食卓に迫る危機 グローバル社会における漁業資源の未来 (KS科学一般書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061531390

作品紹介・あらすじ

流通業者、科学者、国際会議出席者、養殖業者、漁師…。各分野の第一線では、どんな問題が見えているのか?情報を総合することで浮かび上がってくる、魚をめぐる問題の全体像と、解決への糸口。

感想・レビュー・書評

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  • 自分にとっての楽しいひとときと言えば、要するに魚介を肴にうまい日本酒を飲んでいるときなのだ。つまり漁業と農業は自分の快楽に直結している産業と言える。

    というわけで私が受け取ったメッセージ。
    「漁業資源の枯渇を言う前にまずは統計をしっかり観よ。その上での本当の危機を判別せよ。自由貿易と資源保護の不整合は国際問題、日本も主張を。その上で、消費者もトレーサビリティなどのコスト負担を」。

    たとえば、日本の漁業保護の考え方は欧州(ノルウェーなど)とそり合わないことが多い。平たく言うと豊かでない北海などでは、単一種の魚群を追うのが通常で規制を「量」で考える。一方、日本の近海は生物相が多様、網に多くのサカナがかかり、「雑魚」は地魚として消費される。魚ごとの「量」は管理しきれず、従って「船の数」「海域」などでコントロールしようとする(欧州から見ると非効率に見える)。

    養殖も実は簡単ではない。サケ養殖のためのエサとなるマアジをそのまま食べた方が実はカロリーだけで言えば効率的。「畜産業でタンパク質を採ればよい」という考えも実は環境負荷が高い。光合成による有機物の再生産は陸よりも海の方が速い。
    漁業資源を守るには違法操業を止めるのが第一。でもトレーサビリティ整備もタダではない。消費者がそれをいくばくかでも負担する決意があるか。

    議論は単純ではないのだ。

    学者とは言え元官僚が監修しており国益視点を強く感じるが、一方でTPPに慎重だったり、消費者の役割に期待したり、通俗的な「どうせ役人は」的批判は一切当たらない。読み応え感ばっちり。

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著者プロフィール

東京大学大学院農学生命科学研究科教授。
東京大学農学部卒、米国ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)課程修了。東京大学博士(農学)取得。2008年東京大学大学院特任准教授、2011年同准教授、2017年より現職。日本学術会議連携会員、日本水産学会理事、国連食糧農業機関(FAO)世界農業遺産(GIAHS)プログラム科学助言委員(2019−2020年)なども務める。2019年カンボジア王国友好勲章(Royal Order of Sahametrei)受賞。

「2020年 『水産改革と魚食の未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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