物語日本史(中) (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061583498

作品紹介・あらすじ

平安の世に権勢並ぶものなき栄華を誇った藤原氏。その華やかな貴族文化も地方政治の乱れから次第に崩壊し、代わる新興武家勢力の両雄・源氏と平氏の宿命的な争いとなる。本巻では、保元・平治の乱に始まる源平の合戦から室町幕府の終末までを取りあげ、乱世における武家政治の不条理を描く。平清盛-源頼朝-足利尊氏と受け継がれた覇権は途絶え、応仁の乱をもって日本の中世は幕を閉じんとする。

感想・レビュー・書評

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  • 藤原氏の平安時代中期から、室町時代の終わりまで。文化が栄えたと教科書で読んだ室町時代についてもっと知りたかったが、天皇を軽視した足利氏についての記述は少なめ。「世の中はただ足利の一色に塗られた室町時代は、これといってお話すべき価値あるものは、ないのです」とのこと。

    反対に、教科書にはあまり記述がない、天皇家が中心となって時代を動かした吉野の時代(南北朝時代)については、とっても詳しく書かれている。

    こういう偏った書き方は賛否両論があると思うが、私は一人の著者の意見として、とっても楽しく読んでいる。教科書ではない以上、このように色々な意見を見て歴史を学ぶことは大変大切だと思った。

  •  小学生の頃から平泉澄先生の「少年日本史」を何十回も読んできた。
    この物語日本史は「少年日本史」を読みやすいように3部に分け、なおかつタイトルに「物語」をつけて、社会科学としての歴史学から一歩引いてますよ、と予防線を張って出版されたものだ。
    あえて旧仮名遣いで「少年日本史」を書いた平泉澄先生なら物語日本史出版した人達を叱るであろう。

    たしか中野信子さんだったか、テレビの討論番組で、「日本人は、特に日本のワカモノは、世界の人達からは、『有り難いほど馬鹿だ』と思われている」と発言していた。
    たしかにその通りだ。
    いや、平泉澄先生に言わせると、世界に冠たる大日本帝国にあっても日本人など西欧人は成り上がりのサル程度にしか認識していなかった。戦後の若者に限った話ではない、と。戦後ますますバカモノ化した若者が増えたになったのは間違いないように思うが。

    欧米人は武士、侍には一目置いていたが、維新後の欧米文化を吸収することに目が眩んで武士の精神を忘れ始めた日本人をものまねサルと侮るようになった、それについて危機感を持ったのが平泉澄先生であった、戦後の焼け野原で誇りを失いまさにGHQの犬に成り下がろうとする日本に。だからこそクーデター計画まで立てたのであろう。

    本書は社会科学、歴史学とは言い難く、まさに神話のごとく物語日本史である。

    高名なる学者の優れた研究によると日本人は周辺のどの民族をかけあわせても日本人独特の遺伝子にはならない云々、という記述、まったく科学ではなく、生命科学や考古学の見地からすると全く出鱈目である。が、日本人の精神を大切にしましょう誇りを失わないように世界な胸を張りましょうと子供たちを勇気づけるにはそれで良いのだ。
    誇りを失い地に足がついていない現代の若者を見れば納得いくはずだ。

    しかし、気をつけなければならない。少なくとも科学としての歴史を学ぼうとする人達は、皇国史観、平泉澄先生の個人的私的歴史観を宗教教義のように信じてはいけない。
    「少年日本史」は子供向けに書かれた本ではあるが、批判能力客観的視点が不十分なな子子供達から山口二矢が生まれる可能性がある。
    この本は正しい指導者のもとに子どもたちが読むべき本である。あるいは十分な見識を持った者が、平泉澄先生が描いた世界の中のあるべき日本を理解するために、現代日本を批判的に見るために読むべき本である。

  • 平安時代,鎌倉時代,室町時代の500年くらい。
    北条と足利は朝廷の賊軍として扱われる。
    承久の乱が「承久の御計画」と表現されるのは,乱は下の者が上の者に起こすものだからだな。朝廷と幕府が対立すれば,いつだって下は幕府だ。だから,建武の新政も「建武の中興」である。
    現在放送中の大河ドラマは北条家が主人公なので朝廷側に立った語りではない(もともと北条家が作った吾妻鏡が話のベース)ため,ついつい北条視点で見てしまうけれど,本書の徹底した賊軍扱いは歴史はどの視点で見るかが重要であることを考えさせてくれる。
    日本の歴史が朝廷(天皇)を核として連綿と積み重なっているからこそ,朝廷視点で歴史を語ることができるし,時代の変化も朝廷抜きでは考えられない。朝廷(天皇)に対する見方が広がるし深まるなぁ。

  • 中巻では、藤原氏の全盛期から室町時代までを扱っています。

    やはりこの巻の特色は、足利氏を逆賊として明確に規定するとともに、南朝の歴史について詳しく触れていることでしょう。「青葉茂れる桜井の」で始まる歌によって親しまれていた大楠公の桜井の別れなど、物語としてもおもしろく、本書が対象としている若い読者にとって興味深いのではないかと思います。

  • もともとの基礎知識がおぼついていないせいで、吸収効率が悪くなってしまったのが残念だが、ここで挙げられている色々なものに興味を持つことになった。特に今は神皇正統記が気になるところ。

  • 室町時代に一番興味あったけど、著者はいちばん不毛なつまらない時代と言っていた。足利尊氏という二度も朝廷を裏切ったり、反道徳的な文化が出てきたりした時代だからなのでしょうが。

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著者プロフィール

明治二十八年(一八九五)二月十六日福井県大野郡(現勝山市)平泉寺村で誕生(父恰合・母貞子の長男)。第四高等学校を経て大正七年(一九一八)東京帝国大学文科大学国史学科卒業、同大学院進学。同十年大阪の森下逸子と結婚。同十二年同大学専任講師、同十五年文学博士・助教授。昭和五年(一九三〇)欧州留学。同十年教授、同二十年辞職。同五十九年二月十八日帰幽(満八十九歳)。

著書 
『中世に於ける社寺と社会との関係』『我が歴史観』『芭蕉の俤』『武士道の復活』『国史学の骨髄』『山河あり』『名和世家』『解説近世日本国民史』『祖父の足跡』『寒林史筆』『革命と傳統』『山彦』『日本の悲劇と理想』『中世に於ける精神生活』『解説佳人の奇遇』『明治の源流』『楠公―その忠烈と餘香』『少年日本史』=『物語日本史』『明治の光輝』『悲劇縦走』『平泉博士史論抄』『平泉澄博士神道論抄』『続 平泉澄博士神道論抄』『首丘の人 大西郷』など。

「2021年 『先哲を仰ぐ(愛蔵本) 四訂版 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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