若者殺しの時代 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498372

作品紹介・あらすじ

クリスマスが恋人たちのものになったのは1983年からだ。そしてそれは同時に、若者から金をまきあげようと、日本の社会が動きだす時期でもある。「若者」というカテゴリーを社会が認め、そこに資本を投じ、その資本を回収するために「若者はこうすべきだ」という情報を流し、若い人の行動を誘導しはじめる時期なのである。若い人たちにとって、大きな曲がり角が1983年にあった-80年代に謎あり!ずんずん調べてつきとめた。

感想・レビュー・書評

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  • 現代の若者の話かと思ったら、80年代、90年代の若者史だった。
    さっくり読めるが、期待はずれだった。これも結局「昔は良かった」のひとつじゃないかなぁ・・・。
    昔の若者が大人にならないから、次の世代の若者が若者になりきれない、と著者より上の世代を批判していたけれど、あなたの世代も大人になってくれないと困るよ、と思わず突っ込みながら読んだ。

  • どうして今の若者に元気がないのか? 若者が未来に希望を持てないのは何故か? そういった疑問に答えつつ、上の世代からの一方的な偏見に統計とユーモアで切り替えした奇作です。

  • 堀井憲一郎は名文家だとわたしは思っています。『週刊文春』に連載中の「ホリイのずんずん調査」の文章は,一読するとギミックが多いように見えますが,あのギミックに見えるフレーズは,音楽用語でいうところの裏打ちのタイミングで入ってきます。だれも書かないようなフレーズを多用しているから冗長かというと,とんでもない。彼の文章は,すこしもだらしないところがありません。彼はTVに出演することがあるので,彼の文章に彼が喋る肉声を聞きとれると主張するひとがいるかもしれません。しかし,残念ながら,それはまちがいだとわたしは思います。喋るとおりに書けるひと,というのを,わたしは見たことがありません。たぶん,ありえないのでしょう。ありえるとわたしが思うのは,書くとおりに喋れるひとです。たぶん堀井憲一郎はそういうひとなのだろうとわたしは思っています。もっとも,彼が名文家であることは,いまさらわたしが言うまでもないような気がします。「ホリイのずんずん調査」では,物の数を数えるという大義名分が掲げられていますけど,多くの読者は,数えられた数を知りたくて読んでいるわけではないでしょう。

    さて,堀井憲一郎が講談社現代新書に書くというのは,場違いな観があります。しかし,名文家の新刊が出るというのは,言ってみればモーツァルトの新曲が出るようなものです。一も二もありません。

    堀井憲一郎は本書で“裏打ち”の文体を封印しています。彼は,1983年を境にして日本社会のなにかが変わったということを検証しています。中山美穂が主演した映画『波の数だけ抱きしめて』と同じ時代の同じような事柄を扱っていて,同じように切ない本です。『波の数だけ抱きしめて』は,1982 年の湘南を舞台にしています。当時のアキバ系学生(=アマチュア無線愛好家)が,出力10mWのトランスミッターを大量に手作りして,ひと夏だけ合法的な違法ラジオ局を作ろうと言いだします。それを聞いたまつ毛のきれいな中山美穂が「素敵ね。。。」と言ったものだからさあたいへん,織田ちゃんが漁師をして資金作りに精を出します(おれだってそうするよ)。ところがDJが美人女子大生(中山美穂)であることを博報堂のナンパ社員(別所哲也)がかぎつけ,彼女を落とそうとして資金提供とタイ・アップを申しでます。「おれたちゃ,そんなんでやってんじゃねえよ!」と,この頃から怒っている織田ちゃん。「取りこまれるふりして,逆に利用すればいいじゃないか」と別所。アキバ系学生は,機材が揃えば文句ないので,博報堂の提案を受けいれました。合法的な違法ラジオ局の聴取エリアは,葉山から江ノ島まで広がることに。なのに中山美穂は,ある日突然姿を消します。残されていたのは,一本のオープンリール用テープ。そこにはTOTOの「Rosanna」が。。。

    泣けますけど,堀井憲一郎に関係ありませんでした。

    それにしても,「取りこまれるふりして,逆に利用すればいいじゃないか」というセリフが,ホイチョイ映画でよく出てきたものだと思います(脚本は一色伸幸)。そして,結局あのとき取りこまれただけだったじゃん,というのが堀井憲一郎の『若者殺しの時代』の趣旨のひとつになっています。 1983年を境にして,なにかがなにかに取りこまれました。それをひと言で表すことを,堀井憲一郎は賢明にも避けています。それをひと言で表すことは,取りこまれることだからです。

    本書は,すんでのところでアメリカ人作家デレク・ハートフィールドに捧げられかかっています(著者が「読んだことがない」というので撤回されていますが)。さすが名文家。本書は,わたしにとって今年の評論部門の第一位になると思います。

  • 『一杯のかけそば』に対する反応の違いを分析していたところがおもしろかった。

  • 週刊文春に長期連載の『ズンズン調査』をもとに時代の変化をさぐった本。/「’80年代の入り口は、可能性に満ち満ちまもなく豊かになるだろうと信じ…’89には十年前には想像できなかったほど贅沢に暮らしていた。欲望が僕たちを追い越してしまい、欲望の指し示す道を突き進むしかなかった」→若者に消費を勧める「恋愛至上主義」トレンディドラマ/クリスマスの外泊推進/TDL聖地化/ワープロでミステリは分厚くなるばかり/ヘアヌード。宮沢りえ’91菅野美穂’97/携帯電話で社会が覆われた。友達数の格差が鮮明に/新幹線のぞみ停車駅に’85新横浜、’06品川が加わる。東京の拡張

  • 2006年。80年代あたりの、若者たちが消費の奴隷化されてクリスマスやバレンタイン、いわゆるトレンディドラマに踊らされていく感じを書いている。曖昧模糊といえばまあそんな感じもするのだが、時代の雰囲気を語るとはこういうことではないのか。

    後半の予測みたいなものも、2021年の俺から見ると結構当たってると思う。最後のアドバイスについても、かなり正しいと思う。

  • 逃げろっていう表現は悪くない。

  • 私は、バブル期に大学生で、バブル崩壊直前に就職した。学生の頃、周囲の多くはDCブランドを着て、デートの費用は男性持ち。クリスマス前に恋人が居ない奴は焦りまくり、恋人がいる奴は、レストランやホテルの予約が取れるのだの取れないなどと騒いでいた。私には好きなれないことばかりで、居心地の悪い時代であった。そのような時代にしたのは、若者文化というのを作り出すことにより、消費を生み出し、若者からお金を巻き上げるためだったのだと、筆者は書いている(←私の理解)。私は納得した。若者は踊らされていただけなんですね。
    また、筆者は戦後の日本を作り上げた人達が、戦後は終わりました。よく頑張った。これから、次の時代を作るために下の世代に任せようという、戦後終焉の総括をせずに、ズルズルと来たために、閉塞した自体となっている。でも、もう限界で、かならず新たな時代にシフトすると言う。そして、それはどんな時代なのかは良く分からない。でも、内向きになって、日本文化に中止するのが良いかもといっている。
    全く切り口は違うが、神田昌典さんが、言っていることと結論は符合している。時代は否が応で変わっていくのというのは、確かなのだろう。

  • 我慢して最初の章を読んだが、ギブアップ。論旨のはっきりしないウダウダ話は勘弁。いったいどこが「若者殺しの時代」なのかわからずじまい。

  • 2006年刊行。若者(10~20代)をメインターゲットにした販促が亢進したのが1980年代にあるとみて、当時の実相をクリスマス戦線、テレビドラマ、サブカル、ディズニーランド等から解読し、現代と将来を素描する。世相分析としては違和感はないが、「若者であることが得な時代」ではなくなった、というのが若者殺しの意味なら、あまりにも陳腐。世代間格差の固定、老人優遇をいうのなら、前史との比較と80年代以降の高齢者と若者との比較がないと全く説得力はない。本書は80年代世相論に止まるものである。

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著者プロフィール

1958年生まれ。京都市出身。コラムニスト。
著書に『かつて誰も調べなかった100の謎 ホリイのずんずん調査』(文藝春秋)、『青い空、白い雲、しゅーっという落語』(双葉社)、『東京ディズニーリゾート便利帖 空前絶後の大調査!』(新潮社)、『ねじれの国、日本』(新潮新書)、『ディズニーから勝手に学んだ51の教訓』(新潮文庫)、『深夜食堂の勝手口』(小学館)、『いますぐ書け、の文章法』(ちくま新書)、『若者殺しの時代』『落語論』『落語の国からのぞいてみれば』『江戸の気分』『いつだって大変な時代』(以上、講談社現代新書)などがある。

「2013年 『桂米朝と上方落語の奇蹟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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