解剖男 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498280

感想・レビュー・書評

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  • ああ、私のいた学科が批判されている…
    確かに形態学のつまらなさは本当に…
    うちの友人たちはことごとく苦手で再試行きだったからなぁ。

    貴重な動物の解剖姿が出てきます。
    気持ち悪い、と言うほどの画像は出てこないので
    安心して読みすすめて下さい。
    しかしこんなに物語るものを焼却処分なんて
    もったいない話ですよね…

  • 動物の死体(遺体)を解剖して研究している先生の書いた本。
    動物園好きが高じて、とうとうこんな本まで読んでしまった。「電車男」ならぬこの本の題名にも惹かれたりして。

    今まで動物園で動物が死んだら、その施設の獣医さんが解剖して死因を究明してそれでおしまい……と思っていた。しかしそこから先があったのだ。
    動物園で動物が死んだと聞くと遺体を引き取りに行くのだが、それがまた大仕事。1,500キロ以上もあるサイを運ぶのに使われるのは、クレーン車・フォークリフト。
    遺体を血だらけになって解剖し、筋肉のしくみ、内臓のつくり、骨格を調べる。そこからその動物がどのように動き、何を食べ、どのように生きていたかがわかる。果ては動物の祖先までわかってしまう。例えば、クジラとウシ・シカ・ブタの祖先が一緒だというから驚きだ。

    現在の解剖学の実情は決して明るいものではなく、どんどん衰退しているという。医学生・獣医学生の教育課程として存在しているだけで、ヒトや動物の遺体から謎を解き、新しい発見をするという流れはどんどん少なくなっている。しかし、それではいけないとこの先生は力説している。遺体の剥製も標本も未来の知的財産だと言っている。

    それにしても、私の動物園好きも、オタッキーな領域へ足を踏み入れてしまっているのかもしれない。

  • 「遺体科学」を標榜する解剖学者による、情熱と憤りの混ざった一冊。
    憤りはご尤もだと思うけど、正直説得は下手くそすぎてチラ裏とでも言うしか無い当該記述は割と不快。
    一方、面白くなって何を書くべきかよく分からなくなっているであろう居酒屋モードの情熱パートは面白い。
    新書だからそれでいいんだよと言われればそうなのかもしれないが、もうちょっと洗練できないものかな…w

  • すきなだけじゃないの!

  • きっとこの解剖学者さんは文章書くのが好きなんだろうと思う。文体が鍛えられていて、解剖ハードイルドといった趣がある。特に冒頭の、電車に乗っていても脳内で解剖シミュレーションする描写が良かった。

    本の内容としては、動物の体構造は「系統と適応」の二つを軸にして理解を進めるという基本的な考え方がよくわかった。この二つの観点から動物の体を解剖して読み解くと、ゾウがかつて海で生活していた可能性や、クジラ類の先祖はウシやシカの仲間だったかもしれないことがわかるなど、スリリングだと思った。

  • 解剖の世界を平易な言葉で書いてある。
    人体の話ではないが、興味をそそられる話ではある。
    大学が法人化された際に文化系学部が苦境に陥ったように、解剖学もまたさみしい状況らしい。
    借金と官僚支配の我が国では厳しいだろうが、金銭面以外では応援したい。

  • 《目次》
    第1章 時々刻々遺体あり
    第2章 遺体、未来を歩む
    第3章 硬い遺体 
    第4章 軟らかい遺体
    第5章 遺体科学のスタートライン
    《内容》
     学校図書館。解剖学が生物の進化の説明になったり、人類の歴史にも関わりがあるのだ、とわかった。一方どこの学会も私欲にまどわされされ易く、解剖学も風前の灯火らしい。

  • 古本で購入。

    「遺体科学」の重要性を唱える著者の、知の宝庫たる動物“遺体”への挑戦と、解剖によって解き明かされた真実を紹介する本。
    骨から謎を解く「硬い遺体」、臓器や筋肉から謎を解く「軟らかい遺体」の2章を中心に、著者の経験が語られていく。

    個人的におもしろいと思ったのは、第2章「遺体、未来を歩む」。
    ハチ公など有名動物の“派手な”遺体だけが大切なのではない、オリイジネズミなどのマイナーで地味な遺体も社会の知の成熟にとって重要なのだ、という主張のための章だ。

    興味深いのは、昭和30年代に一世を風靡したライオン♀とヒョウ♂の種間雑種「レオポン」についての著者の見方。
    現在では愛護思想から批判され、意義のないこととされる種間雑種であるが、著者は
    「当時のヒトと動物の関係は、まったく様相を異にしていた」
    と言う。当時は
    「動物園はいかに“珍獣”を大衆に見せるかが、求められる責任だった」
    のであり、
    「新しい育種個体を生み出すことが、古典遺伝学の“遺伝教材”として科学教育的にも評価された時代だった」
    のだとする。
    「動物観を支えた時代背景」
    というのは、忘れてはいけないキーワードだろう。
    現在の考え方で評価・批判するだけでなく、「なぜそれがなされたのか」「なぜそうだったのか」を考える必要がある。

    掲載されている遺体標本と著者の写真はインパクト大。喜びに溢れる、というのを通り越してほとんど狂気を感じさせる。
    妙なタイトル、一風変わった文体、狂的な表情…色モノっぽさが漂う本だけど、科学にかける情熱は本物。

  •  動物の死体,もとい「遺体」の観察の仕方と,解剖学の楽しさについて熱意溢れる。著者の本は二冊目だが,解剖への愛が高じててかなりエキセントリック。冒頭から,バイカルアザラシの眼球の解剖を通勤電車内でイメトレする話w
     筆致は前のめりでも,内容は確か。さまざまな哺乳類の解剖雑学がちりばめられていて興味が尽きない。骨・歯という「硬い遺体」と,その他の「軟らかい遺体」に大きく分けて対照的に論じられる。共通する観点は,「適応」と「系統」。
     硬軟ともに組織の形状は「生きるための回答=適応」と「歴史からの制約=系統」を併せ持つ。遺体から得られる情報が,多くの知見をもたらしてくれる。その解剖学の現状は,あまり恵まれたものではない。未来の「遺体科学」へつなげるために,なにをすべきか,著者の視線はそこへも向いている。

  •  解剖を通じて骨についていろいろと明らかになってきたことを説明している。すぐお金に結び付かない解剖が経済界や政府から経費が与えられないことについて、うらみつらみをしっかりと述べている。

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著者プロフィール

東京大学総合研究博物館教授

「2019年 『アニマルサイエンス3 イヌの動物学 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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