武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497672

作品紹介・あらすじ

職業:「紛争屋」職務内容:多国籍の軍人・警官を部下に従え、軍閥の間に立ち、あらゆる手段を駆使して武器を取り上げる。机上の空論はもういらない。現場で考えた紛争屋の平和論。

感想・レビュー・書評

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  • 2004年刊行。
    西アフリカ、東ティモール、アフガニスタンにおいて、NGO組織等に所属し、紛争地域の武装解除に携わってきた著者の自叙伝的体験談である。

     一般にはあまり知りえない生々しい戦場の実像、あるいは銃後の治安回復活動の実態が開陳される。例えば、その中には「人道援助はもはや戦争利権の一つである」との言など痛い紛争地域の現実も含まれている。

     ちなみに、不勉強だったのだが、日本がアフガニスタンの武装解除活動(DDR)に主導的に関わっていたとは知らなかった。このことを知り得ただけでも本書を読む価値があったといえそうだ(もちろん、記載内容自体に価値があったのは言うまでもない)。

  • 武装解除を生業とする作者の自伝。
    ボランティアではないのでちゃんと報酬の交渉をして国連からお給料を貰うと言う。
    それがプロ意識というものなのだろう。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • 武装解除の現実を見た。
    キレイごとだけでは何もできないことが
    ここからわかる。
    1番重要なことはできるだけ早く
    紛争を終わらせることなのだから
    現場の状況をそのまま知る必要がある。

  • 3.7

  • ひと言で言えば、理解が追いつかなかった。地政学的なリスクに対する武力の有用性と、平和主義的な非武装の理想という相反する考えがすっきり整理できないここ最近。おそらく本書ではそのあたりのことを問題提起している。

    そもそも紛争も戦争も明らかな悪はなく、グレーの濃さであり、見る方向から濃さは異なる。紛争が悪、平和が善、その間には明確な境があるというのは間違いである。平和という言葉の定義の曖昧さもそれを示しているように思う。

    だからこそ、紛争と平和が対立にあるのではなく、直線上にあると捉える。そして、ますます複雑化する国際情勢において、日本もNGOもどんな役割とボジションを担うか明らかにせねばならない。考えはまとまらないが、改めて別の機会に読み直そう。

  • 紛争、戦争等暴力が存在するということに関して、あまりに理想論に傾いた非暴力の論理を振りかざしがちな日本のマスコミ、教育(の一部)への違和感を、実体験に基づきすっきりと表現してくれる作品。
    一方で、そのカウンターパートとしての政治のあり方、説明についても、あまりにその場しのぎの状況についても、苦言を呈している。
    この状況にあっては「憲法を現実に近づける作業にどこまで意味があるのか」と筆者は考える。
    「現在の政治状況、日本の外交能力、大本営化したジャーナリズムをはじめ日本全体としての『軍の平和利用能力』を観た場合、憲法特に第九条には、愚かな政治判断へのブレーキの機能を期待するしかないのではないか。
    日本の浮遊世論が改憲に向いている時だから、敢えて言う。
    現在の日本国憲法の前文と第九条は、一句一文たりとも変えてはならない。」
    と結論付けている。
    今の能力ではそう、としても、その能力を高めるための議論を深め、より適切な状況を作り出すことは、私は、根っこから暴力を締め出すために重要なことだとも思う。

  • p.62
     しかし、「だから目に見える国際人道支援の足がかりとして、まず後方支援の派遣を」という日本での議論は非常に軽率である。そもそも、後方支援部隊とは、地元社会への福祉が目的で派遣されるものではない。あくまで、戦闘部隊への支援が原則である。道路や橋の補修作業を実施しても、それらはあくまで戦闘部隊の戦略上必要なもの、つまり戦車や歩兵輸送車両等の通行に必要なものが主体で、それ以外のサービスはすべて”片手間”と見なすべきものなのである。医療部隊においても、しかりである。
    (中略)
     戦闘部隊への支援が原則だから、六百人規模の工兵隊員とあまりある建設重機を、常時使用するしないにかかわらず、常駐させておくことを正当化できるのである。援助だけが目的だったら、こんなに維持費のかかるオペレーションはまったくの非常識であり、援助事業として業者に発注したほうがはるかに安上がりである。であるから、”片手間”を目的として後方支援部隊を派兵することはまったくの論外であり、日本の自衛隊派遣の議論に置いて人道援助が言い訳として使われるのであれば、それは滑稽としかいいようがない。

    p.215
     本来、国際援助の世界では、金を出す者が一番偉いのだ。
     それも、「お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない」という姿勢を貫く時、金を出す者が一番強いのだ。
     しかし、日本はこれをやらなかった。「血を流さない」ことの引け目を、ことさら国内だけで喧伝し、自衛隊を派遣する口実に使ってきた。
     ここに、純粋な国際貢献とは別の政治的意図が見え隠れするのを感じるのだ。
     右傾化。
     つまり民族の自尊心を、国外に対する武力行使、もしくは武力誇示で満足させようという動きが日本にあるとしたら、そして、日本の軍備を紛争当事国の庶民の安善以外の目的に使用する可能性があるとしたら、僕は愛国者として体を張ってそれを阻止したいと思っている。

  • 簡単に正義とか平和とか言えなくなる本

  • この本で印象深いのは、武装解除の実際の経験による生々しさと、筆者の生い立ちとその生き方の力強さだ。
    僕自身は政治には興味が無い。というか、どちらかというと苦手故に避けてきたとも言える。この本を手にしたのもたまたまである。しかし、感銘を受けた。平和ボケなどと言われるが、自分自身まさにそこに陥っている。今まで何度命をかけない上辺だけの命懸けの約束をしただろうか。本当に恥ずかしい。
    筆者の生い立ちや、都度の決断、そしてその後のキャリアは自分には全く想像出来ないものだ。そういう生き方もあるのだと思った。語り口はとても整然としているが、穏やかではきっと無かったはずだ。しかし、何度も、何度も極限に置かれたことで、胆が座るのだろう。見習いたい。
    平和のありがたみを思い知り、人生もっと冒険してもいいんだと考えを変えさせた一冊である。

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著者プロフィール

1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。2000年3月より、国連東ティモール暫定行政機構上級民政官として、現地コバリマ県の知事を務める。2001年6月より、国連シエラレオネ派遺団の武装解除部長。2003年2月からは、日本政府特別顧問として、アフガニスタンでの武装解除を担当。東京外国語大学教授。プロのジャズトランペッターとしても活動中。著書に『武装解除 紛争屋が見た世界』、『本当の戦争の話をしよう』『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(共著)などがある。

「2019年 『リベラルと元レンジャーの真「護憲」論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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