど恥ずかしい気がするんだけど。


    第4章 名前に関するタブー
    中国では字を付け、諱を呼ばない。読んでもいいのは目上の人だけ。日本にも近い習慣はあったが、本場の様子は想像を絶する。だって、そのせいで、人が殺される。
    古代の聖人や、過去の皇帝の諱の漢字を、以後ははばかって使えないという。
    例えば、孔子の名は「丘」だった。もちろん、儒学の聖人。この先「丘」は使えない。
    そのため、ほかの字で代用したり、4画目を書かないなどの「欠筆」などの方法がとられたらしい。辞書にも書かなかったくらいである。
    また、親の名前にかかわる仕事には就けなかった。そのせいで、歴史上、最も難しい登用試験といわれた科挙に受験資格レベル(当然、科挙事態を受けるまでに、様々な試験や推薦が必要)であっても、親の名のために辞退させられたものもいた。
    そして、辞書を作る際に、皇帝の名を書いてしまったために、3人の子と4人の孫が連座して死罪となるほどの事件も起きた。
    しかし、それほどの禁忌であったために、年代特定の役に立つという。




    今まで読んできた漢字とは、また違う見方があって、非常に面白かった。



    某サイトより転載

  • 我が国の女房言葉や中国の避諱はもとより、「性」にまつわる漢字、「死」をめぐる漢字、果ては大小便や「月のさわり」など、一般の学術書には載らないような貴重な情報まで数多く取り上げた良書。

  • 性、死、大小便など、人間生活のタブーに関連する漢字のコネタ集。
    ミドルネームなどの名前に関する話題もある。

    漢字というよりは、言葉の文化について書いていると思えた。

  • [ 内容 ]
    性の話、トイレの話…はばかりながら読む漢字の文化史。

    [ 目次 ]
    序章 言い換えられることば
    第1章 「性」にまつわる漢字(タブーの漢字を書かない理由 性器を表す漢字)
    第2章 「死」をめぐる漢字
    第3章 大小便と「月のさわり」(大小便について 月のさわりについて)
    第4章 名前に関するタブー

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 性、死、排泄など。人前では堂々と言えないようなタブーの漢字文化がわかりやすく載っている。

    知り合いの名前に使われている漢字が、もともとはエッ!?という意味であるということを知ってしまうと、切なくなるかも。

    名前に関するタブーでは、中国の人は苦労したんだなぁという苦労話満載。

    雑学本ですが、おもしろい。

  • 漢字についての本としては白川先生よりは読みやすいがあまり面白くない。
    漢字学であるから許慎の「説文解字」や郭沫若に触れるのは当然としても白川先生に触れないのは如何なものかと。
    特に新たに知るということもなかったし
    あまり良い本ではない。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

京都大学名誉教授、公益財団法人日本漢字能力検定協会漢字文化研究所所長

「2017年 『角川新字源 改訂新版 特装版 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿辻哲次の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×