生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 9773
レビュー : 1231
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498914

感想・レビュー・書評

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  • これは一つの命題に対する「界面の物語」、なのでしょうか。
    普通に店頭で見かけても、スルーしていただろうなぁ、、との一冊。

    エビカツ読書会でご紹介いただき、縁あってお譲りいただいて、拝読いたしました。
    完全な理系の世界のお話しなのですが、とてもわかりやすく読めました、多謝。

     ”それは自己複製を行うシステムである。”

    「生命とは何か?」、冒頭で既に出ている答えの一つは、
    自己複製を行うシステムであるとのこと、、ですが、続きがあります。

    もう一つのファクターについて、著者の過去を含めて、
    その思考経路をたどりながら、追い求めていく事になります。

     ”生命とは動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)にある流れである”

    ん、以前、ドラマか何かの恋愛ネタで「DNAレベルから引き合っている」、
    なんてフレーズを見た覚えがありますが、なんとなく実感したりも。

     ”生物には時間がある。”

    ラスト、なんとも哲学的なフレーズに行きついた上で、解きほぐされていきます。
    時間という概念と、その不可逆性が指し示す「生命」とは、、さて。

    どこかミステリーのようでいて、でも、システマチックなガイア理論をも喚起させたりと、
    時間という絶対者から、生命として生まれた時に付与されたその「絶対の概念」の行きつく先は、、

    生命とは何か?、ある種の哀切さが残る読後感でした、だからこそ美しいのでしょうけども。

  • 2007年刊の、言わずと知れた大ベストセラー。
    それを今になって読むか! と思わないでもないけれど、読んでよかった。

    筆者の専門である分子生物学にかかわる話は、この人一流の卓抜な比喩でイメージとしては伝わるのだが、やはり難しい話には違いない。
    学問領域としても若い分野だからこそ、なのか、そこに福岡さん自身の研究者としての歩みを重ねて叙述されている。

    『二重らせん』で栄光をほしいままにしたワトソンらの陰に隠れてしまったローズ・フランクリンの話は、痛々しい。
    ポリメラーゼ連鎖反応という原理を使って、任意の遺伝子を増やす方法を思いついた技師のマリス。
    興味深い人たちが次々と出てくる。
    そして、シュレーディンガーの問い。
    物理学の人だとしか認識していなかったけれど、生物学にとっても重要な人だということを初めて知った。
    なるほど、「分子」生物学を開くきっかけになるはずだ。

    12章以降は筆者の研究に関わるところ。
    細胞膜の中で、外に出されるたんぱく質が小胞体に送り込まれ、ある場所まで運ばれた小胞体は細胞膜と触れ合うと、癒着して内部のものを出す。
    こんなメカニズムがあるのか、と驚嘆した。
    GP2というたんぱく質を完璧に持たないよう遺伝子操作
    したノックアウトマウスの実験は、難しいながらも、それでどうなるの?と、思わず引き込まれた。
    その結果わかったことも、考えさせられる。
    すべてのタンパク質分子を欠落させるより、部分的な欠落や改変の方が、生命にダメージを与えるのだ、と。
    生命は、自分を守るために、驚くべき解決方法を作り出す。
    ただただ驚嘆である。

  • 人間が食べる意味と言うのは、その食べた物のエネルギーをガソリンがわりにして身体を動かしていると言うのが定説だけど、この本に書かれていることは違った。

    普通は人間が食べた物はまず身体に取り込まれ、その食べた物がその場で消化吸収され排泄物として出ると思われてるけどそれは間違いで、
    人間が食べた物はまず身体の一部になる、そして身体の一部になっていた物が排泄物として排出される。
    食べた物が身体を通して排泄されるのではなくて、何日、何週間前に食べてた物の身体に一部となっていた物、
    すなわち古い細胞の部分が排泄物として排出されていたと言うこと。
    つまり人間の細胞と言うのはどんどん入れ替わっているということで、元の自分は居なくて、常に食べ物を食べ続けることによる動的平行の中で、新しい自分に生まれ変わっているってことが分かった。

    難しい用語や言葉が多くて理解出来ないところが多数あったので、
    しっかり理解出来る様になりたいなと思いました。

  •  一般の人間にはうかがい知れぬ現在の「研究者の世界」と、最先端の「生物学の世界」をわかりやすく紹介することにかけて、著者は実に優れている。
     著者は、研究者としてはどうかは知らないが、「エッセイスト」としては「一流」なのではないか。
     「相反する野口英世像」、「ウィルスの発見」や「DNA」の最先端の紹介は、素人が読んでもよくわかり面白い。
     「ボスとポスドク」の世界が、同時に「研究室の奴隷(ラブ・スレイブ)」であるとは、「研究者という世界」が「栄光と名誉」だけではなく「膨大な犠牲者」が共存する過酷な世界であることを教えてくれる。
     このような普通知ることができない領域、しかも「学問の世界」を知ることを「教養を身につける」といえるのではないだろうか。
     本書を、「異世界を知ることができる」良書として高く評価したい。

  • まるで小説のような生物学の本。研究者たちのドラマ。動的平衡、生命の一回性。

  • DNAの二重螺旋構造発見に関する物語は、ビジネス小説のようで面白かった。
    勉強になった点は、 「生物には時間がある。不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度折りたたんだら二度と解くことができないもの。それが生物である。」ということと
    必要な遺伝子が欠落しても補完差用が働き、全体に影響は無いが、必要な遺伝子の似て非なるものが作用すると破綻を来たす。このことは人間の組織にとっても言えることなのだろうかと考えてみた。

  • 遺伝子はDNAの発見の過程にある科学者たちの悲喜こもごものエピソードを通じて、科学とは何ぞや、生物とは何ぞやということが学べる。文系の自分が読んでもとても面白かった。他分野だからこそ、読むものすべて新鮮で、自分の中の知識の引き出しが増えた感じになる。読んでよかった。

  • 生物学に限ったことではないが、「象牙の塔」では我々が窺い知れない苦労や努力がある、そんな書き出しからすんなりと遺伝子工学の話題へと進んでいく。学術解説書ではなく、読み物としての生物譚という感じ。生物とは何か? の答えとして、時間的に不可逆的で、一度折りたたんだら二度と解くことができないという言葉が印象的。しかし、何より自分の印象に残ったのは、著者の少年時代を語るエピローグである。アオスジアゲハとトカゲの回想は、生物は、そして生命は何かを象徴的に表している。

  • プロローグ
    ノックアウトマウスに機能不全が見られないことがあることから、生命というあり方にはパーツが貼り合わされて作られるプラモデルのようなアナロジーでは説明不可能な何か特別なダイナミズムが存在し、そのダイナミズムの感得こそが生物と無生物の識別を可能にしているのではないか、という主張。

    2章
    ウイルスは優れて幾何学的な美しさを持っていた。大小や個性や偏差がないのは、生物ではなく限りなく物質に近い存在だったからである。生命を自己複製するものと定義するなら、ウイルスは紛れもなく生命体であるが、寄生虫のようなものなので、ウイルス粒子単体を見れば生命の律動はないと言える。

    3章
    エイブリーは、DNAこそが遺伝子の物質的本体であることを示そうと確信していたが、それは実験台のそばに最後まであった彼のリアリティに基づくもので、直感やひらめきではなかった。
    突然変異や進化そのものも、DNAの文字上に起きたごくわずかな変化がタンパク質の文字を書き換え、それが場合によってタンパク質の作用に大きな変更をもたらすことで引き起こされるのである。

    4章
    DNAは相補的に対構造を持っているので、部分的な修復が可能である。それだけではなく、DNAが自ら全体を複製する機構をも担保していることが重要だ。

    12章のニューヨークの描写はなるほどと納得させられた。こんなことを書いている人は見たことないけど、そういうことなのかと思った。

    後半はまだじっくり読んでないということもあるが、よく理解できなかった。分かるような分からないような。

  • 生命がいかに無生物のなかから発生したのか、分子生物学の立場から論じた本、と思って読んでみる。

    著者の体験と様々な研究者のエピソードを交えながら、DNAの発見から、細胞膜の不思議、そして生物という存在の不思議さに戻っていく。が、私が期待した「かくも複雑な生命はいかに発生したのか」という本ではありませんでした。

    勝手に期待するほうが悪いといえば、悪いわけだが、最近の新書では、タイトルで売ろうという傾向が強くて、タイトルと内容が必ずしも一致してないものが多く、この本のタイトルも、全く違うというわけでもないけど、微妙にずれているのではないか、と思う。

    ということ以外は、噂どおり、読みやすく、面白い本でした。

著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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