なっとくする量子力学 (なっとくシリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061545052

感想・レビュー・書評

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  • 第5セメスターの成績が、留年は免れたもののかなり悪く、脱オチコボレを期して夏休みに借りてみた。結局夏休みはほとんど勉強せず、この本も新学期が始まってから慌てて読んだ。この人は名前だけ知ってて読んだことはなかったが、古き良き学者の雰囲気が漂ってなかなか味わいがある。東京文理科大学出身とあるので、朝永振一郎の教えを受けたのかも知れない。本文中で朝永さんが出てくる頻度が高い。以下、章ごとに感想など。第1章なぜか等分配則の話から始まり、比熱の議論になってほんとに量子力学の本なの、と思ってしまうのだが、こういう「どんどん小さくしていくとどうなるのか」っていうのはデモクリトス以来のわかりやすい方法なのかも知れない。後半は本書ではトモナガ論法となっているが、「なぜ太陽の光に当たると日焼けするのに、ストーブに当たっても日焼けしないの? どちらも光線を出していて、しかも人体に当たるエネルギーでは後者のほうが大きいはずなのに。」っていう疑問を枕に、光電効果を説明する。どちらも量子力学を使わなければ説明できず、そういう古典論では説明不可能な事実をまず提示するのは量子力学の入門書によくあるパターンではあるのだが、この2つを扱うというのは初めて見た。やはり多いのは黒体輻射か、ファインマン流に(または朝永の「光子の裁判」?)二重スリットの話から始めるタイプで、特に後者は外村さんの実験のある今では小さなスケイルで起こっている現象の不思議さを実感する恰好の材料だ。比熱と太陽・ストーブの話は目新しくて面白いけど、後者について著者自身が学部2年のときに何が不思議なのかわからなかったと語っているように、まず不思議さを実感するのが難しいように思える。それに二重スリットに比べるとやっぱり地味だ。というわけで、初めて量子力学を学ぼうとする人が楽しめるかどうかには疑問が残った。このシリーズは一般書と教科書のあいだくらいの位置付けだと思ってたんだけど、どうやらオーソドックスな教科書で腑に落ちないところを補完しようっていうコンセプトらしい。第2章原子模型の話から、バルマー系列とかのスペクトルの話へ。とびとびということが言いたい章なんだろうか。特に難しいこともなく、適当に読み飛ばした。第3章ボーア−ゾンマーフェルトの量子条件から、何が分かるのかを追求していく章。シュレディンガー方程式もまだなのに、調和振動が出てくる。量子条件を積分で表し、それを調和振動に計算するとちゃんとエネルギー固有値が出てくるんだね。知らなかった。フランク−ヘルツの実験はよく解らなかったので、他の本でも読んでみよう。さらに水素原子についても量子条件を適用し、主量子数、方位量子数の話まで持って行ってしまうのは、難しい積分を含むにしてもなかなか鮮やか。もっとも3次元の中心ポテンシャルはシュレディンガー方程式でやっても色々と多項式を使うから、計算は五十歩百歩か?しかしこの人は理学博士なのに、なんで「磁界」という言葉を使っているのだろう? あと、このボーアとハイゼンベルクがお茶してる写真は初めて見た。そして手前にいる人はディラックに見えなくもない!?第4章スピンのところはなんとなくで済ませてしまった。最後の、アインシュタインモデルとデュロン−プティ則の話は分かりやすかったように思う。パウリのこの写真も初めて見たな。第5章黒体輻射の話なんだけど、これは朝永量子力学の焼き直しみたいな感じかな。第6章、第7章はけっこう普通の教科書と重なる部分もあるのだけど、電子雲の描写が詳しくて、混成軌道とか量子化学の教科書には載っていても量子力学の本には載っていないような話も多い。理論の話で終わらず、必ず具体例を持ち出してくるところはこの本の良いところだ。付録Dを見る限り、電磁場の量子化もそう難しくはなさそう?という感じ。良い本でしたが,成績にはきっと影響しないね(笑)

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著者プロフィール

1928年浜松市生まれ。海軍兵学校、旧制一高から東京文理科大学物理学科へとすすみ、同大学院では統計力学を専攻。物理学の全分野にわたって幅広い知識をもつ。横浜市立大学で教鞭をとり、同大学名誉教授。研究者ではあるが、専門分野以外でも多芸多才。国内の写真なら、一目見て何県何市かがわかるという。ブルーバックスの著作は『四次元の世界』『10歳からの相対性理論』『マックスウェルの悪魔』など17冊(うち共著1冊)。累計300万部を超える。2002年7月惜しくも逝去された。

「2019年 『トポロジー入門 奇妙な図形のからくり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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