北朝鮮に潜入せよ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498365

作品紹介・あらすじ

歴史から消された秘密工作員たちの悲劇!スカウト、訓練から拉致、爆破まで韓国vs.北朝鮮の暗闘を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 2006年刊。
    著者は共同通信社ソウル特派員。


     朝鮮半島。休戦協定のみが締結されたそこは、未だ戦時下にある。これを痛感させるのは北朝鮮による韓国人拉致その他の工作活動だが、これは北から南に向けて、だけではなく、朝鮮戦争以降、韓国側も工作員(北派工作員)を北に送り、様々な工作に従事させてきている。これは殆ど知られていないが、本書は、生還率が10%に満たぬ危険な任務を遂行し、また生還後も、約束された報酬が未払な上、韓国公安警察の監視の下で辛酸を舐める生活をしてきた元工作員へのインタビューを軸に、その隠れた実態を明らかにする書である。


     とはいえ、そんな事実があったのね、が認知できれば、彼らの体験の厳しさは兎も角、叙述内容はさもありなん。意外性は多くはない。

     一方、朝鮮戦争の傷跡が生々しく残置し、北・共産主義体制への憎悪がストレートに表れた50年代工作員は別として(本気で北の解放を希求していた)、60年代以降、分断の固定化と南の軍事独裁政権が長期化するにつれ、貧困に喘ぐ若年層を、工作員と知らさずに金と愛国心で釣り上げて、工作員に仕立ててきた模様には苦い感情を禁じえない。
     殊に印象的なのは、北の工作員による青瓦台(韓国大統領府)襲撃事件の報復として計画された金日成暗殺計画。 そして、この計画から生み出た実尾島事件の内実である。
     ここで金日成暗殺計画が朴正熙の個人的憤激に由来する上、国際情勢の変化(ニクソンショック等)によって計画は中止となり、衣食住にも事欠く中で訓練をしていた部隊は益々困窮の度を深め、終に暴発した。これを切り捨て、いや国家組織・独裁者の傲慢と暴虐と呼ばずして何と呼べるだろう。


     ちなみに、かかる過去政権の悪徳を暴くべく動いたのは盧武鉉政権。本書もそこで出てくる韓国内の報道・情報に依拠しているはずだ。
     この点で、全く違うベクトルの政権間での交代がいかなる社会的意味を持ち、何が暴かれるかを感じ取れる書とも言えそう。

  •  韓国の非公然の対北朝鮮軍事工作員「北派工作員」の全貌に迫ったノンフィクション。甘言をもって勧誘され、過酷な訓練を経て死地へ「特攻」させられ、稀に生還しても休戦協定違反の非公然の存在故に、国家から切り捨てられた悲劇。本書が描く国家と諜報の歪な関係は、韓国・朝鮮の特殊の問題ではなく、どの世界でも共通の普遍的問題であろう。

  • 南から北へ、北から南へ、同じ祖国でありながら敵対する国家となり、
    生きて帰れることのない任務へつく。

    「特殊工作員」と呼ばれた彼らは、奇跡的に生きて帰ってきた今、
    なにを思い、なにを支えに生きているのか?

    韓国から「北派工作員」として活動した、彼に取材しその全貌をあぶりだす。

  • 韓国の対北工作の話。シルミドも出てきます。

  • 映画「シルミド」を観たあとに読んだ。
    冷戦とはいえ、朝鮮戦争とはあくまで「休戦協定」が結ばれているだけなのか…と思い知らされる一冊。

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著者プロフィール

1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信に入社。社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、2006年に退社しフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ―徳田虎雄 不随の病院王―』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査―暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件―』『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)、『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)などがある。

「2015年 『ルポ 国家権力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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