伊勢物語 下 (講談社学術文庫 415)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061584150

作品紹介・あらすじ

この天福本「伊勢物語」は家集でも日記でもない歌物語である。が、百に余る歌物語を書き並べる時、それらを綴り合わせる一筋の糸を、ある男の生涯の流れに求めた。したがって上巻には青年期の純情な一途の思慕と流浪のロマンがあった。下巻としておさめた所に見られるのは、人生経験からにじむ思いやりの中で屈折する熱い情と、年月の中で衰えて行く生命の滅びの歌の哀感である。生きる日をかさねるにつれて長く読者の共感を誘うと思う。

感想・レビュー・書評

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  • 「伊勢物語」のフルバージョン後半です。恋愛だけでなく、友情、親子の情愛、哀惜、そして藤原氏に圧迫される在原氏を暗示する話、最後は「男」が死を予感して歌を詠んだ話で閉じられます。
    別系の本に出ている話や、和歌の索引も付いています。

  • とにかく古典が読みたくて、挑戦した本書。1日3話ぐらいのペースで読み進めて読了。

    「日本人が和簡潔かつ豊かな心情を表現できるのは、和歌を通しての実である」というロシア語の例文が、偶然聞いていたラジオから流れてきたことがあったが、まさにそのとおり。僅か二十数文字の中に、自然と故事と相手を想う心情が巧みに読み込まれていて、一つの歌が一つの物語になっているようだった。

    上巻の序盤、「をとこ」が、東国に下っていく一連の歌が、私は一番好きである。

    和歌、ということもあり、電車の中であっても小声でぼそぼそつぶやきながら読み進めた。そのかいあってか、古文ではあるが、初読でもぼんやり意味を掴める感覚があった。

  • 在原業平は華やかな元服を経て女性遍歴を重ねるが、女に冷たくされたり、逃げられたりすることもあった。友や親族、女に対してやさしかった。やがて翁と呼ばれるようになり、生涯を振り返り〈124 「思ふこといはでぞただにやみぬべき我とひとしき人しなければ」〉と思い、〈125 昔、男わづらひて、心地死ぬべくおぼえければ、「つひにゆく道とはかねてききしかど昨日今日とは思はざりしも」〉と終わる。皇族に生まれ臣籍に下り、不遇をかこつも嘆くことなく歌と女を愛した貴公子の物語は読者の想像力の数だけ存在するのかもしれない。

  • 『伊勢物語』の下巻。
    段が進むごとに、「男」も徐々に年老いていく。

    最終段とその一つ前の段が、
    人の人生の普遍的な寂しさを感じさせて、
    最後まで通して読んでみてよかったと感じた。

    「男」とされる在原業平は、色好みという先入観から、
    単なる女好きだというぼんやりした印象を持っていたが、
    異性だけでなく、友情にも篤く、親を大切にしていたり、
    人間愛に溢れた人物として捉えることができる。

    もちろん、これが実際に生きた「在原業平」という人に関する、
    事実ではないのだけれど、このような人物として、
    多くの人に認識されていたということが興味深く感じる。
    もしかしたら、実際に生きた「在原業平」本人にとっては、
    実は不本意な解釈のされかたなのかもしれない可能性もあるけど。

  • 塩竈などを舞台とした作品です。

  • 伊勢物語の下巻。ここに収録されている中では101段の「あやしき藤の花」が好きだ。政治的風刺をうまく含めた和歌に思わずニヤリ。

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著者プロフィール

前・東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 助教授

「2015年 『観察・アセスメントガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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