チベット旅行記(1) (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061582637

感想・レビュー・書評

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  • 禅宗(黄檗宗)の僧であった著者が、20世紀初頭、鎖国中のチベットへ旅した時の紀行文。

    旅、といっても物見遊山ではない。海を越え、山(ヒマラヤである)を超え、川で溺れ、雪にまみれ、あれ?これって20世紀のお話なんだよね?と時々錯覚を起こすほどの未開の大地を踏み、猛獣の声におののき、なにより人間に警戒しながら、約6年をかけ、約4,000kmの道のりを踏破した、遙かなロングドライブの記録です。

    当時チベットは、欧州などの外圧から自らの宗教(すなわち国)を守るため、厳しい鎖国政策を敷いていた。外国人の入境はほとんど不可能と言われていた。それをただ、漢訳の仏典では解釈がまちまちでわからん、より原書に近い教典を、との一心で向かっていく。

    まわりが危険だからと止めるのも「猛獣や盗賊に遭って殺されるならまた定めである」と斥け、溺れそうになっては「親類縁者への感謝と仏法を広めるために生まれ変わりを祈る」と覚悟を決め、荷物を亡くしては「(西洋のものを)持たぬがよかろうと仏陀の差配」と思い定める。心が座っている。

    紀行文にいちいち仏法は書いてないんですが、覚悟そのもの、往き方そのものがすでに仏法なんですねぇ。

    なんとまぁ有り難いお話でした。

    しかし人間というのはとんでもないことを考え、成し遂げるもんだと舌を巻きます。(とても真似できん…)

  • チベットに伝わるという大乗仏典を求めて、当時外国人の入国を禁じていたチベットに単身で入国した著者の回想記です。第1巻では、明治1893年にそれまでの地位を投げうってチベットをめざすことを決意し、まずはインドで語学の研鑽を積み、山道を分け入ってチベットに入国するまでの経緯が描かれています。

    途中で何度も危機に遭遇しながらも、崇高な目的に向かって不屈の精神で旅を続けていく著者の姿勢には感嘆するほかありませんが、意外にも講釈のようなユーモラスな語り口の文章で、冒険小説のように楽しんで読むことができる内容になっています。

  • 青空文庫にもあるが、じっくり読みたくて購入

  • ここには本物の冒険がある。

    命がけの冒険である。

    現代においても命がけ冒険があるじゃないかと言われるかも知れないが、それは命を危険に晒すことでスリルを味わうもので、成功しても自己の虚栄心が満たされる種類の冒険である。

    彼の場合、チベット仏教を会得するのが目的で、冒険そのものが目的ではない。

    だが、どんな冒険家も成し得なかった冒険を達成したのである。

    河口慧海(えかい)32歳のときにチベット行きを決行。

    1897年から1903年にかけて当時鎖国をしていたチベットの潜入に成功した。

    明治30年である。

    無名の一僧侶に過ぎないが、明治の人間って物凄いガッツがあったのだなあと感心させられる。

    そして、学識の高さ、ものの考え方、人間としての完成度は現代人の比ではない。

    チベットに潜入する前にインドでチベット語を2年間学び、読み書きも含め完全にマスターしてしまうところがスゴイ。

    無茶な冒険のようできちんと準備をしている。

    関所は通れないので、間道をまさしく命がけで踏破する。

    途中、川で溺れそうになったり、何度も凍死寸前になったり、強盗に身包み剥がされたり・・・

    現代の装備でも遭難間違いなしのところを、当時の貧弱な装備でヒマラヤ地域を地図もなしに目的地まで辿り着いたのである。

    しかも食べ物は麦焦がしとか、蕎麦粉を練ったものしか食べず、僧侶であるため肉はご法度。

    それも午後は食べ物は一切口にしないという徹底ぶりである。

    まあこの辺の物語は、本を読んでもらうしかないのだが、冒険に係わる要素は全て登場する。

    危機に直面したときの切り抜ける叡知は舌を巻くしかない。

    チベットの首都ラサに着いてからがまたスゴイ。

    セラ大学入試に楽々合格、専門外の医者としての名声を得、法王に拝謁するまでになる。

    日本人とバレてからの脱出記も手に汗握る一大冒険譚。

    ホンマかいな?というくらい、まるで神がかり(仏がかりというべきか)の連続である。

    教養がある上、肝の据わった人物で、会う人は民族、身分の違いを超えて彼に魅了されてしまう。

    そんな第一級の人物が明治時代には、それこそゴロゴロしていたのだろう。

    110年前の話であるが、今の日本の現状を見るにつけ、色々と考えさせられてしまった。

    文庫本5冊のボリュームであるけれど、本物の冒険を知る上で読む価値はありますよ。

  • 嘘くさいとまで批判された河口慧海の命をかけた旅行記録。周到な準備にして鋼鉄のような意志。何回も死にかけても高邁な目的のために前進する姿には敬服します。

  • 明治期に日本人僧侶として、鎖国状態のチベットに入った河口慧海氏の旅行記全5巻の1。インド・ネパールでのチベット語の習得や、間道探し等の準備3年と、入境後カイラス山方面へ向かうところまで。慧海氏がチベットに入った明治33年はイギリスがチベットと2回行った戦争の間で、情勢は非常に緊迫していたはず。少し古い文体でやや読みにくい面もありますが、文句なく面白いです。10年後に同じくチベットに入った多田等観氏の「チベット滞在記」も講談社学術文庫から出ており、こちらも面白かったですが。

  • 5年以上前にNHKの朝の番組で、夢枕漠氏が河口慧海の話をしていたのを思い出し、とうとう彼の著作を読んだ。

    なぜもっと早く読んでおかなかったのだ。抜群に面白い上に、読んでいると勇気が湧いてくる。

  • いやぁ。著者の河口慧海はすごい人である。何がすごいって明治時代、鎖国中のチベットに、仏教の経典を求めて、旅立って行くその精神力がすごい。命をかけて無鉄砲とも思われる行動力で旅していくのだけれど、仏教のためにそこまでできるのかと無宗教の私はただただ脱帽。その生真面目さに疲れるところもあるが、たいした装備も持たずに山に入り、遭難しかけても(というか遭難しても)、何年もかけてチベットを目指す信念がすごい。今の世の中、こんな人は出ないのではないかなあ。2巻以降もかなりな冒険が待っていそうで、楽しみ。

  • 作者の志の高さとタフさに打たれる。加えて、物語として純粋に面白い。もっと広く読まれるべき本。

    明治時代に、独りでヒマラヤを越えてチベットに密入国。作者の事前準備の周到さと現場での機転がかっこいい。訥々とした語り口と、今の日本ではなかなか接することのできない熱い仏教魂が魅力的。平山郁夫の挿絵も気分が盛り上がります。

  • 明治時代、鎖国していたチベットへと単身乗り込んで、仏教の原典を得ようとする河口慧海さんのチベット旅行記の第1巻です。
    この1巻では、旅行の下準備の様子が詳細に描かれていますが、チベットへ潜入するにあたって、慧海さんが行った準備の抜かりなさが感心させられました。

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