経済論戦の読み方 (講談社現代新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497603

作品紹介・あらすじ

明解!大混乱の経済論戦シーンをあざやかに読み解く!辛口ブックレビュー付き。

感想・レビュー・書評

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  •  斜め読み。緩やかなインフレによってデフレを脱却すべし,とするリフレ派の著者が,論敵の構造改革派の考えも含めて今日の経済問題を紹介。
     あと,奥村宏『判断力』を単なる「御用学者」批判だとして,「単に自分の賛成できない主張をする経済学者を,『御用学者』と呼んでいるにすぎない」(p.199)と酷評。陰謀論に御用学者のレッテル貼り,七年前の本だけど,今もおんなじだなあ。
     ブックレビュー・コラムとして,ダメな経済本を何冊か紹介している。筆者が「万年危機論」と呼ぶ煽り系経済本は,つまるところ陰謀論なのね。「永遠に事実によって反証されない論理と,いつかは当たるかもしれない万年危機論。まさに彼らの商品は『無敵』」と評している(p.145)。
     経済学の基本を学んだことのない人にも分かるように努めたとしてるんだけど,ゴメンナサイ経済の理論のところはついてゆけずに飛ばし読み。

  • [ 内容 ]
    明解!
    大混乱の経済論戦シーンをあざやかに読み解く!
    辛口ブックレビュー付き。

    [ 目次 ]
    はじめに エコノミストは役に立たないのか?
    第1章 「実践マクロ経済学」のコア(日本経済を読み解く基本的な考え方;「流動性の罠」に陥った日本経済)
    第2章 経済論戦の見取り図―構造改革とマクロ経済政策(「構造改革主義」という幻想;「一九四〇年体制テーゼ」の呪縛)
    第3章 日本経済の「新しい局面」の見方(「失敗の枠組み」はいまだに健在;経済が回復する場合、失速する場合)
    第4章 日本の財政破綻はありうるのか(財政の維持可能性を考える;間違いだらけのハイパーインフレ論)
    第5章 ポピュリズムと不幸な構造改革(なぜ民営化が必要なのか;年金制度の本当の問題)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • エコノミストはどのような理論に基づいて議論を交わしているのかを解説する本。経済学の「教科書」的常識は現在でも十分通用するものであり、その常識を無視して奇をてらった新理論を展開すべきではないと主張する。著者は「リフレ派」の立場であり、構造改革論者を批判する。<br /><br />第1章はマクロ経済学の復習。GDP、ケインズ経済学、景気循環、財政政策、金融政策、「流動性の罠」、IS-LM分析など。現在(2004年当時)の経済的停滞を解決するにはデフレを解消して総需要を増やすことであると主張する。<br /><br />第2章は構造改革主義についての説明。生産性可能曲線を足がかりに構造改革の中身について解説する。筆者の立場からは、構造改革によってもデフレギャップは埋まらない。不良債権問題や貸し渋り問題よりも、投資を通した総需要不足を解消すべきであるとする。「中国発デフレ説」も否定する。<br /><br />第3章で、この10年(2004年当時)のマクロ経済政策の失敗は、恒常的な需給ギャップの放置であるとする。長期失業増加問題や原油価格高等問題についても触れる。<br /><br />第4章では日本が財政破綻する可能性について考察する。ドーマーの公債定理「公債利子率が名目経済成長率よりも低ければ財政は破綻しない」を元に、デフレが継続すれば財政危機の可能性が高まるとする。破綻回避のためにインフレ課税政策を取ることを提唱する。ハイパーインフレーションは起こらないと説明する。<br /><br />第5章では道路公団民営化と年金制度について。年金制度の問題についてもリフレ政策が有効であるとする。<br /><br />目次<br /> 第1章 「実践マクロ経済学」のコア<br />  1 日本経済を読み解く基本的な考え方<br />  2 「流動性の罠」に陥った日本経済<br /> 第2章 経済論戦の見取り図―構造改革とマクロ経済政策<br />  1 「構造改革主義」という幻想<br />  2 「一九四〇年体制テーゼ」の呪縛<br /> 第3章 日本経済の「新しい局面」の見方<br />  1 「失敗の枠組み」はいまだに健在<br />  2 経済が回復する場合、失速する場合<br /> 第4章 日本の財政破綻はありうるのか<br />  1 財政の維持可能性を考える<br />  2 間違いだらけのハイパーインフレ論<br /> 第5章 ポピュリズムと不幸な構造改革<br />  1 なぜ民営化が必要なのか<br />  2年金制度の本当の問題<br /><br />著者の強い信念に基づいて論を展開し、構造改革主義が間違いであるという激しい主張を展開している。経済書のレビューも10冊ほど載せているが、どれも相手著者の主張を強く否定している。小気味よさすら感じる。<br /><br />多数のマクロ経済の専門用語が短いページの中で次々と導入される。予備知識があったほうが筆者の主張を楽しめるのだろう。<br /><br />昨今の金融不安では実態経済を超えて巨大な信用創造がなされたという問題点が指摘されているが、これは著者からはどのように見えるのだろうか。あくまで誤差の範囲内なのだろうか。それとも新たに資産経済を組み込まなければならないと感じているのだろうか。

  • 言っていることは真っ当なんだけど、所々日本語が読みにくいので新書レベルで経済を勉強しようとしている人はやや躓くかも。文章巧くなればこの人もっとウケるのに…って思ってたら最近の「不謹慎な経済学」では随分と文章が巧くなっててビックリ。
    でもこの本も読んで損はないですよ。

  • 原田泰氏「奇妙な経済学を語る人々−エコノミストは信用できるか」等と同じように学部程度の経済学の知識をもとにして日本経済への処方箋を説明する本。内容としては著者独自のものはほとんど無いが、とても読みやすい本。

  • 著者キレてます。

    教授に聞いたところ実際キレキャラらしいので、その辺は性格ということで流して読んでください

  • 筆者のような経済学を少しかじった独習者には、とてもわかりやすかった絶好のリフレ派の論戦本。というのもも著者の田中秀臣氏の批判が、的を得ているからである。■「反構造解派」である金子勝氏、リチャード・クー氏も、田中氏の循環論の視点から批判される。その手際は、根拠示しその結果の展開があり、スリリングでさえもある。また、構造改革派に対する批判展開は、著者の立脚する経済認識から始まる。そして、現状のデフレの状態の認識では同じでもその解決方法として社会構造を変更しなければならないとする構造改革派を、循環論の観点から批判しつくす手際は、感動的でさえある。■何故デフレが続くのか、その疑問を持ち、またその脱却する方法についてマクロ経済的に考えてみようとする人なら最適な「回答」がここにある。■論戦の形を取っているが、相手の言い分も掲載されているので、相手の「問題」点を知りながら、納得いく指摘がなされている。それ故、マクロ経済の基本がおおよそ理解できていれば、非常にとっつきやすい「リフレ」政策解説書ともなっているのではないだろうか。

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著者プロフィール

上武大学ビジネス情報学部教授、経済学者。専門は日本経済思想史、日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的な論客として、各メディアで積極的な発言を続けている。サブカルチャーにも造詣が深い。『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。『脱GHQ史観の経済学』(PHP新書)、『日本経済再起動』(共著、かや書房)、『増税亡者を名指しで糺す! 』(悟空出版)、『ご当地アイドルの経済学』(イースト新書)、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『不謹慎な経済学』(講談社)、『経済政策を歴史に学ぶ』(ソフトバンク新書)、『エコノミスト・ミシュラン』(共著、太田出版)等、著書訳書多数。

「2022年 『田中秀臣・森永康平の Nippon学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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