畑村式「わかる」技術 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498099

作品紹介・あらすじ

なぜ「わからない」のか どうすれば「わかる」のか
『失敗学』『直観でわかる数学』の著者による まったく新しい知的生産の技術

なぜ授業の説明がわかりにくいのか
私たちが食べ物を食べたときに「おいしい」と感じるときの一要素として「うま味」の存在があります。和食のベースに使われるだし汁の素材といえばまず思い浮かぶのが昆布やかつお節でしょうが、昆布とかつお節にもうま味成分が豊富に含まれています。(中略)現在では昆布のうま味成分がグルタミン酸ナトリウム、かつお節のうま味成分がイノシン酸ナトリウムであることがわかっています。それでは、「うま味って何ですか?」と訊かれたとき、あなたならどのような説明をしますか?「だし汁などに含まれる、人がおいしいと感じるもの」といった説明をする人もいるでしょうし、「グルタミン酸やイノシン酸を適度に人の好みに合わせて混ぜたもの」といった説明をする人もいるかもしれません。もちろん後者のような説明でも間違いではなく、「正しい」ことです。しかし、グルタミン酸やイノシン酸という言葉にふだん馴染みのない人にとっては、そんな説明を受けても、うま味についてわかるようになるはずはないでしょう。私にはこの説明が、数学の授業の説明にそっくりに聞こえます。――<本書より>

感想・レビュー・書評

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  • ◯「わかる」とは事象の要素と構造が頭の中のテンプレートと一致すること。
    ◯頭の中のテンプレートを増やすためには、知識経験を増やすだけでなく、課題だと思うことを要素に分けて構造化する日頃のトレーニングが必要。
    ◯目の前の課題だけでなく、その上に共通する問題を意識しつつ、「自分が解決すべき課題は何か」常に考える。

  • 第1章 「わかる」とは何か
     1.「わかる」とはどういうことか
     2.『直観でわかる数学』を書いた理由
     3.学校の教科書や授業はなぜわかりにくいのか
     4.「直観」と「直感」のちがいを考える
     5.「わかりやすいこと」の落とし穴
     6.暗記で、できること、できないこと
    第2章 自分の活動の中に「わかる」を取り込む
     1.まず身につけておくべきもの
     2.「わからない」」けどつくりだす
     3.自分でテンプレートをつくる
    第3章 「わかる」の積極的活用
     1.「面白い話」をする人は何がどうちがうのか
     2.絵を描くことの意味
     3.「現地・現物・現人」が、わかるための基本
     4.「わかる」ために記録をつける

  • 名著
    私自身、研究をしている中で、自分の考えを相手に伝えることを不得手としていた。しかし、本書を通して、その原因が自分が“直感”で考えている“偽ベテラン”なためだとわかった。
    加えて、自分のすべき改善策を知り、非常に視野が拓けた。

  • 頭の再整理に良い

  • 私の人生を変えた本の中の一冊です。大学受験予備校に通っていた頃に出会ったと記憶しています。
    私はこの本を通して「勉強の面白さ」に目覚めました。予備校の授業が面白かったというのも確かにあるかもしれません。ただ、それだけでなくそもそも「わかる」とはどういうことか、その本質的なところを考え、意識するキッカケをこの本から頂いたからこそ、これまで楽しくなかった勉強が楽しくなったし、志望校合格という結果が出せたと今振り返れば思います。「勉強」の本質は「わからなかったものをわかるようにする」ですからね。
    そんな思い入れのある一冊。本日読了です。

    今読むと、「面白い話」をする人は何がどうちがうのか、という話が印象に残りましたね。
    話す相手のことをよく観察して、「立体的に」話をする。なかなか私自身出来ていないことです。相手に何を話せば興味関心を引いてもらえるかに配慮するということがあるかないかだけでも、自分が何を伝えたいかの受け取りやすさが随分違いますね。確かにそうです。また、相手の持つ理解のタネと自分の話がどうつながるかを意識することは、そのまま話し手が聞き手を尊重する態度につながっていくと思いました。自分の話を分かってくれる要素を相手はきちんと持っていると思えれば、自分の話すことにちゃんと価値があると、そういう自信が持てるからです。

    何度読んでも学ぶところが多いです。これからも私なりに「わかる」ということを考えていきたいと思います。

  • 「失敗学のすすめ」で有名な畑村先生の本なので手にとりました。
    内容は久しぶりの★5。分かることの仕組みについて実に分かりやすい文章で説明されております。
    特に①要素を構造化すること②自分のテンプレートと合わせること③自身で納得することが
    強く残りました。装置やソフトウェアの仕様書など読む機会が多いので、ここら辺を気にしながら
    分かる技術を深めていきたいなと。

    <<Memo>>
    ●分かる技術
    ・事象は要素が絡み合う形で構造をつくりだしている
    ・分かることとは以下3つ
     ①要素の一致=頭の中にある「りんごはこういうものだ」という要素テンプレートと一致してわかる
     ②構造の一致=頭の中にある「ジャングルジムはこういうものだ」という構造テンプレートと一致してわかる
     ③新たなテンプレートの構築=初めてみる事象に対し、自分が持っているテンプレートから新しいテンプレートを構築してわかる
    ・体感が重要。自分の体を動かして納得したときほどきちんと理解できる。
     さらに数字の裏づけがあると一層本人の頭の中にインプットされる
     ☆以前、目を瞑って外出して他人のサポートの重要性を示す教育があったがこれにあてはまる

    ●分かることの重要性
    ・現代はこうすればよいというはっきりした答えが見つからない時代
     →現代社会は事象を観察して何が問題なのか決める課題設定が求められる。
    ・たくさん経験をつんでも論理性を考えないと判断が狂う。
    ・直観とは飛躍思考。
     過去にさんざん考えて答え合わせをして経験しているため結論を飛躍して考えることができる

    ●分かることの阻害要因
    ・数学は嫌いだからという理由で文系に進む人がたくさんいる。
     →数学が嫌いなのはいきなり本質の部分「これが微分です」といわれても、
      生活と全く縁の無い別の世界のものとしてしか見られないため。
    ・人は納得できないことがあると、そこから先のことが考えられなくなる
    ・狭い世界での真実にすぎないものは、どんな分野でも当てはまると考えるのは危険
    ・人は起こってほしくないことは考えない、思いたい話は簡単に信じる性質がある
     →詐欺師は相手が気にしているものを見極め、形式論理を使いながら相手を騙していく
    ・勘は根拠が意識されていない。刺激をうけて思い浮かんだもの。
     ☆でも勘のするどい人はヒーロー、論理性のある理屈屋は悪役のイメージなのは少年漫画弊害かも?
    ・受験を丸暗記で合格しても、それを応用できなくなって社会で苦労する。
     すでにある道ばかり歩いてきた人は誰かがあるいた道の上でしかものが考えられない
    ・マニュアルをおしえてから実物に当たらせるのは悪い教え方。
     本人が勉強したくなる情況に追い込まれて、自分から勉強したいと強く思うことが必要

    ●話の小ネタ
    ・百人一首やいろはかるたなど先人たちが積み重ねてきた文化の強み。
    ・4つの数字で10を作るのは楽しく遊んでいるうちに、数の性質が理解できるようになる
    ・カラスは4個以上の数は異変に気づかない(卵がなくなっても気づかない)
    ・面白い話をする人は話を通じて聞き手のテンプレートを豊かなものにしてゆける人
    ・絵をかくとき心がけるのは「伝えたい内容をどうやって強調するか」である
     ☆プレゼンにも応用できる。
    ・分かるためのメモは使える形にすることが重要。
     →使える形になっていないから失敗事例集はあまり使われない。
    ・普段からものごとをよく観察することが重要。
     対象の特徴に注目し、メリットやデメリットを整理しながら見る習慣があるため。

  • 2011/12/16読了。

    ものごとが「わかる」ということのプロセスを教えてくれる本。真新しい発見があったわけではないが、もっと「わかる」ということを意識して生活する必要は感じることができた。あるものごとをある程度正確に理解しているのか、それとも不完全な理解(分かったつもり)なのか、それをはっきりさせることで行動にメリハリをつけていければベター。

  • 「わかる」と言うことを構造的に捉え、どうすればわかったと言うことなのかが非常にわかりやすく書かれていた。

  • 論理的に書いてあるので、とても読みやすい。わかるということについての考察によって、理解すること、理解してもらうためにどうすればよいか、という思考が深まった。
    問いを自ら立てれる人は、未知な問題を理解することが得意であるが、そもそもわかろうとする意欲のない人は思考停止となるため、わかるはずもない。

  • わかるとは何か、ピンとくるとは何かについて理解できる。またわかる=理解する際の具体的な手法についても記載がある。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

「2022年 『やらかした時にどうするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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