「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498624

作品紹介・あらすじ

あなたの思いこみ、精神科医が治します。自分を取りもどす10講。

感想・レビュー・書評

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  • 尊敬している精神科医の泉谷閑示さんの本。
    日頃から人間を徹底的に見つめ、深く洞察されている結晶が、沢山書かれていた。
    特にまえがき、第二講、四講はハッとさせられた。

    第2項の、パブリックな言葉と内的な言葉について。個人的に、言葉に対するこだわりが割とある方なので、独自の意味を帯びさせてしまっているきらいがある。そんな内的な言葉を、時々そう親しくない人にも使ってしまうことがたまにある。ゆっくりと話して、その言葉について説明できるときは良いのだが、そううまくはいかないので、相手に誤解されたまま、ときには失礼にあたるまま会話を終えることになり、確かに内的な言葉を使う時や場所、相手を考えなければいけないなと反省した。
    そして、この2つの側面のある言葉の使い分けをうまくできなくなっているという指摘は、現代をとてもよく表してるなと思った。

    覚えておきたいことが多すぎる。でも、忘れてしまうので、備忘録として…



    まえがき
    人間の特性を理解し、その上で「自分で感じ、自分で考える」という基本に支えられた生き方を回復しなければいけない。
    正常と異常の境界線上にあるような視点や言葉が今の時代では失われている。
    鬱が治るとは、実際は、「あるべき悩みを悩むようになること」

    第二講
    言葉には、(内的言語:自分の内側を把握するのにも使われる)と(公共性を持つ言葉)の二つの側面がある。この2つの使い分けができない人が増えてきた。それは、自分と他者が違う内界を持ち、違う価値観で、言葉1つにも自分とは違う意味合いを載せているかもしれないということが想像できないから。
    この想像は、自分はこう感じるが、この子はどう感じるか?など、丁寧に観察し、擦り合わせが行われるなど、子育てにも役に立つ。

    第四講 
    『エミール』ルソーより
    子供につけさせなければならないただ一つの習慣は、どんな習慣にも染まないという習慣です

    お腹が空いていないのに、習慣で3度食事を取る、天候やホルモンなどにより体調は変わるのに、毎日同じ時間に起き寝るなどの習慣は、本来の体の声を聞いていない。

    自己形成のイメージ、
    あるべき自分になるように足りないところを身につける(粘土や石膏をくっつけていくイメージ)
    ではなく、
    本来の自分を削り出す(彫刻のイメージ)
    をすると良い。

    第5講
    心由来の深い感情の場合は、それを大切にし、頭由来(しかも心由来のように見せかけている)の場合は、それに振り回されないようにする必要がある。

    意識と無意識の間には、浅いところから怒・悲・喜・楽の順に感情の井戸があり、古い怒りから吐き出していかなければ、その先にある本当の楽は発せられない。

    三様の変化
    駱駝(従順さ、忍耐、努力、勤勉さ)
    →獅子(窮屈であることに気づき、怒りが爆発し、1人称の自分の誕生)
    →小児(全てあるがままに。創造的な遊びに没頭する)
    第六講
    角を矯めて、牛を殺す(少しの欠点を直そうとして、かえって全体をダメにしてしまう)

    欲望を大欲(より深く本質的な魂の満足に向かうこと)に膨らませていくことにより愛になる。

    第七講
    絶望とは、残していた一抹の期待をきちんと捨てることである。しっかり執着を断つことによって、真の絶望が訪れ、自由に解放されていく。


    繊細で神経質な人が感じていることを、感じないようにすることはできない。無理にやれば離人症になる。
    ガラス細工のような壊れやすい純粋さから、螺旋状にグレードアップしながら変化成熟していき、強化ガラスのような強さと純粋さを手に入れる。

    第八講
    森有正の経験と体験の考え方。
    「苦労が身になる人」と「苦労が勲章になる人」の違い。

    第九講
    すべての良い仕事の核には、震える弱いアンテナが隠されている

    第十講
    人生の目的を考える→あるところから先へ行くと、目的や目標というものは、ある種の導入に過ぎなかったことがわかる。→目的に向かって、生きることの貧しさや窮屈さもわかってくる→何か大きな流れが私たちを運んでいると感じられてくる。

    つまり、自分らしく生きることを追いかけていくうちに、主語の(自分)が消え、天命とでも言うべき、大きな力が自分を動かし生きていることに気づく。

    [十牛図]禅の考え
    ある者が、牛(本当の自分)を探し、手なづけ、遊び、また牛(牛と自分:本当の自分とそれまでの偽りの自分)はいなくなり、無になり、自然の一部としてあるがままになり、仙人のように暮らし、また人里に下りて、若者に会い、その若者に影響与え、若者がまた牛を探すようになる。

  • 軽やかな筆致で掘り下げられる、人間の生き方。
    おもしろかった。
    高校生のころ、若い人を主人公にした成長の物語ってたくさんあるけど、中年以降はどうなるのだろう?とずっと不思議に思ってたけど、その問いに答えてくれた。
    「敏感で太い」自分、経験は未来に向かって開かれる、螺旋の旅路、十牛図など、印象的な言葉やイメージもたくさん。
    西洋東洋、古典と現代作を問わず引用される文献も魅力的で、読みたい本がまた増えてしまった。
    読みたかった本を一冊読むたびに、新たに読みたい本が三冊くらい出てきて、雪だるま式に心の積ん読リストが増えていく現象、なんとかならんものかな……。

    • workmaさん
      snowdome1126さん
      こんにちは。

      「中年以降はどうなるのだろう?」という、問い、確かに若い頃ありましたありました!とくに、成長物...
      snowdome1126さん
      こんにちは。

      「中年以降はどうなるのだろう?」という、問い、確かに若い頃ありましたありました!とくに、成長物語読み終わったあと。
      若い頃は中年になった自分なんて、「遥か彼方」…地上から中腹を眺める感じ。未知の世界でしたね。紹介してくれたこの本、読みたくなりました!

      ちなみに。
      ゲド戦記シリーズで、自分が一番好きなのは「アースーシーの風」ゲドが年取ってからの話。沁みます。
      2023/02/23
    • snowdome1126さん
      workmaさん

      共感いただけて嬉しいです〜!
      そうそう、まさに、遥か彼方の未知の世界。
      遠すぎて、自分の想像が及ばなかったり、関連する物...
      workmaさん

      共感いただけて嬉しいです〜!
      そうそう、まさに、遥か彼方の未知の世界。
      遠すぎて、自分の想像が及ばなかったり、関連する物事を感じ取る力が充分でなかったのも、あったのかなあ(高校生だから当たり前か……)。

      ゲド戦記、子どもの頃に『さいはての島へ』までを読んだきりなんです〜。
      続編気になりつつ、未読でした。
      わー気になります!!
      素敵なおすすめありがとうございます!

      『「普通がいい」……』はもともとカウンセラーの武田友紀さんがご著書でおすすめされていて気になったのがきっかけなんですが、いろんな角度で、ヒントが散りばめられている感じなので、機会ありましたら気軽にぜひ^^
      2023/02/24
  • 理性、理知的、論理的など、ある意味では美徳とされる感性に警鐘を鳴らす本書。
    普通とは何か、普通に疑問を持たずに生きていないか、自分の生き方を省みる機会となった。
    獅子的な生き方の先に行ってみたいと思った。

  • 友人の、「あなたは『普通』でないのに、『普通』になりたがっている」という指摘を受けて、
    それがそのままの題名になっている本書を手に取った。

    現在私は、メンタルクリニックに通院している。
    それは、仕事で続いた嫌がらせの為に、
    自分を自分として保っていられなくなってしまったからだ。

    そんな私のたったひとつの願いが、「普通に戻りたい」であった。
    毎日、日記に「普通でいたい」と書き綴っていた。

    しかし本書を読んで、考えが変わった。
    「頭」で「心・身体」をコントロールできると思っていた自分がいかに思い上がっていたか。
    そもそも、一人一人が違った存在であるはずの人間に、「普通」というマジョリティが存在することの不自然さ。
    そして、マジョリティ=良いことという盲信は正しいものなのか?という疑問の提示。
    知らず知らずのうちに、自分で自分を苦しめていた理由が少しわかった気がした。

    わかりやすい題名に、本書を読むまでは何も期待はしていなかったが、
    ページを進めるごとに、哲学・宗教・詩集など、幅広い分野からの引用で、
    すっと腑に落ちる平易な文章で「自分とは」「普通とは」何だったのか考えさせられる、
    『言葉の手垢を落と』し、自分と向き合うきっかけを付与してくれた良書だったように思う。

  • COURRIER JAPON
    著名人の本棚
    山口周さんの推薦図書より

    頭と心と身体の関係について。
    ああ、良い本に出会えた。
    読むとするすると思考がほぐれて、心がふわふわと軽くなっていきます。。

    精神科医であり思想家でもある筆者は造詣が深く、詩、哲学、宗教などの様々な分野からの引用も多く、多面的な論ですっと腑に落ちる。
    頭で認識するというより、身体に落とし込まれ染み渡るような感覚の読書体験。

    引用されている古今東西のあらゆる言葉たちをこんな風に咀嚼して編み上げ、自らの論旨の説得材料にするのは素晴らしいと感じた。
    本を読む、とはこうやって自在に言葉を操る域まで至ること。私はまだまだまだまだ。

    読んでいて学びと思考がより深まった。
    先人の考えに触れ、いつの時代も人間は普遍的な問いに悩み、考え、感じ、悟り、世界を生きているのだと感慨深い。

    名付けられた病は、精神病とカテゴライズされた重苦しい苦難というよりも、あるひと時の心と身体の状況なのだなと考えると、浮き沈みに思える。
    頭で考えず、心の声に耳を傾けると、きっと浮いてこれる。

    十牛図は見たことがあるが、このような意味を持つのかもしれないと思うと、先人達の生きる知恵を感じる。

    愛に溢れた本。
    疲れた心に優しく響いていく。
    思考の力はすごい。ものは考えよう。
    見方を変えたら生きやすく、楽しく、軽やかに。
    全日本人に読んで欲しい。

  • 丁寧に、なおかつ論理的に、凝り固まっていた固定観念を少しずつ解かしてくれるような本。
    中原中也、茨木のり子、谷川俊太郎などの詩人の詩をはさんだり、様ざまな時代やジャンルの人びとの言葉を引用したりしていることで、著者の言葉にさらに深みが増している。
    こうやって、先人たちが残した言葉を自在に操れるようになってこそ、読んだ本を身にすることができたと言えるんだろうなー。こんなふうになってみたい。

    「頭」と「心=からだ」の関係、「愛」と「欲望」のちがい、「普通」なんてない、「現実」なんてファンタジーだ、などなど、今まで頭に刻みつけられていた言葉の意味をもういちど考えさせられた。

  • 「角」は資質なのか切除すべきものなのか。
    心について禅や哲学などを用いて大きくとらえた本。
    また読み返したい。
    ・病気や苦しみ(ギフト)、その忌々しい包みをほどいてみると、そこには自分らしく生きていくための大切なメッセージが見つかる
    ・「怒り」は自分を確保し始めた大事な時期
    ・心の中の「我がまま」になっていない空虚なところにいかにアプローチできるか
    ・「愛」の自給自足を体現している存在に出会い、自給自足を妨げている要素を丁寧に取り除く作業に着手する
    ・日本人の多くがいかに窮屈でもったいない日々を過ごしているか

  • 今自分が悩んでいる過程がどういうものなのか、またなぜこんなに悩んでいるのかが、この本の文と図で分かりやすく理解出来た。もっと感情を引っ張り出したい。また哲学を学びたいとも思えた。

  • 子供のころから、人生の意味を考えるタイプの性格だったけど、会社員という駱駝になって、ますますこのままでいいのかなと思っているところに、たまたまこの本に出会えて、目の前の霧が晴れた実感がした。
    大通から外れてもいい。自分を満たしてあげることで何者でもない「自分」として、私の小径を、生きるがゆえに生きていきたい。

  • 生き方を参考にしている人が読んでいたから一読。

    「ありのままの自分で生きるといい」と、詩や哲学、仏教、絵画、劇などいろんな例や引用を使って主張してくれてる本。
    (谷川俊太郎、ニーチェ、夏目漱石、空海、オスカーワイルド、親鸞、ゲルニカ 、椿姫、十牛図...)

    心=身体、レッテル貼り替え作業≠ネカポジ論、愛と欲望...うんうんうんうん!と共感しながら読んだ…。し、空海すげえ!という発見や、やっぱ仏教最高とも思った。

    引用で使われてた言葉たちや著者の表現が秀逸で気持ちいい。

    読んですぐこうなる!みたいなビジネス本ではないけど、

    人の為に生きすぎて疲れた人、自分がよく分からなくなった人、人の目気にしすぎて生きづらい人には心の支えになると思う。

    --めも--
    自分で自分に貼ったレッテル(「頑固です」「人見知りです」とか)は自分を閉じ込めてしまうよーぅ

    「癒しという誘惑。生ぬるいお風呂に何時間も留めようとするだけ、人を変える力はない。美術にとって必要なのは自立。人を救うということは人を自立させること」横尾忠則

    心=身体だから、感じるままに動くと自然に身体にもいい。頭で「~~~しなきゃ」とコントロールしようとしなくていい。

    身体はレンタルで道具(ちょっと宗教的だけど理解。すずめの戸締りもそんな感じなんあった)

    普通=0人称
    →これで夏目漱石もうつ状態に
    「私の個人主義」で自己本位になりだっしゅつ

    人の為に善いことをする→偽善(相田みつを)
    ボランティアは欲望

    谷川俊太郎「やさしさは愛じゃない」
    空海「理趣経」煩悩即菩提
    欲望を切り捨てるのではなく、向き合うことで愛が生まれる。遮情せず、大欲に膨らませる
    →喜捨
    禁欲的な教えじゃないことびっくり!

    「生きるとはこの世で最も稀なことである。大抵の人間は存在しているにすぎない。」オスカーワイルドさん

    大通りから外れることに不安でも、大通りに戻ることが解決ではない

    敏感に図太く

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著者プロフィール

泉谷 閑示(いずみや・かんじ)
精神科医、思想家、作曲家、演出家。
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。パリ・エコールノルマル音楽院留学。同時にパリ日本人学校教育相談員を務めた。現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京/広尾)院長。
大学・企業・学会・地方自治体・カルチャーセンター等での講義、講演のほか、国内外のTV・ラジオやインターネットメディアにも多数出演。また、舞台演出や作曲家としての活動も行ない、CD「忘れられし歌 Ariettes Oubliées」(KING RECORDS)、横手市民歌等の作品がある。
著著としては、『「普通」がいいという病』『反教育論 ~猿の思考から超猿の思考へ』(講談社現代新書)、『あなたの人生が変わる対話術』(講談社+α文庫)、『仕事なんか生きがいにするな ~生きる意味を再び考える』『「うつ」の効用 ~生まれ直しの哲学』(幻冬舎新書)、『「私」を生きるための言葉 ~日本語と個人主義』(研究社)、『「心=身体」の声を聴く』(青灯社)、『思考力を磨くための音楽学』(yamaha music media)などがある。

「2022年 『なぜ生きる意味が感じられないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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