サバがトロより高くなる日

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498044

感想・レビュー・書評

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  • 「私たちはひょっとしたら、将来世代の分まで、魚を捕ってしまっているのではないだろうか」(P6)
    「過去五十年間で、タラやマグロ、カジキ、ヒラメなど主要な大型の魚の資源量が九〇%以上、減っている」(P14)
    「現在、世界で最も魚をたくさん生産しているのは中国だ。養殖を含めた生産量は五千万トン近くに達している。これは何と全体の三分の一以上を占めており、二位のペルーの約一千万トンを大きく引き離している」(P19)
    「漁船の数は増える一方なのだが、捕れる魚の数は減っている」「どんどん少なくなる魚を、どんどん多くなる世界の漁師が先を争って捕ろうとしている」(P19)
    「中国が国連に漁獲量のデータを毎年過大に報告していた疑いが強く、安定していると考えられていた世界の漁獲量が実は一九八八年から減少傾向にある」(P21-)
    「たとえ漁獲量が上がっていたとしても、捕れる魚の種類が、どんどん小さな魚、つまり食物連鎖の下部にある魚に移っていっている」(P26)
    「日本は世界で捕れるマグロのおよそ三分の一、刺身用マグロにいたってはその八割以上を消費している」「この「マグロビジネス」が世界の海と漁業を大きく変えてしまった」(P35)
    「ある地域で魚が捕れなくなると、漁船は別の漁場に移動、そこでも魚がいなくなるまで捕り尽くし、次の漁場に向かう」(P53)
    「便宜置籍船と呼ばれる漁船による国際規制逃れのマグロ漁の問題」(P58)
    「枠の設定を念頭に置いて、自国の既得権益を確保するために、年間の漁獲量を水増しして報告していた疑いが強い。ところが、九八年に枠が設定された途端に、これらの国の漁獲量は急激に減少。今度は、枠を超えて捕った分をごまかすために、過小に報告している疑いが持たれている」(P66)
    「ミナミマグロと大西洋西部のクロマグロを」「「絶滅の危機が差し迫っている種」にリストアップ」「ビンチョウマグロとメバチマグロも、一部の個体群が絶滅危惧種に指定」(P67)
    (日本で)「シラスウナギの漁獲量はこの三十五年間に五分の一以下に、成魚の生産量も三分の一以下に減っている」(P76)
    「ヨーロッパウナギの漁獲量が、過去五十年ほどの間に百分の一近くまで減少したとみられることが、オランダ政府の調査で分かった」(P76)
    「マサバ太平洋系群資源回復計画」「サバの稚魚を大量に一網打尽にしてしまうことが多い大型や中型のの巻き網漁業を適当な間を置いて休漁させることで、資源回復を目指そうとの内容」「大衆魚と呼ばれ、身近な魚の代表だったマサバの資源を、こんなにまでして保護しなければならないのかと受け止めた漁業者も少なくなかった」(P82-)
    「不漁が続いたため近年、サバの価格は値上がり気味である。そこに目を付けて参入してきたのがノルウェーの漁業者だ。もちろん日本の商社が背景にいる。品質が落ちやすいサバを瞬時に冷凍し、温度管理などをしながら日本に持ってきても儲けが出るくらいサバは高価なものになったとも言える」(P83)
    「実を言えば、漁獲量の増加はタラが豊富なためではなく、近代装備のトロール船団が残り少ない魚群を確実に探り当てて効率的に捕獲する結果である」「そして、ついにカナダ政府も現実を直視しなければならない時が来た」「タラ資源の回復のために、ほとんどの漁場で、タラを禁漁にするという措置を決定」(P90-)
    「禁漁によって陸に上がることを余儀なくされた漁民の数は約三万人、加工工場などの関連業界まで含めると四万二千人以上が職を失った。彼らは政府からの補償金を受け取り、毎日、海を眺めて過ごす日々が続いたという」(P91)
    「スケトウダラの日本人にとっての重要性が飛躍的に上昇したのは、一九六〇年代に」「大型の漁船の船上で、魚の身を加工、冷凍する技術を開発したためだ。大量に捕れるスケトウダラの白身が練り物に利用できるようになったことで、くせのないスケトウダラの白身を使った蒲鉾やちくわなどの価格は大幅に低下した」(P95)
    「日本人が一番大量に食べているシーフードは」「金額に換算するとマグロが一番だ」「受領で日本人が最もたくさん消費しているのは、ちょっと意外なことにイカである」「この十年以上にわたってイカはトップの座をほかのシーフードに譲ったことがない」(P99)
    (マツイカ)「一九八七年には二十五万トン以上あった日本の漁獲量も、〇四年は一トンだけだった」「イカの寿命は一年なので資源量は環境変動の影響を受けやすい。このため、資源の減少を乱獲だけが原因だと決めつける訳にはいかないが」(P103)
    「日本やアメリカに輸入される銀ムツのかなりの部分が、不正なものであるか、適切な資源管理なしに漁獲されたものであるのは明らかだ」「途上国の漁船が、魚が高値で売れる先進国のグルメ市場をあてにして大量の魚を捕って売る、という構図が浮かび上がってくる」(P114)
    「人工フカヒレには二種類あって、一つは本物のフカヒレを生産する時に出たカスのヒレを寄せ集めてゼラチンを使って成形したもの」「もう一つは、海藻から取れるアルギン酸という物質に注目した人工的なフカヒレだ」(P120)
    「アワビの減少は乱獲に加えて、生息地の破壊、それもアワビの餌場になる漁場が、世界各地で破壊されたことが主な要因」「養殖場の漁網の汚染防止剤や船底塗料に使われ、地球規模での海洋汚染が問題になった有機スズ化合物が、アワビの養殖活動に悪影響を与えることも分かってきた」(P147)
    (シロアワビ)「乱獲によって三十年間で九十九・九%以上が減少」(P148)
    「漁獲量が減る一方で、アワビの需要は、中国の急速な経済成長などを背景に増加傾向にある」「イセエビとトップを争う日本で最も高価なシーフードの一つになっている」(P149)
    「漁師に魚を捕るなということほど難しいことはない」(P150)
    「漁師には、ほかの漁師が資源に手を付ける前に、出来る限り多くの魚を捕ろうとの意識が働く。その漁師が捕らなかったら、誰か別の人間がその分を捕ってしまうからだ」「これは専門家の間では「コモンズの悲劇」として知られている問題だ」(P151)
    「地域の漁業管理期間を作って、漁獲枠を決め、各国に配分するというのが、現在採用されている最も一般的な方策なのだが、これがきちんと機能していない」「魚を捕り放題のフリーライダーの方が、安く魚をたくさん売れるということも往々にして起こるので、正直者が損をすることになる。そうなったら、どこの国が約束を守ろうとするだろうか」「もう一つの問題は、新規加盟国の漁獲枠の問題だ」(P152-)
    「ミナミマグロのおかげでポートリンカーンの町はかなり潤ってきている。また、マグロ関連の雇用者数はポートリンカーンの人口の約十一%を占め、人口も増加傾向にあって、基幹的な男性の労働力や後継ぎも確保されている、と良いことずくめだ」「カキやアワビ、ヒラマサなど他の畜養事業も盛んになりつつある」(P162)
    「赤い色を付けるためにサクラエビのようなエビを餌に混ぜることもあるという。あまり大量にイワシなどを与えると魚肉が生臭くなってしまうので、与える餌の漁や出荷時期と餌の加減などに業者は工夫を凝らしているらしい」(P164)
    「天然の本マグロとして出していたネタが、実は畜養マグロだった」「指摘がお客さんからあったのが発覚のきっかけ」「よほど舌の肥えたお客さんだったに違いない」(P170)
    「現在の日本のマグロマーケットは明らかに供給過剰である。にもかかわらず、海外では「一本のマグロが二千万円で売れた!」というトロ神話がいまだに語られ、日本の市場を目指してマグロが押し寄せるという状況に拍車をかけている」(P174)
    「面白いことに、これは死んだ魚にしか当てはまらない。生きたまま大量に巻き網で漁獲し、これを船の間で売買したり、畜養場の間で移動させたりしても、ICCATの国際取引統計には現れてこない。これが海賊マグロにとっての大きな抜け穴になっている」(P180)
    「リストに載った畜養場以外からのマグロの輸入を禁止」「資源管理上の問題がないことを水産庁が確認した書面がない場合には、畜養マグロを輸入できないようにもなった」(P187)
    「これほどまでに世界各地でさまざまな問題を引きおこしているマグロを毎日、大量に食べているということを、日本人が実際にどれだけ知っているだろうか」「「おいしくて安いから」といって、いつまでも日本人が、資源管理や環境保全の意識を持たないまま、畜養マグロを食べ続けていたら、日本の商社はもちろん、一般の消費者も世界からの厳しい目にさらされることになる」(P187)
    「三十八万ヘクタールのタイのマングローブ林のうち、二万五千三百ヘクタールもがエビ養殖地に転換」「養殖に大量の有機物や抗生物質などが使われるために水質汚染が深刻化しているといったエビ養殖の問題点を指摘した」(P195)
    「先進国の消費者は、途上国でのシーフード生産の現状に、もっと関心を持つべきだ」(P197)
    「スマトラ沖地震によって引きおこされた大津波で壊滅的な打撃を受けたインド洋沿岸にもエビの養殖池は少なくなかった」「自然のマングローブ林が残っていた場所は、マングローブが伐採された地域に比べて、津波の被害は少なかったという」(P197)
    「中国産に代わって九〇年代後半から急増したのが北朝鮮のアサリ」「実は、輸入モノのアサリが、国産のアサリに化ける、あるいはロンダリングされる場所が、国内には多数あるのだ」(P206)
    「宮城県産とされたカキの一部に韓国産のカキが混ざっていたことが判明」「日本でのシェアは四〇%になっているにもかかわらず、店頭で韓国産の表示が見られないとの指摘が関係者の間には早くからあった」(P208)
    「大手商社伊藤忠の一〇〇%子会社による、大規模なウナギの産地偽装が発覚」「台湾産ウナギを約一年間にわたって「鹿児島産」と表示・包装して業務用に販売」「この会社は、国内のウナギの蒲焼きシェア最大を誇り」(P211)
    「食の安全性への関心が高まる中、トレーサビリティの確立は、シーフードの分野でも急務である」(P213)
    「市場には高級魚の代用品と呼べるような魚が非常に多く出回っている」「知っていて食べるのなら問題はないのだが、実際は、そうとは知らずに遠いアフリカの魚や深海の魚を食べさせられているケースも結構あるというのが実状だ」(P213)
    「給食やファミリーレストラン、ファーストフード店で「白身魚」やフィッシュフライとして出される魚の多くがナイルパーチだ。ナイルパーチが、遠いアフリカの湖の環境や地域の人々の暮らしに大きな影響を与えていることなどまったく知らないままに、私たちはそれを大量に口にしている」(P223)
    「「ヒラメの縁側」の代用品として、カラスガレイが使われる」「何せカラスガレイは体が大きいので一匹から「縁側」が二百グラム以上取れるケースも珍しくない」(P227)
    「ノズルの先からぽたぽたとたらして作るのが人工イクラ」「タンパク質は熱を加えると白く変色するので、人工イクラと天然イクラを見分けるには、お湯に入れてみるといい」(P239)
    「鯨肉として売られている製品の中に、かなり割合で「イルカ」の肉が含まれており、中には高濃度の水銀を含むものもあった」「傑作なのは「鯨肉」の中に「馬肉」が入っていた、という結果だ」(P243)
    「漁船の寿命は長く、先進国で使われなくなった効率の悪い船が発展途上国で再利用されたりして、今でも燃費の悪い漁船が多く動いている」(P253)
    「ノルウェーで捕って冷凍され、長距離を運ばれてきた鯖に関連する二酸化炭素の量は、近海で捕ったサバに比べて圧倒的に多くなることは容易に想像できるだろう」(P254)
    「石油や石炭を使いたいだけ使い、海から捕れるだけ魚を捕るということがいつまでも続けられると考えるのは間違い」「漁業資源は生息地の破壊や地球温暖化の影響などもあって、減少の一途をたどるだろう」(P255)
    「保護区を設定するとその中だけでなく、保護区の外でも徐々に魚の数が増えていき、漁業者にとっても利益をもたらした」「観光業など漁業以外の活動による収入の道を得ることを可能にする」(P257)
    「日本にも、禁漁区や禁漁期間を厳しく設定することで、だめになった漁業資源を回復させた例がある。秋田県名産の魚、ハタハタがそれだ」「一九七〇年代前半には年間一万から二万トンもの水揚げがあったのだが」「一九九一年にはわずか七十一トンにまで落ち込んだ」「二〇〇一年には一九八三年以来、初めて漁獲量が千トンを超えた」(P257)
    「もう一つ、興味深い取り組みに「漁獲枠取引」という発想がある」「アイスランドなどで行われて資源の回復に一定の効果をあげている」(P260)
    「一定の大きさ以上の魚だけを捕るという現在の管理方式は間違いの可能性が高く、見直しが必要だ」(P265)

  • 乱獲や地球環境の変化で漁獲量が激減してるのは知ってましたが、まさかこんなに深刻な問題となっているとは想像を越えていました。
    しかも、養殖に伴う環境破壊や低開発地からの搾取、便宜置籍船など様々な問題が山積している漁業資源ですが、ただ単なる批判に終始するのではなく、消費者として行動すべき点についても触れていて、とっても共感しました。

  • [ 内容 ]
    日本は世界一の魚消費国。
    しかし生産量(漁獲+養殖)ではすでに世界第6位まで落ちている。
    乱獲が進み、養殖も環境破壊など問題山積。
    私たちはいつまで魚を食べ続けることができるのか。
    身近な話題でありながら、知られてこなかった現実を明らかにする。

    [ 目次 ]
    第1章 乱獲の実態(海から魚がいなくなる? マグロ ほか)
    第2章 養殖は漁業を救えるか(養殖の可能性と問題 オーストラリアでのマグロ畜養の成功 ほか)
    第3章 不当表示と代用品(貝の不当表示は当たり前? ウナギの偽装も多発 ほか)
    第4章 漁業の明日(持続可能な漁業をどうやって実現するか 地球温暖化が脅威に ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 題名に目を引かれて読んでみたが、魚介類の資源量が資料的にはどうだこうだ、こういっている人がいるなど、資料の解説を延々と聞かされているような感覚であった。

  • 070704b

  • 分類=自然・海・魚介類・水産業・食生活・人間。05年8月。

  • 漁業資源の食いつぶし・・・地球の滅亡へのカウントダウン

  • 魚好きは読んでおけ。魚好きじゃない人は肉でも食っとけ。

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