生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498914

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって不思議な感じになった。村上春樹さんの本を読み終わった時と同じく、世界がクリアに見え、音が良く聞こえる感覚。生命の不思議が科学的に、ある時は詩的に語られる。ニューヨークやボストンの情景を絡めDNA、タンパク質、そして生命の持つ力が直接的に心に響き渡った。GP2蛋白の精製に胸が躍り、ノックアウトマウスに驚愕する。自然や生命の尊さを実感できる良書であることは間違いない。大好き度❤️❤️❤️

  • 2022年11月14日再読

    生物とはパーツを組み合わせた機械というより、形を保つ流れ(動的平衡)であるという新しい見方が示されている。
    その流れは、柔らさを持ち、欠けても埋められる強さも持っている。
    生命の不思議と驚きを強く感じさせる。

    アイデンティティや意識についてのガーゲンやカルロ・ロヴェッリの本が言うような、関係性(仏教では縁や空)としての自己を考えたとき、その基盤となる物理的身体の構造もしくは存在の実態が、流れであるというのは、その繋がりに驚きを感じつつも、改めて考えればとても自然に感じる。

    個人の心や意識まで含め、あらゆる実在は、周りとの関係性としてある、そして世界全体が繋がっているという深い理解に進めそうな気がする。もし、自分が進めるのならば、その理解の先に、どんな世界があるのか興味がある。

  • あまりにも面白い。全人類読むべき。

  • 生物とは、生きているとはどう言う状態なのか、と言うことを筆者の考えや経験を交えて話してくれる。エッセイかも。

    分子生物学などを大学でかじってないと、理解が難しいところがある。

    生きることは不可逆的であること。
    人間の体が原子に対して大きいことは、全体としての原子の動きのエラーを減らすことができ、合理的であること。
    生命とは動的平衡にある流れである。
    など、印象に残った。

    生き物としての自分を再考した。
    とともに、生き物でなくても(企業などでも)、続いていくにはこのような代謝サイクルのないものは死にゆくものであるのは、自然が証明してくれているのかもなと漠然と。
    壊しては作る、作っては壊す、その見た目は変わらずとも。

  • 生物学者、生命哲学者の福岡伸一による、抒情的に書かれた新書。Kindle版がない(2022年4月現在)。生命とは何かについて、生物と無生物の間の違いを明らかにする本である。また、ウイルスやDNAの発見、PCRの発明などの経緯、福岡自身の研究生活や、研究者という生き方の一端も、物語として描いている。この本を読むことで、生命の不思議さや畏敬を感じとり、また研究者という生活の面白さや厳しさの一端も垣間見ることができる。とても面白い本だった。

    なお本書は、生物(および生命)に対する著者の「センス・オブ・ワンダー」を巧みに伝える稀有な本だと思う。本書エピローグで登場する「センス・オブ・ワンダー」というこの言葉は「神秘さや不思議さに目を見はる感性」とも訳され、本書の提示する生命観の重要な視点である。本書の提示する生命観は、おそらく、生命は固定的な部品によってではなく変動的な流れによって成り立っているという生命観である。

    福岡は本書において、「生命とは自己複製するシステムである」という一般的なテーゼでは不十分であるとし、生物(生命)と無生物(機械など)とを区別するより確かな境目を提示した。その境目とは、時を経て平衡を保ち続ける動的な流れの有無である。すなわち、生命は、機械のように時を経ても同じ粒子によって成り立っていたり、ある機能を持つ部品がなくなるとある機能がそのままなくなってしまったりするようなものではなく、時を経て細胞やそれを構成する分子は全て入れ替わり、ある「部品」が無くなってもその機能を柔軟に補う力を持っている。単に自己複製するだけではなく、流れ続ける川の水は常に違うが同じ川であるように、時を経て変化しながらも一つの流れとして平衡を保つ力があることを描いている。そこに、生命の持つワンダーがある。

  • 福岡先生が名付けた動的平衡とは、命とは川のように水のように常に循環していることであるらしい。長い時間をかけて人類は命の秘密を解き明かしてきた。2ヶ月前の自分と今の自分は細胞的、生物学的にいえば全く違うものになっていると言えるのに、精神は心は、そのことも認識せず2ヶ月前と同じ存在であると思っている。DNAや二重螺旋の不思議をわかりやすく新書で解説してくれる本書は良書である。

  • ウイルスとは何か知りたくて、手に取ってみました。
    ウイルスは、生物なのか無生物なのか
    そもそも生物って何だろうと言う素朴な疑問を持って
    読み始めました。
    読み物として面白く、生物の神秘の一端に触れた気がしました。
    ただ、生物とは何かという問いに対して、もっと学術的な側面から知りたいという知的好奇心を満たすには物足りない感じです。

    著者の言葉ではないけれど
    生命現象は最終的にはことごとく物理学あるいは化学の言葉で説明しうる という一文が印象に残りました。
    引用されたシュレーディンガーの著書「生命とは何か」こちらを読んだほうが面白いかも。

  • 福岡伸一的「10代におすすめのSTEAM的好奇心を刺激する3冊」
    https://fasu.jp/series/steambook/vol2/#2

  • 生物と無生物のあいだ ★★★★☆

    『生命とは、静的なパーツの組み合わせではなく、“動的に”秩序を形成しながら後戻りできない時間の流れの中で自己複製を行うものである。生命体とは、流れゆく分子の密度たまたま高まっているだけの“淀み”に過ぎないのだ。』

     生命とは何か。根っからの文系脳である私からすると、冗談ではなく“神が与えた神秘的なもの”としか説明できませんでした。本書は、それが神秘ではなく物理と科学で説明できるという事を、著者含む数々の研究者の、熱意のこもったそれはそれは素晴らしい研究結果をもとに、分かりやすい比喩を用いて説明してくれます。(比喩が無ければ難しくて理解が追いつかなかった…!)

     DNA、細胞、たんぱく質…目に全く見えない何兆ものシステムが、自分が生まれる前から体の中で常に働き、常に新しいものと入れ替わり秩序を保ち続けていること。信じがたいけど紛れもない事実で、今も自分の体内の至る所で生命活動が起きている。不思議すぎる、やっぱり神秘だわ…と本末転倒な考えに至ってしまいましたが、(笑)改めて生命の仕組み、生きていることって奇跡だなあと感じられる一冊です。

    (著者:福岡伸一さんのワードセンス、言い回しが非常に面白く、常にその時代、研究者の人柄、研究課程を想像しながら読むことができました。季節や景色の描写も細かく技巧的で、これは常に見えている世界の変化を観察し、感性豊かに捉える癖のある研究者ならではの視点があるからこそできる表現だし、そのアンテナのおかげで様々な発見ができるのだろうなあと感じました。)

    ●生命とは

    自己複製を行うシステム

    互いが他を写し取ることで複製が可能な、DNAの二重らせん構造の発見によってそう定義された。

    ●PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)

    任意の遺伝子を無限に複製できる技術

    ※コロナ禍においてお馴染みのPCR検査は、例えば人の唾液に含まれる特定の遺伝子を、陽性か陰性かを判断できるくらいに複製して増やすことで検査する仕組み。
    コロナの検査=PCR検査というわけではなく、遺伝子の複製ができるシステムを指すということを知りました!

    ●研究者の世界とは
    研究者の競争は激しい。研究が大発見となるかは、ライバルよりいち早く論文を発表できるかどうかで決まる。第一人者を出し抜こうと不正を行うこともしばしば…。

    日本の研究者のヒエラルキー構造とは違い、アメリカでは独立した研究者が多く、全ての力の源である研究費を仕入れることに注力している。研究費は、一作業ごとに7桁ほどにまでなる場合もある。

    ●生命のシステム=動的平衡なシステム
    細胞を作る原子はブラウン運動により無秩序に動き回っている。原子は、次第に均一化し平衡状態になろうとするが、それは生命の死を意味する。

    その状態にならないため、生命は“動的な”秩序を維持しようと、絶え間なく原子や分子を破壊→分解/合成するという流れの中に生命自体を置くようにしている。これをたんぱく質で言い換えると、常に分解/合成を繰り返すことによって異質なたんぱく質を取り除き、それが蓄積するのを防いでいる。(皮膚や髪、爪といった目に見えるものだけでなく、歯や臓器、骨、体脂肪までもが絶え間なく分解/合成され新しいものと入れ替わっている。)

    “秩序を保つためには、秩序を破壊し続けることも必須”

    ●“相補性”が生命活動のカギ

    DNAの二重らせん構造における相補性が生命の自己複製を可能にするように、

    体内の2万個以上のたんぱく質にもそれぞれ固有の形があり、その形もまた相補性を体現している。その相補性は微弱であるが、その“柔らかな”相補性こそが、外界の変化に対応し自らを変える可変性と柔軟性を担保している。(破壊、分解、合成を適切に行い、生命の適応と恒常性の維持に貢献している。)

    ※破壊活動が追いつかず、異常なたんぱく質が脳内に蓄積することでアルツハイマー病などの病気が引き起こされる。

  • 10年以上前になるが、高校時代に読書感想文の課題書の一冊として本書が選ばれており、読んでいる同級生が多くて気になっていた(当時私は違う本を選んだ)。新型コロナウイルスの流行に伴って本書が再注目されており、目に留まったので読んでみた。
    DNAや細胞に関する内容が、時代の流れに沿ってその当時に活躍した研究者たちの様子とともにストーリーとして描かれており、生物学の知識をほとんど持っていない私でも楽しむことができた。しかも専門的な話がうまく噛み砕いて書かれており知識を身に付けることもできる。新型コロナウイルスの流行によって耳にすることが急増したPCRについても、その手法の仕組みだけでなく誕生した経緯も知ることができた。なぜ原子に対して生物がこれほど大きいのかという話も興味深かった。
    初版は14年も前だが、今だから楽しめる部分もあると思うので是非読んでみてほしい。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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