「大きなかぶ」はなぜ抜けた? (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498488

作品紹介・あらすじ

本書は、世界中の昔話や伝説など人々の間で伝承されてきた物語がいかに多様で面白さに満ちているかを知ってもらうために編まれたものである。たとえば、幼稚園や保育園で子どもに絵本を読む人々や、家庭であるいは地域社会で子どもに接する人々に読んでいただければうれしい。そして、子どもと接する職業であると否とにかかわらず、毎日食べる食事のように何気なく、気軽に、手にとって話題を摂取していただければなおうれしい。

感想・レビュー・書評

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  • Amazonで書名だけ見て買ってしまったのだが、「大きなかぶ」に対するアンサーブック的なものではなく、世界中に伝承されている民話について研究者たちが書き上げたものをまとめたものだった。「大きなかぶ」はその民話の中のひとつ。

    基本的に研究者による発表という感じで、学術論文とまでは言わなくても堅苦しい感じのものが多く、読み物としては今ひとつ。あまり馴染みのない物語が対象になっているものが多いことも影響しているかも知れないが、退屈な文章が多くいただけない。

    そんな中でも桃太郎を扱った「おばあさんはなぜ桃を食べたのか?」(内ヶ崎有里子)は面白かった。また、トリを務めている「絵本の声が聞こえますか?」(阿部紀子)は秀逸。

  • 世界の伝承・民話を保存しようという研究プロジェクトに参加する何人もの研究者が、専門分野から、ネタを出し、民話の面白さを紹介する本。
    「大きなかぶ」「空飛ぶ絨毯」「お菓子の家」「ももたろう」のように、日本でも有名なものもあれば、中央アジアやスラブ系の、初めて聞く話もある。
    様々な執筆者によるものなので、論文風の文章もあれば、軽いエッセイ風のものある。通読すれば、まとまりのない感じが否めないが、個人的にはスペインの「ピカロ」の話題や、昔の「ももたろう」のシナリオ(※)が面白かった。
    ※おばあさんが、川に流れてきた桃を食べたら、若返って妊娠し、産まれた子供が鬼退治するという話。

  • 本書の執筆に関わっているのは,文科省の「人文・社会科学振興プロジェクト研究事業」の40グループの中の一グループ「伝承の現場からの考察」に参加した8名である.

    ターゲットとなる民話は世界各地から日本のものまで幅広いため,興味を持てるものと持てないものがある.さらに各章の執筆者の実力と文章力の差も感じてしまう.平均すると星(★)2個半くらいかな.

  • 表題に惹かれて読んでみたが、なぜ大きなかぶが抜けたかの答えはなかった。「いろんな解釈ができるけど、子どものように作品の面白さを素直に感じられるといいよね」と、お茶を濁された感じ。あまりスッキリしなかった。
    しかし予想外に、「桃太郎の生まれ方の変化」は、面白かった。全国に広まった教科書・絵本に桃から生まれたと書かれていただけでなく、桃という果物が持つ役割の変化(薬・魔除→食用)も絡んでいたのではという推測は興味深い。
    グリム童話ヘンゼルとグレーテルの「なぜお菓子の家は森にあったか」という問いも面白い。お菓子の家・森・グリム兄弟の視点という3つのポイントからその問いの答えを推測していた。お菓子の家が、飢えに苦しんだ人たちの希望を象徴し、そのあり得ない存在が、古代ゲルマン人が崇拝した森=異界と結びついた。物語が編纂された当時のドイツの森が、開発が進んでいたことから、木々の生茂る森というグリム兄弟の希望が物語に反映されていたのではという考察も面白かった。

  • 第1章 ふしぎな力(大きな「かぶ」の六つの謎(ロシア)(齋藤君子、1944-、口承文芸学):なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか?(イラン)(竹原新、民俗学))
    第2章 妖精たちの棲む森(森にお菓子の家があるのはなぜか?(ドイツ)(大野寿子、口承文芸学);水辺の美女が愛される理由(東スラヴ)(塚崎今日子、ロシア文学);妖精がなぜ子どもを取り替えるのか?(イギリスなど)(美濃部京子、口承文芸学))
    第3章 世界の英雄たち(「草原の英雄」を生んだ両親は誰か?(ユーラシア)(坂井弘紀、口承文芸学);英雄らしくない英雄が人を惹きつける理由(インド)(長崎広子、インド哲学);“不完全な将軍”が雨乞いの神様になるまで(朝鮮)(真鍋祐子、社会学);ラテンの民衆はピカロ(悪者)がお好き(スペイン)(三原幸久、1932-、大阪市、スペイン文学))
    第4章 鬼退治のはなし―日本の英雄たち(おばあさんはなぜ桃を食べたのか?(内ヶ崎有里子、1959-、宇都宮市、日本文学);どうして桃太郎に出生地があるのか?(齊藤純、民俗学);「らいこうさま」はどこへ行った?(加藤康子、1954-、愛知県、日本文学))
    第5章 絵になったお話(毛糸絵になった洪水神話の謎(メキシコ)(山森靖人、文化人類学);絵本の声が聞こえますか?(阿部紀子、教育学))

    編者:小長谷有紀(1957-、豊中市、文化人類学)
    コラム:荻原眞子(民俗学)

  • 昔話に潜む世界の秘密。

    そういえば,なぜ「じゅうたん」が空を飛ぶのか。なぜねずみが加わったらかぶが抜けるのか。森の中のお菓子の家って何。昔話には色々と謎がある。そういうものだ,と思っていたけれど,民俗学や文化人類学の視点で見れば理由のあることなんだろう。シンデレラと落窪物語のように,違う地域で似たようなお話があるのとかも。

    語られる,つまり口伝されてきた物語の寿命は。口承文芸の絶滅は大きな問題。でも,保存するのと同時に,どのように変化(衰退? 発展?)するのかも記録していくものなのだと,あとがきを読んで考える。

  • 思っていたのとちょっと違うかったです。最初だけ読んでみたけど、童話を読む際に、こういう注釈って本当に必要なの?って気持ちが先に立ってしまい、読み続ける気になりませんでした。

  • 世界の民話が、こんなに面白いとは!
    文化や歴史的背景を知ることで、ますます面白くなる。
    そのことを教えてくれる本。
    表題となっている「大きなかぶ」の論考が一番面白い。
    専門家ってやっぱりすごい、と思わせてくれる。

    ただ、残念ながら、そういう楽しみを与えてくれる章ばかりでもない。
    自分の、つまり読者の側の問題なのかもしれないが・・・
    読み進んでいくうちに、テンション・ダウン。
    読み疲れたから? それとも知らない民話ばかりになっていくから?

  • 意外に真面目な内容で驚いた。
    物語の文化的な背景などが書かれてあるが、物によっては全く馴染みのない物もあった。
    じゅうたんが何故飛ぶのかと森にお菓子の家がある理由、水辺の美女と桃が食べられる訳辺りは雑談に使えるか。
    まあまあ面白かった。

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著者プロフィール

人間文化研究機構理事。京都大学文学部助手を経て、1987年より国立民族学博物館でモンゴル研究に従事。主な著書は『モンゴルの春――人類学スケッチ・ブック』(河出書房新社、1991年)、『モンゴル草原の生活世界』(朝日新聞社、1996年)、『モンゴルの二十世紀――社会主義を生きた人びとの証言』(中央公論新社、2004年)、『人類学者は草原に育つ――変貌するモンゴルとともに』(臨川書店、2014年)など。

「2014年 『現代モンゴルを知るための50章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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