できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)

  • 講談社
4.07
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061531536

作品紹介・あらすじ

◆◆よい習慣は、才能を超える◆◆3万部突破のロングセラー!!

全米で話題の「How to Write a Lot」待望の邦訳。いかにして多くの本や論文を執筆するかを軽快に解説。雑用に追われている研究者はもちろん、アカデミックポストを目指す大学院生も必読! また、大学生のレポートや卒論執筆にも効果てきめん! これを読めば人生が変わる。

【三中信宏さん推薦!】
本書の原書をたまたま読んで、そこに書かれている「たくさん書く」ためのワザの数々
を実際に使ってみたら、驚くなかれ、たった三週間でまる一冊が翻訳できてしまった。

【“訳者あとがき”より】
論文の書き方に関する指南書はこれまでも数多く出版されているが、本書が画期的なのは、いかにして論文執筆のモチベーションを上げ、精神的負担を軽くして論文執筆に取り組めるようにするかについて、メンタルな面を含めて冷静に分析し、その解決策を誰にでもわかるように明瞭に提示している点だろう。

第1章  はじめに
第2章  言い訳は禁物 ――書かないことを正当化しない
第3章  動機づけは大切 ――書こうという気持ちを持ち続ける
第4章  励ましあうのも大事 ――書くためのサポートグループをつくろう
第5章  文体について ――最低限のアドバイス
第6章  学術論文を書く ――原則を守れば必ず書ける
第7章  本を書く ――知っておきたいこと
第8章  おわりに ――「まだ書かれていない素敵なことがら」

感想・レビュー・書評

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  •  原題は「How to Write a Lot」。米ノースカロライナ大学准教授で心理学者の著者が、自らの経験をふまえて論文生産の効率を高めるコツを説いた本だ。

     もちろん私は研究者ではないし、書いているのも学術論文ではない。が、本書はライターのモチベーション向上にも役立つものであった。
     章立ては次のようになっている。

    第1章 はじめに
    第2章 言い訳は禁物―書かないことを正当化しない
    第3章 動機づけは大切―書こうという気持ちを持ち続ける
    第4章 励ましあうのも大事―書くためのサポートグループをつくろう
    第5章 文体について―最低限のアドバイス
    第6章 学術論文を書く―原則を守れば必ず書ける
    第7章 本を書く―知っておきたいこと
    第8章 おわりに―「まだ書かれていない素敵なことがら」

     このうち、4章から7章まで――すなわち本書の半分は、研究者にしか役立たない内容であったり、日本人には関係ない話であったりする。それでも、残り半分の章のためだけに買う価値のある本だった。

     私は30年近くもフリーライターをやってきたのに、いまだにスケジュール/モチベーション管理が拙劣で、しばしばスケジュールの狂い(要するに仕事の遅れ)に悩まされている。
     その泥沼の悪循環からなんとか抜け出そうと、最近、いろんな工夫を重ねたり、この手の本を読みかじったりしている。

     本書は、以前当ブログで紹介した『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』と並んで、背中を押してくれる効果の高い本だと思った。

     著者の主張の骨子は、きわめてシンプル。

     ・「書かないための言い訳」(「まだ準備が足りない」「まとまった時間が取れたら書く」など)を自らに禁じること
     ・毎日決まった執筆時間をもうけ、その時間には必ず机に向かって書くことで、執筆を習慣化すること
     ・毎日、その日の具体的な執筆目標を設定すること(ほかに、もっと大きな目標も設定する)
     ・たくさん抱えた仕事の優先順位を明確にしておくこと
     ・執筆進行状況を、つねに具体的に把握しておくこと

     ――大枠としては、これくらいなのだ。
     ご覧のとおり、斬新なアイデアが盛り込まれているわけではなく、凡庸なアドバイスのようにも思える。だが、そのことを「凡事徹底」で行うためのノウハウに独自性がある。
     たとえば、著者は統計ソフトを使って「執筆進行状況管理ファイル」を自作し、自分の執筆作業を可視化している。何を何ワード書いたのか、執筆のためにどのような作業をしたのか、その日の目標は達成できたのか否かなどを、毎日記入していくのだという。

     そのことがもたらす効果について、著者は次のように言う。

    《自分の行動を見張っているだけで、机に向かって書くのが楽になる。行動研究からは、自己観察だけで、所望の行動が誘導されることがわかっている。
    (中略)
     執筆時間帯に机に向かわなかった場合に記録表に大きくて醜いゼロという文字を入力する効果は大きい。(中略)執筆の進み具合を記録していると、目標を上手に立てられるようになる。記録しはじめてしばらくすると、自分の執筆の進み具合について現実的な予想を立てられるだけのデータが集まってくる。目標を上手に立てられると、執筆ははかどるものだ。》

     ダイエットにおける「レコーディング・ダイエット」のようなものだが、私も取り入れてみようと思った(いまでも、その日何を執筆したかの大まかな記録はつけているのだが、もっと細かく記録することにしよう)。

     執筆モチベーションを保つために、抜き書きして机の前に貼っておきたいような言葉も多い。研究者ならずとも、日常的に文章を書く仕事の人なら一読の価値がある本。

  • 規則性とスケジューリングが特に刺さる。起きてすぐ書く良い。
    引用多く引用の周辺情報の多さも良書感。俺たちのピエール・バイヤール本こと未読本堂々語り書にも通ず。

  • 【1行説明】
    スケジュールを立て,死守しろ

    【趣旨】
    大学教員や大学院生など,学術論文を執筆する立場の読者へ向けて,どのようにすれば論文をたくさん書けるかについて著者の考えを紹介している.
    最も大きな主張としては,「執筆時間を固定されたスケジュールとして組み込み,死守する」ということである.
    著者の専門は心理学であるが,どの分野の研究者でも活用できる方法や考え方を紹介している.

    【引用文3つ】
    1. (p.12) 言い訳その1:「書く時間がとれない」
    「時間さえあれば書ける」というのは,「人間は実は脳の1割しか使っていない」といのと同様,ただの迷信だと思う.(中略)これが,執筆のための時間でなく,授業の時間だったらどうだろう.授業の時間も,わざわざ「確保」したり「見つけ」たりする必要があるだろうか.「ブンショウ・シッピツジカン」が週間予定表という林のどこかに潜んでいるかもしれないと考える限り,一定量以上の文章を書くことなど到底無理ということだ.
    2. (p.14)
    書く時間は,その都度「見つける」のではなく,あらかじめ「割り振って」おこう.文章を量産する人たちは,スケジュールを立て,きちんと守っている.それだけのことだ.
    3. (p.25) 言い訳その4「気分がのってくるのを待っている」
    この言い訳を撃破するのは簡単だろう.インスピレーションが湧くのをまっているのではうまくいかないことは,研究で実証済みだ (Boice, 1990).(中略)
     まず,執筆を欠かすとペナルティが課される条件に置かれた実験参加者は,執筆量が多かった.気が向いたときに執筆するグループの実験参加者の3.5倍,緊急性のある執筆以外認められなかったグループの実験参加者の実に16倍のページ数を書いたのである.つまり,気が向いたときに執筆するグループの実験参加者の執筆量は,緊急性のある執筆以外認められなかったグループの実験参加者と比べてさほど多くなかったといえる.インスピレーションという存在が,過大評価されているということだ.
     第二に,書くことを強制すると,独創的な執筆アイデアもどんどん浮かんでくるようになった.独創的なアイデアが思い浮かぶ間隔は,執筆が強制された実験参加者の場合はわずか1日,気が向いたときに書く場合は2日,緊急性のある執筆以外認められなかった場合は5日だった.各作業自体が,書くための優れたアイデアをはぐくむのである.
    4. (p.66) 悪分しか書けないわけ
    学術的文章の書き手がダメな理由は3つある.1つ目に,彼らはスマートにみられたがる.2つ目に,アカデミズムの書き手は,よい文章の書き方を習ったことがない.3つ目に,良い文章を書くための練習時間が圧倒的に不足している.
    5. (p.92) まずは書く,後で直す
    文章を紡ぎだすのと,できた文章を手直しするのは,同じ執筆作業であっても,まったく別の側面だといえる.同時に行わないこと.文章を紡ぎだす目的というのは,とっちらかった荒削りの単語の群れを1枚のシートに落とし込むことだし,文章を手直しする目的というのは,落とし込まれた単語たちをきれいに磨いて,きちんと意味の通った文章にすることだ.(中略)そもそも「完璧な第一稿」を追及するというのが間違っている.
    6. (p.97)
    僕の「文章執筆べからず集」では「アウトラインを作成せずに文章を執筆してはならない」という項目の人為はかなり高い.(中略)当然ながら,何を書けばよいのかわかっていなければ,書くに書けない.たくさん書く人は,アウトラインもたくさん書いている.
    7. (p.120)
    論文というものは,そもそもリジェクトされるものだし,リジェクトされるという前提に立って書かれるべきものでもある.(中略)リジェクトされる率が5割未満の雑誌がない以上,自分が投稿する論文はリジェクトされると仮定しておくのが唯一の合理的な結論だし,僕の揺ぎ無き合理性の信念は,山ほどのリジェクトの通知を受け取ってきたことで裏付けられる.

    【感想】
    本書は論文執筆について,スケジュール管理と書く内容の2つの面からヒントを紹介している.
    そのうち,スケジュール管理については「固定スケジュールを組み込む」というのが最重要とされており,これは論文執筆以外にも共通して役に立つマインドセットだと感じた.

  • ・要約すると「執筆スケジュールを立てて、それに従おう」。これだけ。真っ当すぎて反論の余地がない...。
    ・ありがちな書けない理由(言い訳)は、本文中ですべて論破される。ここまで完璧に論破されると気持ちがいいな。
    ・皮肉っぽい文章がおもしろくてさくさく読める。
    ・執筆スケジュールを立てるのを実践したら、停滞してた文章が1本書き終わった。最高。毎日執筆した当然の結果ではあるけど。

  • 執筆の計画を立て、イヤでも机に向かい、頭を働かせ、手を動かすこと。

  • スケジュールを決めてその通りに執筆せよ、という一言にほぼ集約される本ではあるが、その他のパートもウィットに富んでいて面白く読めた。
    「学術誌の世界は”おそろしい”世界ではないこと ーただ”おそい”だけだということ」という一文には勇気づけられた。

  • 〇学んだこと
    1.文書の生産性はスキルの問題
    2.論文の執筆時間を確保することが重要
    3.書く作業自体が優れたアイデアを生む

  • SNSでも話題になった。学会書評にも。
    https://sites.google.com/site/jssppr/specialissue/207

    タイトルがタイトルなだけに、本棚の目につくところに飾って、自分にプレッシャーをかける、というのも良いだろう。

  • ●論文を執筆するには毎日のスケジュールに執筆時間を組み込むことが大事。
    ◎英語のエヌダッシュ、エムダッシュの使い方や簡潔な表現、執筆の流れなどが書いてあり、今すぐには役立たないが、今度論文を書く際に参考にする。

  • 哲劇の吉川さんがオススメしたいたのも相まって、また論文や季報や年次レポートの執筆、人が書いた論文の査読を依頼されたり、はたまた共著論文の査読コメント対応をしたり、CFPを書いたりなおしたりコメントしたりと、仕事がら何かと論文との関わりが多くなってきたこともあって手にとって読んだわけですが、write a lot の極意は毎日継続してアウトプットすることなので、書くこと以外の仕事にも応用できる元気が出る本でしたり

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