- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061582057
感想・レビュー・書評
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本書を貫く大テーマは、「ヨーロッパとは何か」という問題である。著者は、古典古代の国家や文化にヨーロッパの固有性を求めるのではなく、ゲルマン人の侵入以降の歴史がヨーロッパが成立するための重要な要素として捉えながらも、封建社会の成立をその決定的要因と見ている。そのため、この上巻では、いわばヨーロッパ成立の前史が扱われているといってよいだろう。ローマ世界の崩壊から東ローマ帝国とローマ教皇の角逐、その中で登場してくるゲルマン人、そして地中海沿岸を破竹の勢いで制覇していくイスラーム勢力の様子など、ヨーロッパ世界が成立するための諸条件を簡潔明快に叙述していく様は、さすがは中世史研究の大家と思わせる。
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[ヨーロッパ中世世界の全体像。ローマ世界帝国の没落と近代ヨーロッパ国家群の勃興の間の千年間、皇帝と法王、封建領主と騎士、民衆が複雑に絡み合うヨーロッパ文明の源流をテーマ別に描き出す名著全訳。]
「堀米さんは、中世ヨーロッパ社会の分析と研究に生涯を捧げた人物。ヨーロッパにとって中世とはどのような時代だったのか、その特質とは何か、そしてまたそれはどのようにして成立し、変質していったのか。このような問いかけに対する答えを用意した、日本での草分け的な存在です。初版から40年以上がたっても輝きを失っていない魅力的で面白い本。」(『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)
目次
序章 「終わりある歴史」への案内
第1章 時代を特徴づける事柄をめぐって(皇帝とは何か;ローマ的かフランク的か;皇帝の髭をめぐって ほか)
第2章 新しい社会(主人と奴隷;修道士と修道院;クリュニー派 ほか)
第3章 農業革命(新しい技術―新しい組織;日々のパン;農民と田舎 ほか)
第4章 宗教的、精神的、世俗的冒険(新しい異端―新しい修道会;新しい大学;新しい教え―古い教え ほか) -
ヨーロッパ中世史の大家による、中世史の概説書。
堀米氏の中世史理解に基づく歴史展開を解説している。
基本的には時系列に沿って、歴史展開を理解するのに必要な主要な人物・事件は記述するが、その詳細を追うよりは、なぜそのような展開になったのかについての背景や構造を探っていくスタイル。
非常にマクロな視点で、中世史を鳥瞰するような文章展開に、中世史がここまで分かりやすく筋を通せるものなのかと感心するばかりであった。
ヨーロッパ形成の前提となる西洋世界が東洋世界から分裂独立していく過程や、
古典文化・ゲルマン文化・キリスト教の相互対立あるいは共存の中から「ヨーロッパ」が形成されていく過程、
また中世初期から末期にかけての王権構造・支配構造の変遷や、社会経済の発展の過程とその影響等まで、読んでいて興味の尽きない論点に溢れている。
学校で学習した際には茫漠とした印象を与える中世史に、一本の筋道をつけてくれる(異論はあるようだが)、そういう意味では大変参考になる一冊だった。 -
著者自身がヨーロッパを訪れた際の印象をまじえつつ、中世的世界の形成について語られている本です。
著者は、古代文化、キリスト教、ゲルマン精神の3つの要因が、たがいに緊張と対立を孕みつつダイナミックに混成されていくプロセスを通じて、中世ヨーロッパ世界がかたちづくられていったことを明らかにしています。上巻では、フランク王国の隆盛と発展のプロセスのなかで、教皇権と王権が歴史のなかでどのように絡みあってきたのかということを検討することで、中世的世界の歴史的な形成が説明されています。
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