私の個人主義 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061582712

感想・レビュー・書評

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  • 当時に見てた世界としてはあまりにも先をいっていて、本当に聡明な方だったのだと実感しました。

  • まずは解説から読み進めていけば内容を理解し易いと思います。解説が良かった。

  • 漱石が自分自身を見つけるまでの話。
    100年以上前の講演にも関わらず、人間の本質を的確に捉えた言葉が私の心を勇気づけてくれる。漱石の悩みと自分の悩みがどこかで重なり、言葉の力で、何だかそれを乗り越えられるような光が指す瞬間があった。これこそ本を読む醍醐味。

  • 2023.1.5
    かなり時間をかけて読んだので初めのほう覚えていない、かつ理解できていないところもあるのでまた読み返す。
    現代にも通ずるところがたくさんあって、数年後に読み返しても発見もありそう。
    ・普通一般の人間は平生大抵浪漫主義だが、いざとなると皆自然主義変ずる。

  • 「個人主義」に対する考え方が変わった。

    特に、俗に言われる「価値観の押し付けは良くない」の真髄が分かった。
    自身の自由を守るためには、他者にも自由を与えなければいけない。故に自分の価値観を押し付けるのは良くない。

  • 一言でいうと
    【漱石さんが個人主義に目覚めるまでを語る本】

    精神科医の泉谷閑示先生の「普通がいいという病」より本書の抜粋があり、それに私はとても興味が湧いた。近くの図書館で読了。

    本書は夏目漱石が晩年に、大学で講演会を行った時の記録であり「自分を手に入れるまで」を語る。

    私が最も興味を惹かれたのは、後半の発言である。長めなので簡略すると、

    「30代で海外に行く前まで、なんなら行った後も文学と言うものがわからなかった。何となくフワフワした浮き草のように人の意見に惑わされ他人本位であった。海外の生活を経て、文学とは何ぞや。それは自分で最初から、組み立てる他ない。そう気づいた。」

    という発言だ。
    夏目漱石でさえ、クリエイティブな思想に、他人本位(や他人の意見)に振り回され、人の評価を借着にしてオドオドしている状態が続いていたのか。と私は驚いた。

    日本では特に陥りやすい全体主義・同調主義から、個人主義・自己本位をもぎとる迄の赤裸々の講義録は100年経とうが色褪せない。

  • 文豪夏目漱石と言うととっつきにくく、小難しそうな印象があったのであまり好んで読むことはなかったが、そんなイメージがガラリと覆されたのがこの作品だった。

    この本に出会うことになったのは高3の夏、志望校の小論文の過去問を解いていたら漱石の「個人主義」についての出題があったのだ。例年の出題傾向とは異なるこの問題は私を大いに悩ませ、出典であるこの本を手に取ることになった。時間がなかったので、表題作の「私の個人主義」だけしか読めなかった。だが、それだけで私は魅了された。そして、大学が決まった今、もう一度図書館で借り直して最初から読み直した。

    漱石の講義からは謙遜し周囲を立てる謙虚な人柄が感じられる。ウィットに富んだ前置きから近代社会への深い考察へとつながっていく構成はとても自然で引き込まれた。この時代、漱石の講演を生で聞けた人が心底羨ましく思える。

    全編を読んでみて一番感銘を受けたのはやはり最初に読んだ表題作の『私の個人主義』だった。「自分のこれだと尻の座るものを探し続けるべき」ということや「権力には義務が、金力には責任が伴う事を自覚すべき」だということはこれから生きていくうえで肝に銘じたい。『道楽と職業』で「文明が進むにつれ、仕事は分業化し断絶してくる」のは今まさに起きていることで、漱石の先見の明にただただ驚いた。

    令和の今でも、いや、令和の今だからこそもう一度深く考えるべきことが詰まっており、私が漱石にハマるきっかけとなった本である。

  • じぶんの個人主義を発見せよ、そして貫けというごくシンプルな教え。なんだかフツーな結論やなあと思う一方、そうだよね、うんうん、見つけなきゃ、と素直に納得もした。いやーむずい、幸せに生きるための努力はしやきゃ。

  • 夏目漱石先生が病で亡くなる5年前に各地で行った講演を主にまとめている。

    夏目漱石先生は小説の執筆だけでなく、講演もされていたのはちょっと驚きだったが、これがとても面白い。

    講演の中に出てくる謙遜や周囲を引き立てる話もユーモアに溢れ、話の導入は分かりやすくも、話す内容は明快だが斬新で、100年以上前の社会のみならず、今にも通用する事ばかりだった。

    講義の断片だけ見ても、当時の社会で余程愛された人だったんだなと感じられる。

    講義は6講義に分けられ、主たる内容は以下

    『道楽と職業』
    ・自分中心に行うのが道楽、他人中心に行うのが職業
    ・文明が進むにつれ、仕事は分業化し断絶してくる

    『現代日本の開化』
    ・開化には煩わしい事を無くす方面と、快い事を追求する方面がある。
    ・外的開化と内的開化がある。
    ・日本は外的開化を強いられた為に、砂上の楼閣のような不安定さを内包している。

    『中身と形式』
    ・ものを知らないと形式、規律や外聞ばかり気にするようになる。
    ・大して中身を知ると、場合によっては形式を変えてよい事に気が付く。

    『文芸と道徳』
    ・道徳は文学になぞって2種類ある。
     すなわち浪漫派と自然派である。
     浪漫派は理想を求め、自然派はあるがままを肯定する。
    ・どちらかに偏るのも弊害だから、どちらも持ちうる社会が健全なのではないか

    『私の個人主義』
    ・個人は自分のこれだと尻の座るものを探し続けるべきである。
    ・しかしそれを他人に強制してはいけない。特に権力には義務が、金力には責任が伴う事を自覚すべきである。

    もちろん、ここに書ききれるものではない。
    特に最後の私の個人主義は、何度でも読み返したい勇気の出る素晴らしい講演だった。

    以下、心に残った言葉

    ・博士の研究の多くは針の先で井戸を掘るような仕事をするのです。それを世間ではすべての方面に深い研究を積んだものとして誤解して信用を置きすぎるのです。

    ・科学者、哲学者、芸術家のようなものは他人本意では成り立たない職業です。

    ・物質的に人のためにする分量が多いほど物質的に己のためになり、精神的に己のためにするほど、物質的に己の不為になるのです。

    ・できるだけ労力を節約したいという願望から出てくる方面と、出来るだけ気儘に勢力を費やしたいという娯楽の方面、これが経や緯となり開化という現象が起こるのです。

    ・今日は生きるか死ぬかという問題はだいぶ超越している。それが変化してむしろ生きるか生きるかという競争になっている。

    ・さて、自分がその局に当たってやってみると、かえって自分の見縊った前任者よりも激しい過失を犯しかねないのだから。。だから実行者は自然派で、批判者は浪漫派だと申したいくらいに考えている。

    ・私は終始中腰で、隙があれば自分の本領に飛び移ろう、飛び移ろうとのみ思っていたのです。が、さてその本領というのがあるようで、無いようで、どこを向いても、思い切ってやっと飛び込めないのです。

    ・私はこの 自己本位 という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。

    ・ひとつ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで進んでいかなくてはいけないでしょう。もし掘り当てることが出来なければ、その人は一生不愉快で、終始中腰になって世の中にごまごましていなければならないからです。

    ・もしどこかにこだわりがあるのならば、それを踏み潰すまで進まなければだめですよ。

    ・個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らめて、去就を定めるのだから、ある場合は一人ぼっちになって、さみしい感じがするのです。
    それはそのはずです。槙雑木でも束になっておれば心丈夫ですから。

    小説の方も是非読みたいと思いました。

  • キーワード

    「道楽と職業」
     ・人のため=己のため(一般的な職業) ・己のため=人のため(科学者哲学者や芸術者) ・職業と道楽の内発性と外発性 

    「現代日本の開化」
    ・2種の活力と開化の関係 ・開化と幸福、生活の関係
    ・西洋の開化(一般の開化と日本の開化)

    「私の個人主義」
    ・人格と3か条 

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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